
物語のはじまりと
終わりを予感させた
■両親の急逝により、育った東京を離れ、生まれた田舎の村へと戻ることになった譲葉。よく知らない村を彷徨い歩いた先に見つけたのは、薔薇が赤く咲き乱れる廃墟。誰もいないはずなのに、そこにいたのは一人の少年と、執事のような男だった。。。恐るべき宿命に生まれついた少年・セルジュとの出会いは、やがて2人の運命を大きく変化させる。やがてセルジュの双子の弟・リュかが現れ、譲葉が知らされた衝撃の真実とは…
おおきぼん太先生が贈る、シリアスホラー作品。表紙を見て頂いても分かる通り、繊細なタッチの絵が特徴の、スタイリッシュな印象のある作品となっています。お話の舞台は、とある片田舎。両親を亡くしたヒロイン・譲葉は、住んでいた東京を離れ、生まれたこの土地へと戻ってきたのでした。何もないこの土地を彷徨い、辿り着いたのは、赤い薔薇に囲まれたお屋敷。誰も住んでいないはずのそこで、彼女は一人の少年に出会います。会って早々に、自分のことをバンパイアだと伝えた彼・セルジュは、譲葉に血を飲ませてくれと頼んでくるのですが…という導入になっています。

テンション低めのヒロイン。そんな彼女が時折見せる優しさが、個人的にツボ。
山に囲まれた田舎の山奥に佇む、立派なお屋敷。そしてそこに住むのは、ヴァンパイア…というと、アニメ化もされた「屍鬼」を思い出しますが、こちらは1巻完結で、かつ住人たちとの対立構造を見せることもありません。滅び行く種族であるヴァンパイアの少年と、そんな彼に手を差し伸べる一人の孤独な少女、そしてそんな2人を巻き込んでいく、哀しき運命。独特のヴァンパイアの設定から繰り広げられるのは、ごくごく少数の登場人物たちの間で完結する、狭い世界でのお話。人物が少ない分、集中すべきポイントは一点に集中し、コンパクトにまとまったストーリーとなっています。
テンポが良いのか、スピード感があるのかわかりませんが、とにかくあっという間に読み終えてしまいました。元々スケールの大きいお話ではなく、その他の作品でいえば導入で終わってしまいそうな内容を、1冊かけて展開。とんとんと進んで、サラッと完結。途中結構重苦しい状況に陥っているのですが、それでも必要以上にお涙頂戴に持っていかないのは、狙ってのことという気がします。こんなに激しい戦いがあったのに、誰にも知られることなく、過ぎ去っていく。その寂しさ、虚しさが、ラストのヒロインの心情に重なり、切なさを増幅させる形に。読後感は独特も、爽やか。
【男性へのガイド】
→ヒロインの容姿は男性向け作品でも十分イケルかと。美少年についてどう思うか、それだけ。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→作品としての形はキレイも、ちんまりと纏まりすぎた印象もなくもないです。ただ譲葉かわいいってだけで読むのが楽しいという。キャラの関係性重視という方は。
作品DATA
■著者:おおきぼん太
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B’s-LOGコミックス
■掲載誌:ビーズログ(連載中)
■全1巻
■価格:650円+税
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