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Tag [新作レビュー] 2011.01.24
1103001238.jpg高橋燎央「Toxic(トキシック)」(1)


僕が世界を救うんだ


■第三次世界大戦を経て、カリスマ指導者・ローゼンミュラー総統によって統一された世界。再び同じ過ちを繰り返さないよう、反乱・有害分子と判断された者は、例外なく粛清される。そんな総統の元には、総統直属の青年軍隊「ブラックローズ」が存在していた。容姿,能力共に選ばれた若者しか入隊できないその場所に、ある日一人の美少年が入隊してくる。彼の名前はオオガミルカ。美学と狂気が充満した漆黒の園で、彼が抱えるのは…

 第三次世界大戦後、完全に統制された世界に生きる、一人の青年と大きな野望を描いた物語。舞台となるのは、第三次世界大戦を経て、一つの大きな世界統一政府が出来上がった世界。トップに立つローゼンミュラー総統が全ての実権を握り、美しき世界を作り上げるという美学のもと、氾濫分子と目される人間は、男女子ども大人関係なく、粛清されていきます。統一政府樹立から10年、政府軍によって殺処分された人間の数は12億超、実に全世界の人口の1/7に当たりますが、むしろその勢いは今も伸び続けています。そんな総統お抱えの、青年軍隊が物語の舞台。「ブラックローズ」と呼ばれるその部隊は、成績優秀でかつ、見ためが美しくないと入れないという、エリート集団。その場所に入隊してきたオオガミルカは、とある目的を持ってブラック・ローズに入ってくるが…というストーリー。


Toxic.jpg
BLっぽさは漂わせますし、閉塞感のある男だけの環境下ということで、そういった事は起こりえます。しかしそれは最も冒してはならない、タブーの一つ。明らかになれば即殺されるという状況。


 オタク女子向けのレーベルっぽい、中二テイストの強い物語。第二次大戦時のナチス・アドルフヒトラーを思わせる、総統とその物語設定。当然のことながら、メインで描かれるオオガミルカの目的は、その総統の暗殺なのですが、大義を持って暗殺に臨むわけではありません。拾われそのためだけに育てられたという経緯があり、むしろそうすることでしか生きられないという悲しき運命も背負っています。これまた中二的。
 
 物語の肝は、視点がオオガミルカではなく、同じ部隊に所属する血の繋がらない兄・オオガミルイの視点から描かれるというところ。得体の知れない部分をそのまま魅力に変える作用があります。元々閉塞的な環境下で描かれるため、登場人物たちの思惑は見えない方が面白いです。全ての人間が歪み、狂気に満ちた中、それぞれの信念の元に行動をするその様は、美しくもあり同時に気味の悪さが際立つ印象。暗殺対象は当然のことながらガードが固く、暗殺など到底不可能な状況にあるのですが、状況はとんとんとルカのセオリー通りに進み、決着つくのは意外と早いのかもしれません。 


【男性へのガイド】
→これは男性向かないと思います。主人公に重ねればあるいは。。。
【私的お薦め度:☆☆   】
→壮大かと言われると、物語が進む度にスケールダウン感が。だからこそしっかりと完結しそうであるとも言えますが、果たして。



作品DATA
■著者:高橋燎央
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:アヴァルス
■掲載誌:アヴァルス(連載中)
■既刊1巻
■価格:571円+税


■購入する→Amazon

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