湯町深「席替えゲーム」
なかったことになんて
できないよ■読切り5編を収録。それでは表題作をご紹介。
高校一年生の珠美は、夏休みも終わった9月、友人との会話で「三井ってたまみのこと好きなんだって」という話を聞かされる。三井くんは、同じクラスだけど一度も会話をしたことがない男の子。その直後、席替えをして隣になったのは、なんとその三井くん!何をやっても鈍臭い、そんな私のことを好きだなんて、ホントでしょうか…?ありえない、けどもしかしたら…結局わからず月日は過ぎて…!?
湯町深先生の読切り集でございます。湯町先生の作品って、実は一度も手に取ったことがなかったのですが、それは「エロさ先行で自分の苦手なタイプの作品描いてそうなんだよな…」と勝手に思っていたから。今回エロそうではあるものの、可愛らしい表紙に惹かれ、購入してみたのですが、あらイメージと全然違う。そこで繰り広げられていたのは、なんとも初々しくて可愛らしい、プラトニックで健全な、中高生たちの恋愛模様でございました。ちょっとこの表紙はと帯は煽りすぎ…と思ったら、帯をよく読むとプチコミ掲載で今月発売された単行本の方は結構エロいとのこと。いやはや、こちらを読んでいてもそういった感じは殆ど受けず、描き分けのスキルすごいなぁと思ったのでした。

ヒロインがみんな子犬っぽいんですよね。瞳をうるうるさせて悲しい顔をしたり、喜んでる時にはしっぽが見えそうなくらいはしゃぐっていう。
どのお話も、体が小さく、目はウルウルで自信なさげなヒロインが主人公のお話。なんていうか、とってもチワワっぽいんですよね、ヒロインたちが。平常時から実に頼りなげで、ギュッと掴んだら壊れてしまいそうで、喜ぶ時は目をキラキラさせながらぴょんぴょん喜ぶっていう。恋心以前、片想い中、両想いだけどこの現状に、それぞれの段階にいるヒロインたちの、等身大の恋の悩み。本当に「恋の悩み」だけに絞っており、その他の余計な要素は一切なし。すごくちんまりとしたお話なのですが、その小さな世界に懸命になる物語の世界観は、「純正な恋愛少女漫画を読んでる!」という感覚を与えてくれて、とっても気持ち良いのですよ。
相手役をつとめる男の子達は、少コミライクなチョイ悪でオレ様気質のある少年たち。けれども少コミヒーローに多く見られるような強引さや主張の強さは陰をひそめており、あくまでピュアに、静かに。不器用ってラインに収まるレベルだと思います。その辺もまた、自分にとっては読みやすさ・親しみやすさに繋がって良かった。エロさを匂わせるシーンとしては、物語のラスト、問題が解決して晴れてくっつけたシーンに「エロいことするかもよ」みたいな台詞がある程度。恐らくエロいバージョンで作者さんが描かれる場合、この続きをメインに据えるのかな、と想像できたのですが、実際のところはどうなのやら。“かわいい”は“最高にエロい”との言葉が帯にあるわけですが、ピュアとエロを繋げて捉えて、その切り離しでそれぞれの売りを分けるのだとしたら、上手いなぁと思うのです。
【男性へのガイド】→ピュアピュアな少女漫画。これは男性構えてしまう可能性高いと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】→食わず嫌いはよくないな、と思わされた作品。恋愛のみに絞った可愛らしい少女漫画、久々に読んだ気がします。
作品DATA■著者:湯町深
■出版社:小学館
■レーベル:cheese!フラワーコミックス
■掲載誌:cheese!
■全1巻
■価格:400円+税
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