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Tag [続刊レビュー] 2011.02.22
作品紹介→小玉ユキ「坂道のアポロン」
4巻レビュー→夏の夜に、ジャズなんていかがです? 《続刊レビュー》小玉ユキ「坂道のアポロン」4巻
5巻レビュー→とっても濃密な…《続刊レビュー》「坂道のアポロン」5巻
6巻レビュー→二つの三角関係、いつの時代も女性は逞しい:小玉ユキ「坂道のアポロン」6巻



sakamitinoa.jpg小玉ユキ「坂道のアポロン」(7)


ああもう
ずっとこの坂道が続けばいいのにな



■7巻発売しました。
 同級生の律子が、千太郎のことを好きだと知りつつ告白し、一度はフラれた薫。ところがある日、薫がピアノの蓋を空けると、そこには律子からの手編みの手袋が。一方街を去る淳兄を、本気のセッションで送り出した千太郎は、百合香への思いを断ち切り立ち直ろうとしていた。。それぞれの思いが動き出す、激動の第7巻!!


~歯がゆい歯がゆい…でもきた!~
 もうとにかく歯がゆい二人のやりとり。想いが通じそうでありながら、お互いの臆病さと、過去の失敗が邪魔をして、なかなか前に進めなかった6巻。もうとにかく、一度良くない方向へと行ってしまったものだから、修正するのはすごく大変なわけで。

 おこがましさは捨て、勘違いしないようにしなくては…。元々ナイーブで、かつ一度傷ついている彼は、同じ失敗は繰り返さないよう、期待する心を必死に制していきます。もう一度行っちゃえばいいじゃん、と思う方もいるかもしれませんが、元々この環境下に置かれただけで嘔吐していたような心の繊細さを持ち合わせていた彼にとっては、この辺が限界といえば限界。というか、現状かなり頑張っている方だと思うのです。こう期待を抑圧するのは、自分なりの防衛法。

 それじゃあ律子に頑張ってもらおう…と思っても、彼女からしても手袋を送るってだけでほぼ全ての勇気は使い果たした形に。これ以上の勇気を…と言っても無理な話であります。でもやっぱり、最終的なきっかけを作ったのは律子でした。


坂道のアポロン7
薫さんは
うちのこと嫌いになったと?
 
 
 「ラストチャンスをあげる」とまであからさまではないにせよ、ほぼほぼラストチャンスであるような匂いを漂わせる言葉。その際に、自分の本心を晒しているところもまた、素敵です。ここにきてやっと踏ん切りがついた薫。熱があったことで、いつものように思考を働かせて自分の衝動を抑えるという部分も鈍っていたのかもしれません。もう追いかけて、捕まえてからのあのやりとり、すっごくクサいんですけどすっごく素敵でニヤニヤが止まりませんでした。


そしてそこからの話の終わり、もうこのツーショットとか最高じゃないですか…


坂道アポロン7-2
 あれ、千太郎じゃんとなるわけですが、7巻は千太郎とのやりとりもまた、素敵だったんですよ。特に、海へ行ってからの、再び文化祭でセッションしてくれないかという話があってからの、嬉々とした様子で話す二人の様子が。この上なく楽しそうで、そこに青春のひとつの完成型みたいなものを見た気がしました。また上のシーン、坂道のアポロンというタイトルからもわかるように、あえて坂道というワードをここに挟んできたというわけで、ひとつ大きな一区切りとなることが窺えます。幸せの絶頂の中匂わせる、不穏な空気。モノローグフラグです。


~千太郎はどこへ行くつもりなのか~
 ラストに不穏な動きを見せたのは、千太郎。父親が帰ってくるということが、そのきっかけを与えたようですが、千太郎はいったいどうするつもりなのか。ラスト、部屋に置かれた荷物を見る限り、どこか遠くへ行くつもりであるような気がします。父親が本当に信頼できる状況にあるかわからない中、幼いチビたちを置いて出ていってしまうというのは、いささか不可解な行動ではありますが、何かしらの理由が、彼の中にあるのでしょう。行き先として考えられるのは、東京かなぁ、という気がするんですよ。淳兄の、そして百合香のいる。なんて、もっと根源的なところでの思い悩みかもしれませんが。そもそもずっと彼は、家には自分の居場所がないと言っていましたし。



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