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Tag [新作レビュー] 2010.12.11
1102980109.jpg吉永ゆう「キスまでの距離」


しゃべんなきゃ
心臓の音
聞かれる



■榎本柚葉15歳、高校入学に起きた小さなキセキは、幸先の良い証拠だろうか。クラス分けの名簿の中に見つけた、一人の男の子の名前は、柚葉の5年越しの片想いの相手。双子の弟・駿の親友であるカジは、同じ年だけど違う学校に通っていて、小学生の頃から柚葉の家に入り浸っていた。ずっと好きだったけれど、カジの前では素直になれなかった柚葉。だけど、同じ高校、同じクラスになったのを機に、カジとの距離を縮めようと頑張るけれど…!?

 吉永ゆう先生の5冊目の単行本です。単行本デビューが1年前で、気がつけばもう5冊目。小学館は刊行ペースが早いと言えど、これはスゴいです。期待の高い新人さんということで、編集部からもプッシュされているみたいですね。個人的にもデビュー単行本「罪恋」(→レビュー)から応援している先生ですので、是非とも飛躍していただきたいところ。さてこちら、表題作のシリーズがまるまる一冊。小学館にありがちな、お試し3回連載とは違い、ちょっと長めに物語が楽しめるようになっています。
 
 物語は、ヒロイン・柚葉の高校入学と共にスタートします。ずっと好きだった、双子の弟の親友・カジ。家庭の事情から柚葉の家に入り浸っていた彼に、ずっと想いをよせつつも、距離が近い彼の前では、なかなか素直になれずにいた柚葉は、高校のクラス名簿に彼の名前を見つけます。入学早々起きた小さなキセキに、少し頼ってみようかと、柚葉はカジに素直に向き合い心の距離を縮めようとするのですが…というストーリー。


キスまでの距離
想われている気はするけれど、確信は持てない。そんな、やたらとドキドキするラインで話を展開。こういう感覚、良いですよね。


 物語説明からもわかるように、設定的に特筆すべき見所はありません。そんなどこにでも転がっていそうなシチュエーションを、物語展開と心情の描き出しで、途端に切なく初々しい恋物語にさせる。それこそが、吉永先生の真骨頂。カジと柚葉、お互いに相手に想いを寄せ、時折相手からの特別な感情を感じることがあるも、タイミング、つまらない意地、そして臆病な心が邪魔をして、なかなか進展を許してくれない。そこに生まれる歯痒さと切なさに、一緒に身悶えするという。
 
 読み返してみると、結構現実ではありえない展開があったりするのですが、そこへの持っていき方が上手く、実に自然に読めてしまいます。なんか、ホントに起こりそうというか。例えば家で二人きりになったとき、変な空気感になった中、ちょっとした拍子に折り重なるように倒れ、そのまま雰囲気に流されそうになる感じとか。
 
 後半は、想いは通じ合っているのにくっつけないというパターンの繰り返しで、特に最後近くのアクシデントは蛇足だったのではないかなぁという印象も。やっと想いが通じたと捉えるのか、逆に遅いよ、と捉えるのか、その辺はその人の感性次第というところでしょうか。私は「あのタイミングで拒否っちゃったらアウトでしょう…」という感じでした。とはいえラストでは、やっぱり感動してしまうわけですが。ちなみに同タイトルの村山由佳先生の恋愛小説「おいしいコーヒーの入れ方シリーズ」の第一作目のタイトルがこれと同じだった気が。あのシリーズ、途中まですごく夢中で読んでいたのですが、いつしか追いかけるのをやめてしまいました。まだ続いているんでしょうかねー。多分、今読んだらまた違った感想なんだろうな、とか思ったりするのでした。(全然関係ない話題でレビュー終わってしまった…)
 

【男性へのガイド】
→ベツコミライクな恋愛話は、男性にも好きな人多いはず。この作品を敢えて読む必要はないとは思いますが、我慢させられるカジくんの心情は、共感できる部分多いかもしれませんね。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→ちょっと寄り道しすぎたかな、という感じはしたものの、それでもやっぱり最後は納得の感動。期待感との兼ね合いで、この辺に。


■作者他作品レビュー
吉永ゆう「片想いの向こう側」
吉永ゆう「初恋白書」


作品DATA
■著者:吉永ゆう
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:Betsucomi
■全1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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コメント

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From:  * 2010/12/19 05:36 *  * [Edit] *  top↑
コメントありがとうございました。
少しでも参考になるようなレビューを心がけたいと思います。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。
From: いづき * 2011/02/06 09:10 * URL * [Edit] *  top↑

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