このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] [オススメ] [読み切り/短編] 2011.02.24
syounensyoujyo.jpgねむようこ「少年少女」


ただ美しいと思って泣くのは
ヘン?



■読切り6編を収録。
 夏。とある事情から、田舎の祖父の家に来ていたハンナは、家の近くの防火水槽に恋人から貰った指輪を落としてしまう。彼氏とは、次に進むべきかどうか迷い中。そろそろ次に進まんと、ヤバい気がする…そんな中、指輪をなくしたなんて言ったら、それこそお終いだ。なんとか拾い上げようと、悪戦苦闘していたところを、地元の少年が手伝ってくれて…

 「午前3時の無法地帯」(→レビュー)などを描かれている、ねむようこ先生の、小学館はフラワーズで描いた短編をまとめたものが、こちらになります。「午前3時の~」シリーズは、ブラック臭のキツい会社を舞台に描いた、お仕事&恋愛マンガでしたが、こちらはそれよりももっとファンタジックだったりオフビート感のある、ぶっ飛んだテイストの恋物語が中心。いつもとはまた一味も二味も違う、ねむようこ先生を楽しむことができる一冊になっていますよ!


少年少女
「トレジャールーム」より。ある日突然、自分の部屋に現れた穴。彼氏の物を捨てろというプレッシャーに呼応するように、日々その穴は大きくなっていく。この構図、がツボ。実にシンプルなテーマと設定なのですが、やけに印象に残ったお話でした。


 表題作はご紹介のとおり、田舎に帰省した少女が、彼氏からのプレゼントを防火水槽に落としてしまい、拾うのを地元の男の子に手伝ってもらうというもの。その他、ファミレスにてレポートに追われる女子大生が、突如超絶モテ期に突入するという、「ファミレス☆ナイト」。ある日突然、飼い犬が人型になって見えるようになった少女の物語「ボーダーライン」。いつまでも希望すれば高校生でいられる特殊な学校を舞台に、駆け落ちを約束した相手を待ち続ける、80歳越えの老人学生を描いた「県立マンモス西高等学校」。物をため込む性格のヒロインが、彼氏から物を捨てろと忠告されたその日、部屋に不思議な穴を発見する「トレジャールーム」。そして、古着屋で買った赤いコートから、虫の羽が閉じこめられた琥珀を見つけることからはじまる「赤いコートのセルマ」。一つとして同じテイスト・舞台の話はない、少し不思議で奇妙なテイストを含んだ作品群となっています。
 
 この手の物語を紹介するときに度々使っている例えなのですが、この作品もイメージしてもらうのであれば、「世にも奇妙な物語」。芸がない、ボキャブラリーが少ない…とか言われるかもしれませんが、これが一番伝わりやすいと思うんだもの(笑)ほら、わかるでしょう?とはいえ基本は「恋物語」。どんなにぶっ飛び、不思議なテイストを醸し出しつつも、最後はしっかり、切なくロマンチックに締めてくれます。
 
 個人的には、表題作の少年少女が好きでした。ひと夏の出会い、何でもなかった最初の出会いから、気がつけば特別な存在に。とかく淡々と描かれる、ひと夏の思い出なのですが、その切り取り方が、十代の少年少女の瑞々しさをこれでもかと表しているようで、心に直撃でした。ヒロインのそばかすもまた垢抜けなさがあって良し。


少年少女1
「少年少女」より。彼氏とするかしないかで悩みながらも、こんなところは無防備。この辺もまた少年少女のアンバランスさを表しているようで、好きです。


 その他面白かったのは、「ファミレス☆ナイト」。上手い話には必ず裏があるわけで。なんとなくシットコムとか、新喜劇的なテイストのお話なのですが、最後の最後にあんな仕掛けを。あの一コマは、非日常感を出すための演出ではなく、ちゃんと伏線だったのね、と楽しく幸せな気持ちと共に、「してやられた!」という感覚に包まれました。
 
 その他「トレジャールーム」もなかなか。こちらは最終的には恋に結びつくのかはわからないのですが、ヒロイン自身は彼女自身の性格と、物たちを愛し、逆に交際相手は自分の愚かさを恋愛を通して学んだのかな、とか考えるとなかなか深い。結末以降を考えるとちょっと怖いですけど(笑)


【男性へのガイド】
→ねむようこ先生の作品はきっと男の人も楽しめる!と敢えて言ってみようかな。面白いと思いますよ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→つけすぎな気もしますが、危険地帯はパンドラよりも、俄然ワクワク感がありました。面白かったです。


■作者他作品レビュー
「午前3時の危険地帯」1巻
「パンドラ」/「ペンとチョコレート」
「東京無印女子物語」


作品DATA
■著者:ねむようこ
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックス スペシャル
■掲載誌:flowers
■全1巻
■価格:933円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「flowers」コメント (2)トラックバック(0)TOP▲
コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
From:  * 2011/02/26 20:50 *  * [Edit] *  top↑
コメントありがとうございました!
From: いづき@管理人 * 2011/03/17 23:57 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。