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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2010.12.07
1102996944.jpg綾瀬マナ「恋の呪文 ラブラブカタブラ」(1)


やっとの思いで辿り着く
私達の気持ち



■津田内みずほは身の内に、巨大な力を封じている。ストッパーであるメガネを外せば、力がその身から溢れてしまう。感情を乱しては、暴走する力が制御できない。なるべく心乱さぬように、なるべく人と関わらぬように、過去と同じ出来事を、くり返さないように…。感情をオモテに出さぬ「氷壁」として生活する津田内だったが、クラスメイト・蒼井凛子と接するうちに、彼女に心乱されるようになり。感情を圧し殺してきた魔法使いが、平凡な女子高生と出会い、恋を知る…

 「がっかり観光地と呪いの投網」(→レビュー)の綾瀬マナ先生の新連載作品でございます。ごくごく普通の女子高生・蒼井凛子は、ある日もの静かで誰とも関わりあいを持たないクラスメイト・津田内みずほの佇まいのあまりの美しさに、「眼鏡が似合っていて、カッコイイ」と無意識に言ってしまいます。その刹那、崩れることの無かった彼の表情が崩れ、顔は真っ赤に。その様子を見て、たちまち凛子は彼を好きになるのでした。その後彼女は、あれこれとおまじないをして、彼と仲良くなれるように事あるごとにお祈りするのでした。そしてことごとく願い通りになるという、思わぬ展開。このおまじないは本物!?そう信じかけていたある日、事の真相を知ることに。それは、彼女の抱いていた不安を消し去り、喜びでいっぱいにしてくれると同時に、ほんの少しの戸惑いも彼女にもたらして…というストーリー。


恋の呪文 ラブラブカタブラ
素直で元気いっぱいのヒロイン・凛子。周りまで元気にしてくれるような、そんな明るさを持っています。悩みがちな津田内くんを、いつも元気づけてくれる、素敵な女子。


 事の真相とは、実は津田内くんは魔法使い(というか様々な「力」の持ち主)で、凛子と同じタイミングで相手のことを好きになってしまった彼は、その「力」を使って事あるごとに彼女と一緒にいられるように仕向けていたのでした。両思いであるという喜びがこみ上げると同時に、彼の特別な力についても知り、戸惑う凛子。しかも事もあろうに、彼の力は、感情がこみ上げると暴走してしまうという嫌な副作用が。結果、想い合っていてもなかなか恋人としての付き合いができないのでした。お互いに遠慮がちに過ごすも、津田内くんは特別な力を持っているために、危ない目に遭うこともしばしば。そのたびに凛子は自分の気持ちを抑えきれずに、彼の役に立とうとするのですが、それが余計に事を大きくしたり、逆に彼のやる気へと繋がったり…。かなり健全で大人しい恋愛関係であるにも関わらず、取り巻く状況はいつもド派手という、なんとも不思議な恋模様を見せてくれます。
 
 この作品のこの二人、実に好感が持てるのです。ヒロインの凛子はとにかく素直で、優しいんです。正直に自分の気持ちを表に出すし、同時に相手を悪く思うことが絶対にない。そんな彼女が、自分の力に苦しむ津田内くんの役に立とうと、全力で走り回るのですが、その健気さと、決してめげることのない強さに、とっても心惹かれるのです。大きな陰には、一点の曇りも無い陽で。お互いの境遇を理解できる組み合わせも素敵ですが、やっぱり自分は全く違う性質の持ち主の組み合わせの方が、断然好きですねー。彼女を見ていると、今は苦しいかもしれない津田内くんが、先々絶対に幸せになれる気がするんですもの。ファンタジックに、どこまでもピュア。そんな初々しくもキラキラな恋物語が見たいという方、是非チェックを。


【男性へのガイド】
→津田内くんはじめ、男性陣はジャンル誌特有の男っぽさがありますが、そこが気にならないのであれば、大丈夫だと思います、うん。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→ファンタジックな要素が、物語の展開をひっぱる軸に。設定の一発ネタで単調に引っぱるだけではありません。とっても楽しいお話で、読んでいて元気になれました。


作品DATA
■著者:綾瀬マナ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's-LOGコミックス
■掲載誌:コミックビーズログ キュン(連載中)
■既刊1巻
■価格:620円+税


■購入する→Amazon

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