
先生を好きになったんじゃない
好きになった人が
先生だったんだ
■真面目だけがとりえの内気な女子・あざみは、中学2年生の14歳。鈍臭くて、クラスにも馴染めず、楽しくない毎日を過ごしていたあざみは、姉のお見舞いの帰り、一人の青年と出会う。ひったくりに遭ったところを助けてくれた彼の名前は、瑞澤誠。高なる胸、もう会えないのではないかという焦りから、忘れないでとキスをしたのは、自分を変えるためだった。そして新学期、二人は思わぬ形で再会を果たすことになる。今度は学校で、先生と生徒として…。ほろ苦くて甘い、ひとつの恋物語が、いま、はじまる。。。
「ギリコイ」(→レビュー)、「ボーイフレンド」(→レビュー)の山田デイジー先生の新作でございます。今度はタイトルからもわかるように、先生に恋してしまった女の子の物語。いや、正確に言うのであれば、好きになった相手が先生だった女の子のお話、か。主人公は、中学2年生の真面目だけが取り柄の女の子・あざみ。鈍臭くて、友達もいない彼女は、中学2年ながら日々退屈に、この先に希望を持つこともなく毎日を送っていました。そんなある日、お見舞いに行った姉によって、ちょっとだけオシャレをしてもらったその帰り、彼女は一人の青年と出会います。ひったくりに遭った所を助けてもらった彼の名前は、水澤誠。名前と連絡先を教えてもらい、後日お礼に訪ねたその帰り、徐々に高なるその胸と自分の気持ちに素直になって、少しだけ勇気を出してしたのは、彼へのキス。もう会えないと思ったから、自分を変えるため。しかし二人は、後日思わぬ形で再会を果たすことになります。今度は、クラスの先生と生徒として。。。

自分に自信がないヒロインは、些細なことで落ち込みがち。そんな彼女を全肯定してくれる先生は、ヒロインにとって唯一無二の存在となる。
中学生の恋心を、切なく描き出す山田デイジー先生ですが、今度は先生と生徒という組み合わせ。そりゃあもう、切なさ滲み出まくりでございますとも。内気で臆病、コミュニケーション能力があまり高くないヒロインが、恋を知ることで、少しずつ変わっていく。少女を成長させるのは、何も甘さだけではありません。むしろ、恋を通して知る現実、悲しさこそが、少女を強く美しく変えていく。そんな印象を、この物語から受けました。教師と生徒ということで、そもそも自分の想いを伝えることすら憚れるという状況。そんな中にありながらも、自分の中で育ち続けていく想いを止めることができずに、思わず大胆な発言・行動をしてしまうあたり、思春期さなかの少女の危うさのようなものが感じられ、実に素敵です。
教師と生徒もので、その作品の雰囲気に大きく影響を与えてくるのが、相手役となる先生のキャラクターなのですが、今回の相手役・水澤誠先生を一言で表すのなら、「わざとっぽい風早くん」。鈍臭くて失敗ばかり、褒められたことなんて一度もないヒロインを、いつも気にかけ、全肯定し、時に助け舟を出してくれる。時折それが過度になり、ガードが甘くなるところもあるのですが、それはご愛嬌ということで。繊細で丁寧な心情描写でありながら、どこか物語に現実味を与えてくれないのは、この先生のキャラクターによるものなのでしょう。しかし、だからといって「全然リアルじゃないじゃん」なんて言って切り捨てるのは、あまりに短絡的。むしろ夢物語上等でしょう。教師と生徒という枠組みの中でリアルにする必要なんて全くなく、そもそも小中学生メインのなかよし読者は、こんな先生が学校にいやしないことなんてわかりきっています。だったらば、物語の中では夢物語を楽しもうじゃないか、と。エンターテイメントとして、そしてちょっとした恋愛への憧れとしての物語として機能すれば十分。そういった意味で、この作品はやっぱり優秀なのだと思います。今回ももちろんオススメしますよ!
これから展開としてどうなるかは、そこまで予想はつきませんが、とりあえず各キャラの言動から察するに、2巻以降はヒロインのお姉さんが大きな足かせとしてヒロインの身に降りかかってきそうですね。どう考えたって、誠先生の言ってる過去の大切な人って、ヒロインのお姉さんじゃないですか。そんな中に、クラスメイトのイケメンくんが、どう介入してくるのか。複数人交えて動き出すであろう2巻以降、楽しみですね。
【男性へのガイド】
→どうなんでしょうか。恋する少女の危うさみたいなものに惹かれる方は。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→今回も面白かったです。続きが早く読みたい読みたい!5つにしないのは、前作5つつけて2巻以降失速したということから、保険的に。どちらにせよオススメでございます!
作品DATA
■著者:山田デイジー
■出版社:講談社
■レーベル:KCなかよし
■掲載誌:なかよし(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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