作品紹介→少女マンガで描かれる歴史ロマン大作:和泉かねよし「女王の花」
和泉かねよし「女王の花」(3)
愛してます
口に出して言うことは
決してなくとも
■3巻発売しました。
幼い頃から共に生きてきた奴隷の少年・薄星を伴い、生まれ育った亜国から母の故郷・黄国に人質として送られた亜姫。ずっと一緒だと思っていた薄星が、いつのまにか成長し、2人の関係には変化が訪れようとしていた…。そして同時に明らかになる、亜姫と薄星に生きる術を教えてきた青徹から、今は亡き母との過去。
~明かされる青徹の過去~
2巻ラストで薄星が暴挙に出るという展開であったため、「え、この先大丈夫かしら…」と思ったのは、とんだ杞憂に終わりました(丁度「メンズ校」(→レビュー)のちょっと残念だった最終巻を読んだばかりで、余計に心配だった)。もう3巻は、「どうしてこんなに泣かせるんですか…」と。とにかく大感動の1冊となっておりました。本編とは少し離れた、青徹によって語られた彼と亜姫の母・黄妃の過去、これが本当に泣かせたんです。
~一冊にここまで凝縮してくる和泉マジック~
今までは亜姫の心情を中心に、それも恋愛とは違う方面での描写が中心となっていました。それでも十分読み応えがあり、名作と感じさせるには十分だったのですが、敢えて言うなら今までにあったような、恋愛からのトキメキや切なさがもっと欲しい!と。そんな中、ヒロインの亜姫は、まだまだ恋愛に気持ちが向かない状態。その様子を見る限り、「メンズ校」的なきゅん死にポイントはまだまだ現れなそうだな…とか思ってたらこれですよ。男性視点で、ショートスパンで過去を織り交ぜつつ、最後の最後でドカンと泣かせる。和泉かねよし先生が、「メンズ校」で繰り広げたやり方は、全く異なる舞台の「女王の花」でも十二分にその威力を発揮してきました。たった2話で、幼い頃の出会いから成熟してのラストまで、一気に凝縮。特にラスト、青徹のモノローグは本当に明快で、そして切なかった…

愛してます
口に出して言うことは
決してなくとも
言いたくても、言えない。届けたくても、届かない。想いとは裏腹に、何かしらの障壁によって届かなかった言葉たち。それらの言葉が、シンプルで、そして真っ直ぐなモノローグとして描かれたときの、その破壊力ったらもう…!それは前作の牧とエリカのそれとも同じではあるのですが、こちらはこちらで、目の前にいる分余計に切ない。彼の決意は固く、彼が思い描いた、黄姫の逃避行の相手は、長い年月を経て、自分から亜姫の姿へと変わっていました。それほどまでに、彼は彼女のために生きたかったという。
~黄姫の願いを頑に守り続ける青徹~
黄姫のために生きるという、彼の信念は、後年もずっと続いていることが作中から窺えます。黄姫は、自分の身がそう長くもたないことを自覚し、青徹に亜姫のことを守ってやって欲しいと頼むのですが、青徹は宮中に入らないながらも、亜姫に学に芸に武道にと、自力で生き抜くための術を沢山仕込みます。同時に黄姫との一件からこの手のみで姫を守るのは難しいと思い知らされたのか、生き抜く術を仕込むことで、彼女を守るという手法を選択。そこで教えられたことは、しっかりと亜姫の身となって、後に生きています。それに亜国から黄国に、亜姫が移れば、しれっとついてきますし。人間関係に於いては鈍感な亜姫も、「あなたは私を必ず助けてくれる」と疑問に思うぐらいには、彼は亜姫を守ってきていたという。
~青徹は薄星をどう見てる?~
そんなカッコイイ男の青徹ですが、一体彼は、薄星のことをどう思っているのでしょうか。立場的に言えば、昔の自分と姿が重なるはずなのですが、彼は同時に彼のことを、こう称しています。
“己の分”ってのを弁えないヤツが嫌いでね
幼い頃は、己の分を弁えられなかったものの、時を経て、最終的には“己の分”を弁える行動を選択した青徹。完全に釘をさすために言ったのか、はたまた少しくらいは期待しているのか。その真意はわかりませんが、とりあえず今は、そういう時ではないということなのでしょう。いやーでもやっぱり、昔の自分みたいなやついたら、「うわぁ…」とかなって厳しくしちゃうだろうなぁ。そんな気持ちなのか。いや、でもそんな悠長なことしてられる状況でもないような。ともあれ薄星は、青徹がいる限り美味しい思いはできないってことだけは確定的なわけで、御愁傷様と言わざるを得ないです。
■購入する→Amazon
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口に出して言うことは
決してなくとも
■3巻発売しました。
幼い頃から共に生きてきた奴隷の少年・薄星を伴い、生まれ育った亜国から母の故郷・黄国に人質として送られた亜姫。ずっと一緒だと思っていた薄星が、いつのまにか成長し、2人の関係には変化が訪れようとしていた…。そして同時に明らかになる、亜姫と薄星に生きる術を教えてきた青徹から、今は亡き母との過去。
~明かされる青徹の過去~
2巻ラストで薄星が暴挙に出るという展開であったため、「え、この先大丈夫かしら…」と思ったのは、とんだ杞憂に終わりました(丁度「メンズ校」(→レビュー)のちょっと残念だった最終巻を読んだばかりで、余計に心配だった)。もう3巻は、「どうしてこんなに泣かせるんですか…」と。とにかく大感動の1冊となっておりました。本編とは少し離れた、青徹によって語られた彼と亜姫の母・黄妃の過去、これが本当に泣かせたんです。
~一冊にここまで凝縮してくる和泉マジック~
今までは亜姫の心情を中心に、それも恋愛とは違う方面での描写が中心となっていました。それでも十分読み応えがあり、名作と感じさせるには十分だったのですが、敢えて言うなら今までにあったような、恋愛からのトキメキや切なさがもっと欲しい!と。そんな中、ヒロインの亜姫は、まだまだ恋愛に気持ちが向かない状態。その様子を見る限り、「メンズ校」的なきゅん死にポイントはまだまだ現れなそうだな…とか思ってたらこれですよ。男性視点で、ショートスパンで過去を織り交ぜつつ、最後の最後でドカンと泣かせる。和泉かねよし先生が、「メンズ校」で繰り広げたやり方は、全く異なる舞台の「女王の花」でも十二分にその威力を発揮してきました。たった2話で、幼い頃の出会いから成熟してのラストまで、一気に凝縮。特にラスト、青徹のモノローグは本当に明快で、そして切なかった…

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口に出して言うことは
決してなくとも
言いたくても、言えない。届けたくても、届かない。想いとは裏腹に、何かしらの障壁によって届かなかった言葉たち。それらの言葉が、シンプルで、そして真っ直ぐなモノローグとして描かれたときの、その破壊力ったらもう…!それは前作の牧とエリカのそれとも同じではあるのですが、こちらはこちらで、目の前にいる分余計に切ない。彼の決意は固く、彼が思い描いた、黄姫の逃避行の相手は、長い年月を経て、自分から亜姫の姿へと変わっていました。それほどまでに、彼は彼女のために生きたかったという。
~黄姫の願いを頑に守り続ける青徹~
黄姫のために生きるという、彼の信念は、後年もずっと続いていることが作中から窺えます。黄姫は、自分の身がそう長くもたないことを自覚し、青徹に亜姫のことを守ってやって欲しいと頼むのですが、青徹は宮中に入らないながらも、亜姫に学に芸に武道にと、自力で生き抜くための術を沢山仕込みます。同時に黄姫との一件からこの手のみで姫を守るのは難しいと思い知らされたのか、生き抜く術を仕込むことで、彼女を守るという手法を選択。そこで教えられたことは、しっかりと亜姫の身となって、後に生きています。それに亜国から黄国に、亜姫が移れば、しれっとついてきますし。人間関係に於いては鈍感な亜姫も、「あなたは私を必ず助けてくれる」と疑問に思うぐらいには、彼は亜姫を守ってきていたという。
~青徹は薄星をどう見てる?~
そんなカッコイイ男の青徹ですが、一体彼は、薄星のことをどう思っているのでしょうか。立場的に言えば、昔の自分と姿が重なるはずなのですが、彼は同時に彼のことを、こう称しています。
“己の分”ってのを弁えないヤツが嫌いでね
幼い頃は、己の分を弁えられなかったものの、時を経て、最終的には“己の分”を弁える行動を選択した青徹。完全に釘をさすために言ったのか、はたまた少しくらいは期待しているのか。その真意はわかりませんが、とりあえず今は、そういう時ではないということなのでしょう。いやーでもやっぱり、昔の自分みたいなやついたら、「うわぁ…」とかなって厳しくしちゃうだろうなぁ。そんな気持ちなのか。いや、でもそんな悠長なことしてられる状況でもないような。ともあれ薄星は、青徹がいる限り美味しい思いはできないってことだけは確定的なわけで、御愁傷様と言わざるを得ないです。
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