
あんたがこの世界に
喰われるだけじゃない?
■お嬢様学校に通う隠れ腐女子・桜子が、ここ最近楽しみにしているのは、電車で見かける一組の男子高校生のカップル(桜子が勝手に認定)。大好きなBL作品のキャラクターにソックリな彼らの、一挙手一投足に萌えが止まらないのだ。今日も今日とて電車内で幸せな妄想を…と思っていたら、偶然にも彼らと接触してしまい、あろうことか腐女子であることまで知られてしまう。そんな桜子に、彼らはとある提案をしてきて…
「秘密のエトワール」(→レビュー)の宇野紗菜先生の新作です。前作2巻完結だったのを知らず、3巻まだかまだかと思っていたら、なんか新刊出てたんだ…(´・ω・`) というわけで、新作「蛇とマリアとお月さま」のご紹介です。タイトルと表紙を見ると、なんとなくファンタジーチックな物語を想起させますが、中身は現実ベースの学生おバカコメディ。有名小説家である母の愛娘として育ち、現在はお嬢様学校に通い周りからは羨望の目で見られる…そんな彼女・桜子のもっぱらの趣味は、BL。そう、大変残念な、腐った女の子だったのです。そんな彼女の最近のお気に入りは、電車で見かける二人の男の子。大好きなBLマンガの主人公にそっくりな彼らの戯れ合いに、日々妄想を重ねて楽しんでいたのでした。ところがある日、ひょんなことから彼らに自分が腐女子であることを知られてしまいます。絶体絶命!どうかこのことは黙っていてと彼らに頼むと、彼らはとある提案をしてくるのですが…というお話。

グッジョブです…!しかし実際どうなんでしょう。BLに“萌える”という感覚を殆ど持っていない自分からすると、この感覚はうらやましくもあり。
さっさとネタバレしてしまうと、彼らは双子で、しかも彼女の大好きなBLマンガの作者であったという。弱みを握られた桜子は、そんな彼らのメシスタントとして半拉致されてしまいます。いいように使われ、さらには腐女子の琴線に触れるような様々なイタズラを仕掛ける双子の前に、桜子はタジタジ。序盤は完全に、めくるめくドタバタコメディとして物語が展開されます。しかしそこかしこに見える、伏線の数々。何がどう転んで、二人はBL作家を志したのか。また双子と一緒に住む、オネエ系の男の正体とは。そしてどうやら、双子は桜子のことを知っているようで…と、枚挙に暇がありません。それらが徐々に明らかになるにつれ、一見おバカで楽しげなこの物語の裏には、なにやらとても後ろ暗いストーリーがあるようで、この先を期待させる要因となっています。
「秘密のエトワール」が、かなりストレートにそのヒロインの抱える傷と、解決への指針を示していたのに対し、こちらの物語は謎が多く、明るい未来が見える段階に辿り着くまで時間がかかりそう。現時点では不可解な点が多いのは前述の通りですが、なまじ前半がおばか展開であったために、そのギャップを越えてまで2巻へと手を伸ばさせるような魅力があるかは、微妙なところかもしれません。キャラの魅力でどこまで引っぱれるか。しかしBLネタってこんなにフリーダムなものなんですか。宇宙人攻めってなんだ…
【男性へのガイド】
→めくるめく腐ネタ(腐女子が喜ぶネタではなく、腐をそのままネタとして使ってる)に耐えられるかがポイントか。勢い良いので読むのは苦にならんかとは思いますが。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→ちょっとまだ全体像がぼやけているので、はっきりとは。2巻では、1巻とはガラリ印象の変わったないようになるのかと思うのですが。
■作者他作品レビュー
作品DATA
■著者:宇野紗菜
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
■購入する→Amazon