このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.01.10
1102992850.jpg響ワタル「おいらんガール」(1)


意地と張り
惚れたはれたの
色恋絵巻



■時は江戸、舞台となるのは遊郭立ち並ぶ吉原。かつて大きな商家の娘だった椿は、家の没落と共に吉原に売られ、もう8年。当時7歳、初恋だった奉公人の男の子・真に、別れ際「金持ちの娘だから仕方なく相手してやってただけ」と衝撃の言葉を投げつけられ、以来真を見返すために、花魁の頂点を目指す!美貌も芸事も、日々磨きをかけるが、姉女郎で現在No.1の花魁・鷹尾に何故か目をつけられていて…!?

 「少年ドールズ」(→レビュー)や「花月姫」(→レビュー)などを描いている、響ワタル先生の新作でございます。舞台となるのは江戸時代の吉原。名のある商家の娘でいながら、火事をきっかけに家は没落、結果7歳で吉原に売られることになった少女・椿がヒロインです。家を離れる際、想いを寄せていた奉公人の男の子にヒドい言葉をかけられたことがきっかけとなり、以来8年間、行方もわからぬ彼を見返すためだけに花魁の頂点を目指して切磋琢磨の日々を送っています。しかしそんな彼女の行く手を阻む存在が。それが、姉女郎で吉原ナンバーワンの人気を誇る鷹尾。何かにつけて椿の邪魔をする鷹尾に、不信感を募らせる椿でしたが、ある日とんでもない事実を知ってしまって…というストーリー。


おいらんガール
着物着ながらこの動き。どんなジャンルに属するかと問われれば、花魁メインのスタイリッシュアクション時代劇とでも答えるところです。


 オススメしたいからこそ敢えてその「事実」と明かしますが、鷹尾はかつて自分にヒドい言葉をかけた、奉公人の男の子・真だったのでした。要するに、女装の花魁。どうして女装をすることになったのかは、読んでのお楽しみですが、椿にとってはドびっくりの展開。どんな言葉をかける/かけられるかと思いきや、飛び出して来たのは未だ忠誠を誓う言葉。あの時のヒドい言葉は、自分を諦めさせるために放ったということでした。そんなわけで、吉原という場所で再び巡り会った二人でしたが、今はナンバーワンの花魁と、見習いの新造という、逆転した力関係。忠誠を誓いつつも、仕事場では立場は完全に逆というその捻れが、物語を面白く転がしていきます。
 
 今まで響ワタル先生の作品って、どちらかというと苦手だったのですが、今回はハマりまくりでもの凄く楽しめました。描き込みの多いタッチも、花魁の華やかさを表すのにプラスになり、またテンポの早さが笑いにもアクションにも抜群に活きており、話を変えるだけでここまでハマれるのか…と目から鱗でした。「さくらん」のように、遊郭での下克上・生き様を描くのではなく、メインはどちらかというと、悪人の成敗。ヒロインも、真も、何かとトラブルに巻き込まれがち…いや、トラブルにクビを突っ込みがちなため、最終的に戦闘からの悪人成敗という展開がほぼパターン化。所謂時代劇的な要素が強いのですが、そこに至るまでに二人の関係の変化などを描き、違った味わいが生まれるように工夫。変化は見せつつも、話としては1話完結で、しっかり楽しめるという、構成としての無駄が非常に少ない良作だと思います。
 
 少女漫画で遊郭とは…となるかもしれませんが、椿はまだ新造で、床を共にすることはできず、また真も男だとバレないように、あの手この手でかわしているという状況。ネタとしてそれを匂わすことはあるけれど、メイン二人には決してそういったことが具体的な形として降りかかるようにはなっていません。その辺の描き方もまた上手いなぁと関心させられます。いや、とにかく痛快なのですよ。


【男性へのガイド】
→花魁ってテーマは女性の方が好みそうですが、ノリの良いコメディですので楽しむ余地は多いかと。また遊郭以外での展開もあり、それもまた面白いという。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→描き方は過去作とそう変わらないと思うのですが、コメディベースでかつ花魁ミックスというテーマでここまでハマるとは…本当に衝撃でした。面白かったです。


作品DATA
■著者:響ワタル
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLA(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「LaLa」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。