作品紹介→寂しき魔女に幸せ運ぶ、気まぐれな猫たち:奈々巻かなこ「港町猫町」
奈々巻かなこ「港町猫町」(2)
人はただ
苦しみや
寂しさを抱えて
深くなってゆくだけ
■2巻発売しました。
ここは小さな港町。“魔女”と呼ばれる寂しさを抱えた女の子が、少年の姿をした猫と暮らす、不思議な町。ある雪の夜、シャラは猫たちの間で語り継がれる、「ルーディのキス」の物語をはじめる…。9つの命を持つ猫たちが、主人へとその命を受け渡す、命のキス。。。ちょっぴり泣けて、心の奥があたたかくなる、シリーズ6編を収録!!
~シリーズ継続!~
2巻が発売されてビックリ。1巻は巻数表示がなく、また書店でみかける機会もすごく少なかったので、絶対に続編はないと思っていたので、2巻の情報が発売予定表に載っていた時は本当に嬉しかったです。こんな素敵な物語を、2巻も、そして上手くいけば3巻も読める幸せ。今回もまた、1巻と同じように、切なさとあたたかさを物語から貰うことができました。
~魔女対猫という構図からの変化~
1巻では、寂しさに苛まれた魔女たちに人間の姿をした猫が寄り添い、その寂しさを埋めるという、1対1の関係で完結するような物語が描かれましたが、2巻ではそれをさらに広げた関係性を覗かせる形のお話が多かったように思います。例えば第8話では、元気に生きる女性と、そんな彼女が淡く想いをよせる青年の間を埋めるように、猫が活躍をしますし、最終的な救いを運んだのは、青年と一人の男性という人間同士での完結。猫は救いを運ぶのではなく、背中を押す役目を担うことになりました。同じように第9話でも、猫は見守るのみで、埋められたのは人間同士の心の隙間。第11話でも、家族間の愛情をより強く描き出す形になりましたし、第12話でも複数の人間が絡み、幸せを運んだのは猫であると同時に魔女であるというパターン。1巻と同じようにみせて、段々とその内容は変質し、より広がりを持った受け皿の大きな物語になってきています。
1巻や、2巻の第一話に見られるような、本当に狭く小さな世界で繰り広げられる、切なさと寂しさに溢れた物語というものも好きなのですが、人間同士の繋がりを紡ぎ出す、猫が脇役となるお話もまた素敵でした。本当に何度泣きそうになったことか。描かれているのは、本当に素朴で、どこにでもありふれた悩み、想い。。。そんなマイナスの感情を、猫が時に埋めてくれる、ないし埋めるための手助けをしてくれる。ベタでも絶対に最後に救いを用意してくれる、その温かさが、本当に大人のための童話という感じで、素敵です。
~悲しみ背負う、猫の背中~
また今回は、救いを提示される人間がいる一方で、別れの悲しみを背負う猫たちが何匹か描かれたのが印象的でした。自由気ままで、他人のことなど気にしない。。。そんなイメージのある猫ですが、愛する主人ともなると、話は別。時には自らの命を投げ打ってまで、愛する人を救おうとします。加えて不器用なのか、本当に大切なことは、強く主張できないという不器用な部分もあるのかもしれません。例えば主人である女の子が、親元を離れて遠くの学校へと行ってしまう際に放ったこの言葉…

行かなきゃ
やらなきゃ
人間は猫と別れるとき
いつだってそう言うんだ
なんですかこの切なさ。直前の物語で、猫は背中で感情を出すとのくだりがありましたが、ここで背中のカット。行くなとは言えない、精一杯の言葉です。しかも直前に、彼女の願いを叶え、背中を押してさえいる、その後でのこの言葉。そしてその後、彼の気持ちが描かれることは無く、これが最後の言葉となり、物語は終わりを迎えます。猫的な視点で言えば、切なさとやるせなさのみ残るラスト。前を向いている陰で、一人寂しく佇む猫の姿があることを忘れてはいけません。そして表紙にその猫ですよ。彼が何を思って海を眺めているのかと思うと、途端に切ない気持ちが溢れてきます。
とにもかくにもオススメの一作。魅力は読んでこそ伝わると思うので、是非とも読んで頂きたく。特に、日々に少し疲れや寂しさを感じている方に、心の処方箋としてひとつ。
■購入する→Amazon
/

人はただ
苦しみや
寂しさを抱えて
深くなってゆくだけ
■2巻発売しました。
ここは小さな港町。“魔女”と呼ばれる寂しさを抱えた女の子が、少年の姿をした猫と暮らす、不思議な町。ある雪の夜、シャラは猫たちの間で語り継がれる、「ルーディのキス」の物語をはじめる…。9つの命を持つ猫たちが、主人へとその命を受け渡す、命のキス。。。ちょっぴり泣けて、心の奥があたたかくなる、シリーズ6編を収録!!
~シリーズ継続!~
2巻が発売されてビックリ。1巻は巻数表示がなく、また書店でみかける機会もすごく少なかったので、絶対に続編はないと思っていたので、2巻の情報が発売予定表に載っていた時は本当に嬉しかったです。こんな素敵な物語を、2巻も、そして上手くいけば3巻も読める幸せ。今回もまた、1巻と同じように、切なさとあたたかさを物語から貰うことができました。
~魔女対猫という構図からの変化~
1巻では、寂しさに苛まれた魔女たちに人間の姿をした猫が寄り添い、その寂しさを埋めるという、1対1の関係で完結するような物語が描かれましたが、2巻ではそれをさらに広げた関係性を覗かせる形のお話が多かったように思います。例えば第8話では、元気に生きる女性と、そんな彼女が淡く想いをよせる青年の間を埋めるように、猫が活躍をしますし、最終的な救いを運んだのは、青年と一人の男性という人間同士での完結。猫は救いを運ぶのではなく、背中を押す役目を担うことになりました。同じように第9話でも、猫は見守るのみで、埋められたのは人間同士の心の隙間。第11話でも、家族間の愛情をより強く描き出す形になりましたし、第12話でも複数の人間が絡み、幸せを運んだのは猫であると同時に魔女であるというパターン。1巻と同じようにみせて、段々とその内容は変質し、より広がりを持った受け皿の大きな物語になってきています。
1巻や、2巻の第一話に見られるような、本当に狭く小さな世界で繰り広げられる、切なさと寂しさに溢れた物語というものも好きなのですが、人間同士の繋がりを紡ぎ出す、猫が脇役となるお話もまた素敵でした。本当に何度泣きそうになったことか。描かれているのは、本当に素朴で、どこにでもありふれた悩み、想い。。。そんなマイナスの感情を、猫が時に埋めてくれる、ないし埋めるための手助けをしてくれる。ベタでも絶対に最後に救いを用意してくれる、その温かさが、本当に大人のための童話という感じで、素敵です。
~悲しみ背負う、猫の背中~
また今回は、救いを提示される人間がいる一方で、別れの悲しみを背負う猫たちが何匹か描かれたのが印象的でした。自由気ままで、他人のことなど気にしない。。。そんなイメージのある猫ですが、愛する主人ともなると、話は別。時には自らの命を投げ打ってまで、愛する人を救おうとします。加えて不器用なのか、本当に大切なことは、強く主張できないという不器用な部分もあるのかもしれません。例えば主人である女の子が、親元を離れて遠くの学校へと行ってしまう際に放ったこの言葉…

行かなきゃ
やらなきゃ
人間は猫と別れるとき
いつだってそう言うんだ
なんですかこの切なさ。直前の物語で、猫は背中で感情を出すとのくだりがありましたが、ここで背中のカット。行くなとは言えない、精一杯の言葉です。しかも直前に、彼女の願いを叶え、背中を押してさえいる、その後でのこの言葉。そしてその後、彼の気持ちが描かれることは無く、これが最後の言葉となり、物語は終わりを迎えます。猫的な視点で言えば、切なさとやるせなさのみ残るラスト。前を向いている陰で、一人寂しく佇む猫の姿があることを忘れてはいけません。そして表紙にその猫ですよ。彼が何を思って海を眺めているのかと思うと、途端に切ない気持ちが溢れてきます。
とにもかくにもオススメの一作。魅力は読んでこそ伝わると思うので、是非とも読んで頂きたく。特に、日々に少し疲れや寂しさを感じている方に、心の処方箋としてひとつ。
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