
遠い遠い光の思い出
今は一番近くで俺を照らす
■読切り5編を収録。それでは表題作をご紹介。
ディーゼリック王国に伝わる英雄“眠らない騎士”の称号。それは今も騎士団の元も優れたものに与えられている。そんな騎士団に新入隊した女性騎士のアレクは、彼の称号を持つ憧れのヴィンセントと対面するが、彼は稽古もサボっていつも寝てばかり。そんな彼に日々戦いを挑むアレクだったけど、ある日その真相を知って・・・!?
現在LaLaで「図書館戦争」(→レビュー)のコミカライズを連載している、弓きいろ先生のオリジナル短編集になります。「図書館戦争」のイメージが強く、現実ベースの物語が多いのかな、と思っていたのですが、話は全てファンタジー。舞台のモデルとなっているのも、日本ではなく外国で、かつファンタジックベースと、「図書館戦争」とはだいぶ違うテイストの物語が多く収録されています。
収録作は全部で5話。既にご紹介した表題作の「眠れぬ騎士に花束を」をはじめとして、町のマフィアの元に幼なじみの可愛い女の子がやってくるという「マイ リトル リリィ」、イルカのような海洋生物・オルクーガを御してレースをする騎手とオルクーガの絆を描いた「OVER THE BLUE」、女盗賊とその彼女を匿ったとある男の物語「盗賊ジールは誰が為に舞う」、そして女たらしのおぼっちゃまの清算行脚と彼に付き合うメイドの物語「ビリー坊ちゃんの憂鬱」。

ファンタジーをベースに、躍動感のある描写。動きがあると俄然輝くのが、弓先生。
「図書館戦争」でいかんなく発揮されているのですが、弓きいろ先生の持ち味の一つは、動きのあるシーンを実に躍動的に描き出すところ。図書館戦争でのバトルシーンは恋愛以外での一つの大きな見所となっており、バトル時の緊張感やスピーディーさ、パワフルさというのがダイレクトに伝わってきます。それが、これらの作品でも見事に活きているんですよね。例えば表題作では白熱のバトルシーンが、また「マイ リトル リリィ」では乱闘シーンなどで、また「OVER THE BLUE」ではレースシーンで、そして「盗賊ジールは誰が為に舞う」盗賊のヒロインが駆け回るシーンにて。全体的に動きのあるシーンが多いです。
また一方の恋愛ですが、原作付きの「図書館戦争」がそうなのかと思いきや、全体的にスロースタートで、主人公が恋愛に無自覚であるパターンが多め。ファンタジーベースで特殊な世界観を軸として据えるが故に、恋愛は側面的な扱いになるのですが、それをカバーするために、メインを進めた副産物的に成就というのが一つのパターン。恋愛メインで見るのであれば、多少もの足りなさは残るかもしれませんが、それ以外にも男女以前の人と人の、仲間との絆というものをより強調して描いているので、薄味感はありません。テンション高めで親しみやすい作風です。
【男性へのガイド】
→こういう話は女性の方が好むような、そんな世界設定のお話が多いように思います。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→ファンタジーがどれだけ受け入れられるか。短編で描く分、削る要素も出てくるわけで、良さは出しつつも、もうひと伸び欲しかったような。原作付きとは違う、その雰囲気を味わってみませんか?
作品DATA
■著者:弓きいろ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX
■既刊1巻
■価格:400円+税
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