作品紹介はこちら→水城せとな「黒薔薇アリス」
3巻レビュー→アリスの見た景色と、水城先生の描く愛されキャラの話《続刊レビュー》「黒薔薇アリス」3巻
4巻レビュー→「本当に好きになった人」が既にいる2人に、未来はあるの?:水城せとな「黒薔薇アリス」4巻
関連作品レビュー→「失恋ショコラティエ」3巻
水城せとな「黒薔薇アリス」(5)
君のためじゃないよ
僕が楽になれるから
そう言うんだ
■5巻発売しました。
迷いと惑いのアリスが弾く、「亡き王女のためのパヴァーヌ」の旋律が、かつての想い人・生島光哉を呼ぶ。自分が梓であることを悟られないようにと、必死で取り繕うアリスだったが、予想以上に光哉はアリスにこだわり会おうとしてきて…。一方そんな二人の様子を見たディミトリ、櫂&玲二は…。急展開の第5巻、登場です!
~生島光哉との再会~
ついに訪れてしまいました。生島光哉が、アリスのピアノの音色に導かれるように、彼女の元へ。想定していなかった、再会という展開を迎えます。そして明らかになる、光哉の現在。かつて“光る哉”、とその名前に重ね思いを馳せた、明るく人を引きつけるような輝きはそこにはなく、愛する相手を失った失意の中、未だ闇から出られない彼の姿がそこにはありました。
~ディミトリと同じ苦しみを味わうアリス~
最愛の人を失い、同時に自分のせいだという罪悪感を感じている、半ばパニック状態のまま、その命を繫ぐ力を持ったものに、助けてくれと乞う。結果命は繫がれ、無事に救うことができたと安心したものの、結局それは、自分のエゴに過ぎなかった。ディミトリはアニエスカに対して、そしてアリス(梓)は生島光哉に対して、同じような思いを抱くことになります。

アニエスカには魂がないぶん、それでもディミトリの罪悪感は“その時”に縛られ続けるわけですが、光哉の苦しみは現在進行形で続いており、今現在変化をしているという状況。それを目の前にまざまざと突きつけられるのは、そりゃあキツいわけで。ディミトリは変化することのない、永遠とも言える罪悪感に飲まれ、逆にアリスは、現在進行形で変化をする、ディミトリとは違う苦しみを味わうことになります。どちらが苦しいかはわかりませんが、その苦しみの中で、光哉に身と心を許してしまうというのは、わからないでもない行動なわけで。
~愛と繁殖を描く物語~
その中で描かれた、アリスと光哉のベッドシーン。元々この作品のテーマは、「愛と繁殖」であったわけですが、そういう意味では、この時が一番このテーマを体現しているような気がするなぁと感じました。今まではどちらかというと、繁殖に付随する、良きオスを見抜く能力であるとか、そういった側面が強く出ていたので、こと恋愛が前面に押し出されたこの二人の描写は、今までになく新鮮であったというか。
~身体的接触から見る、ディミトリの想い~
驚いたのは、ディミトリが出ていってしまったこと。彼はそれについて様々語るわけですが、その真意というのは、結局のところ明らかになりませんでした。
そんな中、「アニエスカ」という名前を出した時、ディミトリは激昂し、アリスに手をあげます。この時彼は、「アニエスカへの思いを切り、アリスとして君を愛した」と語っているのですが、アリスがこのような容姿で、このような状況に陥っている中、そのような言葉が出てきても、本当にそうなのだろうかと思える時があるのも事実。しかしディミトリは確実に、彼女をアニエスカとしてではなく、アリスとして愛しつつあります。それが窺えるのは、彼の言葉などではなく、身体的接触にありました。
1巻にてアニエスカを復活させたとき、彼はマクシミリアンにアニエスカの身体を運ばせ、同時にこんな言葉を残します。

彼女はもう二度と
僕に触れられたくはないだろうから
この想いは徹底していて、例えば彼が梓の魂をアニエスカの体内に宿すときも、アニエスカの身体には触れず、レオにその役目を頼んでいます。そう、ディミトリは決して「アニエスカの身体に触れない」のです。そんな彼が、別れ際におくった、アリスへのキス。これ以上に、彼の想いが伝わってくる行動など、あるはずがないのです。いや、もしあったとしたら、それは最後の最後、繁殖のときでしょうか。そういう意味では、彼は既に最高のカードを切ってしまった。そんな彼の気持ちに、アリスがどう応えるのか、6巻は要注目です。なんて、6巻は双子の一悶着で、ディミトリ一切登場しないなんてこともありそうですが。どちらにせよ、目が離せません。
■購入する→Amazon
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3巻レビュー→アリスの見た景色と、水城先生の描く愛されキャラの話《続刊レビュー》「黒薔薇アリス」3巻
4巻レビュー→「本当に好きになった人」が既にいる2人に、未来はあるの?:水城せとな「黒薔薇アリス」4巻
関連作品レビュー→「失恋ショコラティエ」3巻

君のためじゃないよ
僕が楽になれるから
そう言うんだ
■5巻発売しました。
迷いと惑いのアリスが弾く、「亡き王女のためのパヴァーヌ」の旋律が、かつての想い人・生島光哉を呼ぶ。自分が梓であることを悟られないようにと、必死で取り繕うアリスだったが、予想以上に光哉はアリスにこだわり会おうとしてきて…。一方そんな二人の様子を見たディミトリ、櫂&玲二は…。急展開の第5巻、登場です!
~生島光哉との再会~
ついに訪れてしまいました。生島光哉が、アリスのピアノの音色に導かれるように、彼女の元へ。想定していなかった、再会という展開を迎えます。そして明らかになる、光哉の現在。かつて“光る哉”、とその名前に重ね思いを馳せた、明るく人を引きつけるような輝きはそこにはなく、愛する相手を失った失意の中、未だ闇から出られない彼の姿がそこにはありました。
~ディミトリと同じ苦しみを味わうアリス~
最愛の人を失い、同時に自分のせいだという罪悪感を感じている、半ばパニック状態のまま、その命を繫ぐ力を持ったものに、助けてくれと乞う。結果命は繫がれ、無事に救うことができたと安心したものの、結局それは、自分のエゴに過ぎなかった。ディミトリはアニエスカに対して、そしてアリス(梓)は生島光哉に対して、同じような思いを抱くことになります。

アニエスカには魂がないぶん、それでもディミトリの罪悪感は“その時”に縛られ続けるわけですが、光哉の苦しみは現在進行形で続いており、今現在変化をしているという状況。それを目の前にまざまざと突きつけられるのは、そりゃあキツいわけで。ディミトリは変化することのない、永遠とも言える罪悪感に飲まれ、逆にアリスは、現在進行形で変化をする、ディミトリとは違う苦しみを味わうことになります。どちらが苦しいかはわかりませんが、その苦しみの中で、光哉に身と心を許してしまうというのは、わからないでもない行動なわけで。
~愛と繁殖を描く物語~
その中で描かれた、アリスと光哉のベッドシーン。元々この作品のテーマは、「愛と繁殖」であったわけですが、そういう意味では、この時が一番このテーマを体現しているような気がするなぁと感じました。今まではどちらかというと、繁殖に付随する、良きオスを見抜く能力であるとか、そういった側面が強く出ていたので、こと恋愛が前面に押し出されたこの二人の描写は、今までになく新鮮であったというか。
~身体的接触から見る、ディミトリの想い~
驚いたのは、ディミトリが出ていってしまったこと。彼はそれについて様々語るわけですが、その真意というのは、結局のところ明らかになりませんでした。
そんな中、「アニエスカ」という名前を出した時、ディミトリは激昂し、アリスに手をあげます。この時彼は、「アニエスカへの思いを切り、アリスとして君を愛した」と語っているのですが、アリスがこのような容姿で、このような状況に陥っている中、そのような言葉が出てきても、本当にそうなのだろうかと思える時があるのも事実。しかしディミトリは確実に、彼女をアニエスカとしてではなく、アリスとして愛しつつあります。それが窺えるのは、彼の言葉などではなく、身体的接触にありました。
1巻にてアニエスカを復活させたとき、彼はマクシミリアンにアニエスカの身体を運ばせ、同時にこんな言葉を残します。

彼女はもう二度と
僕に触れられたくはないだろうから
この想いは徹底していて、例えば彼が梓の魂をアニエスカの体内に宿すときも、アニエスカの身体には触れず、レオにその役目を頼んでいます。そう、ディミトリは決して「アニエスカの身体に触れない」のです。そんな彼が、別れ際におくった、アリスへのキス。これ以上に、彼の想いが伝わってくる行動など、あるはずがないのです。いや、もしあったとしたら、それは最後の最後、繁殖のときでしょうか。そういう意味では、彼は既に最高のカードを切ってしまった。そんな彼の気持ちに、アリスがどう応えるのか、6巻は要注目です。なんて、6巻は双子の一悶着で、ディミトリ一切登場しないなんてこともありそうですが。どちらにせよ、目が離せません。
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