このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.01.26
1103001378.jpg稚野鳥子「家族スイッチ」(1)


彼女はとても強い目をしていて
だけど触ると壊れてしまいそうな
消えてしまいそうな
生身の人間じゃないみたいだった



■元俳優の父に、人気声優の伯父、兄たち弟たちはみなみなイケメン。自分も見ためは悪くない方だと思うけれど、今ひとつパッとしないのは、家族兄弟が皆々派手で変人だから。早くに他界した母の代わりに、家事全般の全てを請け負う三男の鷹司は、破天荒な家族に振り回されっぱなしの、苦労性。貧乏くじばかりの日々に、楽しくもストレスが積もっていたある日、突然鷹司の姉だという女の子が現れて…!?

 「クローバー」や「東京アリス」の稚野鳥子先生の新連載です。「クローバー」は不定期ではありますが、一応現在も連載中だったと思うので、並行連載となるようです。(追記:「クローバー」は完結しました)揃いも揃ってイケメンながら浮世離れした変人ばかりが集う、男所帯の玉木家が、この物語の舞台。母は早くに他界し、残された父に、なぜか同居している伯父、そして上は社会人で下は小学生の男四人兄弟。主人公となるのは、その中でも比較的地味で、かつ一番の常識人である、三男の鷹司となります。元俳優で常識知らずの父、人気声優でこれまた常識のない伯父、異常なまでの女好きで日毎食いまくりの長男、一切言葉を発しない次男、そしてIQ180の天才ながら生意気盛りの四男。そんな彼らのハチャメチャな行動の尻拭いを、いつもさせられる主人公。誰も家事をしないので、全部自分が。そんな苦労ばかりの彼の日常は、お婆ちゃんの法事に赴いたその日から、大きく変わることになったのでした。


家族スイッチ
高3の姉にあたるが、恐ろしく小さい。けれども一本筋が通った性格で、ちゃんと自分の意見は言う。不思議な魅力を持った子です。


 イケメンで個性派だらけの男家族。そんな彼らのハチャメチャな日常を、唯一の常識人である三男の視点から覗く。。。物語の始まりは、ごっちゃにのホームコメディという感じで、非日常が繰り返されるけど、それも悪くないよね、という落としどころの話が2話ほど続きます。そして、「あれ、表紙の子いつ出てくるんだ?」となったところでようやく登場。父と一時期離婚していたときに、母が違う男と作ったというその子は、高校三年生ながら少女にしか見えない姉・天留。祖母と暮らしていたということから、喋り方が女子高生らしからぬ彼女は、お約束のように玉木家で暮らすことになります。
 
 彼女の登場によって、男家族にバラバラに向けられて定まりのなかったフォーカスは、一気に一点に集中することになります。そのシフトチェンジは見事と言うほかなく、序盤に家族を描いたことで、以降特に特徴説明せずとの物語でキャラが活きるという効用もあり。当然のことながら、主人公は天留を強く意識するようになるのですが、どうにも彼女には、内に秘めた悩みがあるようで、この後の物語の進行に陰を落としてきます。そこに謎を残した次男や、天留と完全に血の繋がりのない四男などが絡み、物語は2巻へ。恋愛と家族的物語、双方の要素を混ぜ合わせた風合いの物語。1巻はまるまる導入という形になるのですが、非現実的現実をこれでもかと用い、華麗に舞台設定をしてしまうその過程だけでも十分に面白く、また先への期待も大きく抱かせてくれます。もちろんオススメで。


【男性へのガイド】
→男所帯ですが、苦労性の男の子が主人公ということで親しみやすく、また天留の登場は大きなプラスかと思われます。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→なんだかんだでスイスイ読んでしまうし、面白いし、好き。ちょっと情けない主人公にも感情移入しやすく、天留もカワイイです。


作品DATA
■著者:稚野鳥子
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックスコーラス
■掲載誌:コーラス(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「コーラス」コメント (3)トラックバック(0)TOP▲
コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
From:  * 2011/01/27 08:51 *  * [Edit] *  top↑
男前ってすぐ雨に濡れますね
From: 暗くても * 2011/02/01 19:29 * URL * [Edit] *  top↑
コメントありがとうございました。
修正させていただきました。
From: いづき@管理人 * 2011/02/06 10:22 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。