
…想像と
違うじゃん
■ある晴れた日の午後、大学の構内で…。ある雨の日の夕方、駅で…。有川と御崎は出会った。かわいい彼女がいて、人当たりがよく人気のある有川と、無口でどこか近付き難い雰囲気のある御崎。お互い名前も知らず、存在も知らなかった二人の始まり。期せずして、研究室で一緒に過ごすことになった二人の距離は、段々と縮まっていくけれど…。出会いは偶然、恋は必然、ふたりの物語は、はじまったばかり…
「セブンデイズ」(→レビュー)でおなじみの、宝井理人先生の新連載。といっても、1巻の発売はちょっと前ですので、後追いのような形になりますが。今回ももちろんBL作品なのですが、まぁなんとも素敵な表紙ではないですか。この構図もさることながら、色使いに、ディテールのデザインに、帯に、どれもツボ。思わず購入しました。とある大学を舞台に繰り広げられる、一組の恋物語。イケメンで人当たりが良く、かわいい彼女もいる人気者の法学部生・有川と、人とは話さず研究ばかり、周囲からは同性愛者として見られている農学部生・御崎。全く接点のない二人が出会ったのは、大学構内と駅で偶然ぶつかったから。御崎は何にも気に留めず、以降も過ごしていたのですが、人気者・有川は御崎に興味津々。とある授業に出ていることを知るやいなや、その講義室に突っ込み、御崎に猛アプローチを始めます。とはいっても、恋愛感情は抜きにした、単純な興味から。そして良いタイミングで、御崎の研究室の手伝いを、有川がすることになるのですが…

得体の知れない男・有川に戸惑うも、気になる気持ちは当然芽生えるわけで…。
どちらかというと人付き合いを避けるようにして生きる後ろ暗い青年と、誰からも愛されるような人懐っこい太陽のような青年、そんな二人の組み合わせというのは、「セブンデイズ」を彷彿とさせるカップリングではあるのですが、こちらの方がよりゆっくりと時間が流れている印象。高校と大学という、舞台の違いもあるのでしょう。そして3年生ということで、それなりに落ち着き、時間もある程度自由にやりくりできるというのも、良いです。
今回もまた、全ての躊躇を好奇心のみで軽く飛び越えていってしまうような、爽やか変人が登場するのですが、やっぱり男としては御崎は理解できても有川は受け入れがたい(笑)こう、男が無駄に大切にしているような残念な部分を一切持たず、全てをサクサクと切り捨てて周りも見ずに前だけ進んでいくような彼は、この作品のタイトルにかけて例えるとしたら、まるで“造花”のよう。とびきり美しいかわりに、生ものの香りがしてこない、そんな印象を受けるのです。だからこそ、全てを切り離した世界の中、同性的な感覚での共感という方向(といかそもそもそんな読み方は求められていない)に働かないであろうメインの女性読者からしたら、さぞ素敵なお話なのだろうな、と。というわけで私は、うだうだと根暗にはっきりとしない御崎が、俄然好きなわけですよ。(結局そこかっていう)
【男性へのガイド】
→有川という男はどう思われるのか、気になるところでは有ります。相変わらずのプラトニックさで、BL水準としては読みやすい部類に入るかと。ただ、あくまでBL水準で、ということをお忘れなく。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→なんだかんだで2巻買っちゃうんだろうな、と。オススメしていいのかはよくわからんです。だからここで。
作品DATA
■著者:宝井理人
■出版社:大洋図書
■レーベル:ミリオンコミックス
■掲載誌:CRAFT
■既刊1巻
■価格:650円+税
■購入する→Amazon