
私たちは
幸せになれますか?
未来は
誰にもわかれへん
■お母ちゃんは、アタシが3歳、朝ねえちゃんが5歳、弟のほーちゃんが赤ちゃんのときに離婚した。とっても明るいお婆ちゃんに、逞しく時に厳しい母、しっかり者の長女に、おっちょこちょいな次女、そしてまだ洟垂れガキンチョの長男。貧乏だけど、それにも負けず、逞しく楽しく前向きに。温かな視点で描く、家族の危うさ、難しさ、素晴らしさ。。。なんいわの家族をめぐる、感動の人間模様!
最近では「おひさまのはぐ」(→レビュー)を描いた天童きりん先生の新作でございます。今回は恋愛ものではなく、家族もの。夫との離婚を経て、祖母、母、子ども3人でぼろ家に暮らす大阪の一家を中心に描く、なにわ人間模様。メインで描かれるのは、表紙に映る3人の女性。子ども3人を養うため、日々の仕事に加えアルバイトまでこなす、厳しい母の灯里、大変な母を目の前にクールなしっかりものに育った4年生の長女・朝ちゃん、そしてとっても明るくちょっとおっちょこちょいな性格の小学2年生の次女・みゆう。家族を支えるもの、そして子どもとはいえ親の事情は理解できる歳の子、そして事情はわかるがまだまだ自分の思いを素直に通したい幼い次女。それぞれの視点から描く、家族内外の模様を、温かく切り取っていきます。

いつもはつとめてしっかり者でいる子が、こらえきれず泣き出してしまう。こういうのに弱いんですよ。。。
大阪が舞台ということで、非常にかしましいというか、賑やかな家族模様が描かれるのかと思いきや、むしろ印象的には逆。登場する子どもたちは、それぞれに裕福貧乏様々ながらも、それぞれに家庭の事情というものを抱え、心に少しの傷を抱えて日々を送っています。世代間での描き出しはあるものの、メインとなるのは長女・朝ちゃんを中心とした、4年生世代。いつまでも何もわからぬ子どもでいられない、けれどもその問題を抱えるには、キャパが小さ過ぎるし、どうしたらよいか分からない。それでも精一杯に、自分を支えてくれる人を守ろうとする、その一生懸命さと純粋さが本当に切なく、そんな彼ら彼女らを優しく抱いてくれる周囲の人間が、本当に温かいです。タイトルの「手のひらサイズ。」、それぞれの手の大きさは違うものの、その中で掬えるものを、掬おうという、そんな彼ら・彼女らの様子を表しているような、素敵なタイトルだと思います。
結果として描かれるのは家族の絆や、人間の繋がり、温もりといったものですが、その過程はけっこう重ためで、しんみりしがち。大人だけで回すなら、重たいだけでもOKかもしれませんが、子どもがいるから、それだけだとちょっと厳しい。そんな重たさを、大阪という土地柄が、上手いこと緩和してくれている印象です。しかし、長女の朝ちゃん、かわいいですねー。大阪弁って、どちらかというと元気で時にやかましいぐらいの女性がデフォルトって印象だったのですが、彼女は憂いを帯びた表情から、ズバッとクールな言葉を関西弁で放ちます。こういうのも良いなぁ、とちょっと思ったのでした。なんて、まだ小4だから可愛げがありますが、大人の関西の方に、大きな声でズバッと言われたらきっと自分は死んでしまいます。
【男性へのガイド】
→家族的な温かさを描いた作品がお好きな方は、是非。恋愛要素は基本的にナシ。女手で支える視点というところにいかにシンクロできるかでしょうか。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→温かい気持ちにさせてくれる、素敵な作品でした。面白かったです。
作品DATA
■著者:天童きりん
■出版社:祥伝社
■レーベル:フィールコミックス
■掲載誌:フィールヤング
■全1巻
■価格:933円+税
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