このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [続刊レビュー] 2011.01.06
作品紹介はこちら→咲坂伊緒「ストロボ・エッジ」
6巻レビュー→安堂のヘタレっぷりに拍車がかかってきたんですが… 《気まぐれ続刊レビュー》咲坂伊緒「ストロボエッジ」6巻
7巻レビュー→あれ、仁菜子ってこんなカワイかったっけ…?《続刊レビュー》「ストロボ・エッジ」7巻
8巻レビュー→蓮にニヤつき、仁菜子には渋い顔を…:咲坂伊緒「ストロボ・エッジ」8巻
9巻レビュー→ここにきて最高の盛り上がり!読まなきゃ絶対損です!:咲坂伊緒「ストロボ・エッジ」9巻




1102992659.jpg咲坂伊緒「ストロボ・エッジ」(10)


好きな人が
自分を好きでいてくれる世界
こんなにキラキラした世界が
あったんだ



■10巻発売、完結しました。
 連のことが好き。わかっているのに。。。喧嘩から守ってくれた安堂が傷ついている姿を見て、連からの告白を受け入れられなかった仁菜子。でも、断ってしまった本当に理由は、もっと別の所にあるのではと、仁菜子はぐるぐると悩む。そんな彼女に対し、安堂は、とある行動を起こすが…。そしてやっとみつけた、自分の気持ちとは!?みんなの好きが積もり積もる、感動の最終巻、登場です!
 

~納得の完結~
 無理に長引かせることも無く、10巻にて決着。きっちりと終わりを迎えてくれました。付き合ってからの風景は、余韻程度に番外編で描かれるのみ。本編では、あくまで二人が結ばれるまでの過程に絞って描ききった、その潔さに拍手です。初恋を丁寧に描くというテーマのもと、描かれて来た本作としては、付き合ってからの紆余曲折は余計なものであったのかもしれません。ただ純粋に「好きだから」で決着できる恋人以前の関係だからこそ、初恋の純度を最大限活かすことができる。キラキラとが輝いている一瞬という意味が込められた、「ストロボ・エッジ」というタイトルを地で行く構成となっていました。そんなヒロインが、最も輝いたのは、彼女の二度目の告白のとき。しかもこの告白は、初めての告白の時と実にシチュエーションがよく似ていたのでした。
 


~初めての告白との共通点・非共通点~
 かつてあったシチュエーションを被せてラストに持ってくるという手法は、よく使われますが、この作品では、同じように見せかけつつも、微妙に異なっていたりする部分があり、積み重ねた想いと、その状況の差異をよく表していました。
 


~前段階でのかませ犬と女神様~
 まずは告白に至る前段階での一件。今回仁菜子は、彼女に想いを寄せる安堂をハッキリとフる形で、蓮への告白へと向かって行きましたが、実は初めての告白の時も、仁菜子は自分に想いをよせる相手をフッているんですよね。それが、初代噛ませ犬である、幼なじみの大樹。今回に比べ、大樹との方がよりハッキリとした「断り」という印象が強かったやりとりでしたが、安堂/大樹どちらも、自分に可能性がないことを自覚し、半ば相手の背中を押すような最後。そして何より、二人ともに、仁菜子に対して「行きな」との促しの言葉を伝えています。かませ犬らしい、実に素敵な言葉ではないですか。そしてそのあと一人、ひっそり落ちる。。。なーんて、そこはリア充の巣窟「ストロボ・エッジ」。かませ犬に対してのサポート体勢が違います。そんな彼らの前には…
 
 それぞれの女神様が。。。
 

ストロボエッジ10-1
大樹にはさゆりが…

 

ストロボ・エッジ10-2
安堂には真央が…


 
 二人の女の子は、一体どんな気持ちでこの告白の様子を窺っていたのか気になるところですね。「フってくれて=自分にチャンスをくれてありがとう」なのか、「なに仁菜子ムカつく」なのか。



~同じシチュでも違う風景~
 さて、そんな形で救いが用意されている間、仁菜子は駅へ、蓮を追います。そしてついに告白へ。このシチュエーションは実にわかりやすいですよね。初めてのときも、二度目も、駅のホームで、「あのねっ」から。ただこの時もまた、ちょっとした違いが。


ストロボ・エッジ10ー3
二度目の告白も「あのね」から。また前回は「ただ 伝えたい」が二度繰り返されたのに対し、今回は「今 伝えたい」に変わりました。付き合うという段階まで考えていなかった前回は、伝えてそれでおしまい。だからこその「ただ 伝えたい」。けれども今回は、前とは違います。「どんなふうに好きか」「どうなりたいか」そのことを蓮くんに今伝えるために、駆けつけたのです。



 はじめての告白のときは、電車から降りる蓮くんを追いかける形で一緒に下車。これはそのまま、仁菜子の気持ちが一方通行であることを表しているわけですが、二度目の告白の時は違います。仁菜子は蓮くんを追いかけて駅へ。そして当の蓮くんもまた、仁菜子に会うために電車から降りているのでした。もはやこれは説明不要。お互いの気持ちの現れということでしょう。
 
 また当然のことながら、告白している駅は別の駅です。初めての告白は、乗車を経ての、蓮くんの家の最寄り駅。そして二度目の告白の時は、学校からの最寄り駅。これがまた粋なところ。フラれた後、一緒に帰るのはこの上ない気まずさをもたらし、逆に、お付き合いが成立してから、一緒に乗る電車は、格別の幸福感とドキドキ感をもたらしてくれます。フラれたあとは一人で帰り、成立すれば一緒に帰る。余計な気まずさを残さず、幸福感のみを増幅させてくれる、告白の場所。本編では描かれてはいませんが、きっと楽しい帰りの電車だったんだろうなぁ。。。
 

~キスだけはしっくり来ず~
 こんなにキレイに決まった告白だったのですが、直前の一件のため、実はちょっとだけもやもやとした気持ちを残していたものまた事実。あのキスですよ、キス。本編では、「めでたしめでたし」みたいな感じになっていましたが、かませ犬のキスだけあって、本命とのキスがないとはどういうことだ!!と。やっぱりねぇ、初恋を丁寧に描くのであれば、初めてのキスも丁寧に描いて欲しいわけですよ。例えあれが、仁菜子の背中を押すための行動であったとしても、やっぱり蓮くんとしてこそが…。この件は特別編でちゃんと回収しましたが、一旦あそこで「本編終了」とされたら、「ええっ」となる読者は少なからずいそうで。とファーストキス云々を20代も半ばの男が語ってもキモイだけなので、この辺で自重しておきます。あ、全然関係ないですけど、仁菜子は制服の短いスカートよりも、ショートパンツで足出している方が断然可愛く見えますよね。
 
 
 
~新連載「アオハライド」~
 早くも新連載の告知がありました。タイトルは「アオハライド」。今月発売の別冊マーガレットにて連載開始ということで、こちらも期待大です。さてさてお次は、どんなキラキラした恋模様を見せてくれるのか。今から楽しみです。


■購入する→Amazon

カテゴリ「別冊マーガレット」コメント (13)トラックバック(0)TOP▲
コメント

いつもレビュー参考にさせていただいてます!このサイトで良作漫画と出会うことができました。感謝です。次は「ちくたくぼんぼん」の2巻のレビューを読んでみたいです。なんだか最近、三五が若干ジブリのハウルに見えてしょうがないです(笑)2巻はかなりニヤニヤして大変でした。またニヤニヤするような少女漫画を見つけたら教えて下さいね。それでは、次回の更新も楽しみにしています。
From: 吟子 * 2011/01/06 20:02 * URL * [Edit] *  top↑
このコメントは管理人のみ閲覧できます
From:  * 2011/01/06 21:59 *  * [Edit] *  top↑
こんにちわ!
中2で別マ愛読してる女子です!
ストロボは読んでてきゅんきゅんしまくりでした><
次回作のアオハライドもぜひぜひ紹介お願いしますっっっっっ!!
From: 瑠伽 * 2011/01/10 20:00 * URL * [Edit] *  top↑
いい最終巻だったと思います。
安堂は、最後までかませ犬でしたね。
仁菜子は、私服も制服も可愛かったですね。




From: シャドー * 2011/01/13 21:56 * URL * [Edit] *  top↑
「ちくたくぼんぼん」のレビュー遅ればせながらお届けできましたー!
少しでも楽しんでいただけるようがんばりますので、
よろしくお願い致します!
From: いづき@管理人 * 2011/02/06 09:52 * URL * [Edit] *  top↑
コメントありがとうございます!
もちろんアオハライドもレビューしますよ!
From: いづき * 2011/02/06 10:04 * URL * [Edit] *  top↑
安堂はかませ犬でしたが、
キスを奪うというすごく幸せなかませでした。
そこは賛否両論あると思いますが(笑)
From: いづき@管理人 * 2011/02/06 10:09 * URL * [Edit] *  top↑
いやー、よかった!ただその言葉しか思い浮かばないわぁ~
From: ぼーちゃん * 2011/02/23 18:37 * URL * [Edit] *  top↑
安堂くんかわいそぉ 涙
From: 梨来 * 2011/04/07 17:21 * URL * [Edit] *  top↑
急に失礼します

うちわ安堂くん派でした(笑)だからちょっと心のどこかで安堂くんがになこと幸せになれれば… なんて思ってました(笑)だから最終巻、安堂が真央とくっつくんぢゃなくて、安堂わになことくっつけばよかったのにーとかおもっちゃいました(笑)
From: ゆか * 2011/05/04 20:38 * URL * [Edit] *  top↑
はじめまして。
安堂派ですが、ヘタレっぷりに萌える私はくっつかなくてむしろ喜びました(笑)
好きな相手とファーストキスというのが鉄板の少女漫画で、
ちゃっかりキスしちゃったあのシーンは、最大のご褒美だったのかもしれません。
From: いづき@管理人 * 2011/05/20 22:50 * URL * [Edit] *  top↑
色付きの文字私は団長がいいスパイスを効かせてたと思いますよ。
男の子たちはどの子もいい子だし・・・。
でも、本当は男の子って、ここに出る全員の要素を兼ね備えてるというか、持ってると思うんだけどちがうかな・・・?
・・・そうであってほしいと思う私の願望・・・?
でも女の子なら間違いなく仁菜子のように育って欲しいよね~。
母親目線(?!)
From: mariko * 2011/05/29 21:59 * URL * [Edit] *  top↑
主人公仁菜子ちゃんの気持ちが丁寧に繊細に描かれてて素敵すぎました!そして蓮くんがもうかっこ良すぎてかっこ良すぎて。。。ドキドキしっぱなしですね!最高のストーリーで出会えて良かった!一気に全部買い揃えましたー(笑)小さい演出まで完璧ですね!最高の終わり方だと思いますがやっぱり2人の今後やドキドキが読みたくて読みたくていまだにしかたありません(笑)続きが読みたいのが私の夢でーす(笑)
From: りさ * 2013/11/03 19:25 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。