このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2011.01.24
1103000201.jpgモリエサトシ「猫の街の子」


あめの日にかさを
さしてあげられること…



■戦前からの古い面影を遺す茶屋街。ここには多くの温かい人々と、たくさんの野良猫たちが暮らしている。そんな猫の仲間になりたいと願う、男の子が一人。母親がある日突然姿を消し、身寄りのなくなったその子・しろは、粟ら屋に引き取られるも、懐くことなく、街で唯一の飼い猫・たえに母親になってもらう。粟ら屋の放蕩息子・いちいは、なんとかしろに懐いてもらおうとするけれど、しろの心は頑なで…?

 モリエサトシ先生が描く、茶屋街の人々と猫と一人の男の子の物語。舞台となるのは、戦前からの面影を残す、情緒ある茶屋街。そこに暮らすのは、それぞれ店を営む人々と、たくさんの野良猫たち、そしてそんな野良猫たちと行動を共にし、自分も野良猫になりたいと願う、小さな男の子・しろ。ある日突然、母親がいなくなり、身寄りがなくなってしまったしろは、粟ら屋に引き取られる形になるのですが、頑に馴染もうとせず、毎日出歩いては猫と共に街を闊歩。引き取り育てようとしてくれている粟ら屋の放蕩息子・いちいとは関係を築こうとせず、街で唯一の飼い猫・たえを「母親」として過ごすのですが…


猫の街の子
この世界の多くを理解するには、まだまだその背中は小さすぎる。そんな彼を、周囲の人間が温かく支える。


 どうしてここまで猫にこだわるのかというと、野良猫たちは皆々街の人々に愛されており、また自分を置いていった母親が、前に飼い猫のたえを優しく撫でていたことを鮮明に覚えていたことから、「自分も人間じゃなく猫になれば皆から、そして母親から愛される」という考えが働いたため。一見自由に楽しそうに見えるその設定は、過去に一度捨てられたことのある心の傷が作用する、切なく寂しい決意だったのでした。それでも彼が、そこまで猫らしく街で行動できるのは、それだけ街の人々に愛されているから。寂しさを抱えた男の子と、そんな彼を優しく支える、街の人々の切なくも温かい物語が、描かれて行きます。
 
 モリエサトシ先生は、「白磁」(→レビュー)の時に「悪い人間は一切出さないことを意識して描いた」と言っておられましたが、こちらの作品もまた、皆々誰かを思いやる気持ちが積み重なって紡がれる、優しいお話となっています。最初は「どうして猫として過ごしたいの…?」というところから始まる、ある意味で謎の多い話なのですが、回を重ねる毎に、それぞれの人物たちの想いが明らかになり、最後には全てがわかるという、上手な構成。相変わらず派手さはないですが、猫と子どもでかわいらしさは抜群。猫や子どもがお好きな方は、是非ともチェックしてみてください。



【男性へのガイド】
→子ども好きであるのなら是非。良い人ばかりで、とても温かい気持ちになれる作品です。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→猫と子どもってだけで美味しい題材なのですが、そんな猫と子どもを守る大人たちの愛情がまた。ちょっと心が疲れてしまったあなたに。


■作者他作品レビュー
モリエサトシ「ラブ シック」


作品DATA
■著者:モリエサトシ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:ザ花とゆめ
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「花とゆめ」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。