作品紹介→「りぼんで女の子同士のキス…」各所で話題のガールミーツガール青春白書:えばんふみ「ブルーフレンド」1巻
えばんふみ「ブルーフレンド」(2)
ずっと
あんたのそばにいてあげる
■2巻発売、完結しました。
男勝りのまっすぐな性格で、女子に人気の少女、歩。男子に人気だが、どこか影を潜めた美少女、美鈴。突然のキス、嫉妬、誤解…。様々な壁にぶつかるも、そのたびに乗り越え、互いに惹かれ合っていく。。。だが、美鈴の過去を知る謎の美少女、東の登場で事態は思いがけない方向へ動き出す。そんな中、美鈴の過去を知らされた歩は…
~帯は煽りすぎも、良き完結~
完結です。2巻とは、少々早いような気もしますが、なかよしで同じ百合系統の「野ばらの森の乙女たち」(→レビュー)もまた早期完結ということで、このぐらいが一つの限界(掲載誌的)なのかもしれません。しかし帯の煽り方がえげつなくて心配になるレベルです。「この百合マンガがすごい!」…個人的には、1巻の作品紹介時にも書いている通り、この作品から百合感はあまり感じることがなく、やはりタイトルから受ける通り、フレンド=友情から発展した恋愛に限らない様々な感情がミックスされた青春物語という印象が強いです。てか1巻と2巻の両方にコメントがある、(23歳 IT関係)って同一人物としか思えないのですが。両方「まさか…とは」口調ですし。
とはいえ物語の良し悪しに、プロモーションの仕方は無関係。もしそれに引っぱられたとしたら、不幸です。1巻ラストから考えて、どんどん重い方向に行き、出口が見えなくなるのでは…と若干思っていたのですが、2巻完結、しかも思いのほかあっさりと、そして爽やかに物語は幕を閉じました。
~美鈴の物語だった~
元々物語は歩の視点で進行しており、ラストに近づくにつれて美鈴視点へと変化していったのですが、ストーリーは一貫して美鈴のものでした。二人の前に立ちはだかる問題は、いつだって美鈴のもの。クラスメイトたちとの確執に、東という美少女の登場、中傷の貼り紙に、過去の傷。それらの彼女を縛る過去からの解放が、この物語を形成する軸となっているのです。そんな中、その救世主となってくれたのが、歩。自分一人では身動きができず、頼らざるを得なかった美鈴と、そんな彼女をどうしても放っておくことのできなかった歩。逆に歩が美鈴に救われる場面は、殆どありませんでした。
物語の段階としては、出会い→過去の露呈→過去からの解放→解放してくれた歩からの一人立ちという過程を踏んでおり、それが完了した時点で完結と、文脈的にスッキリするのは美鈴からの視点であるということです。そういうところからも「物語の世界の創造者と、登場人物の一人」「常に助けられる側と、常に助ける側」という構図が見てとれるわけですが、その非対称性が、この作品を単純な「百合マンガ」と感じさせない一つの要因になっている気がします。
~挿込まれるべき、一枚のカット~
それでも、でもやっぱりラストは感動。逆に歩に複雑な事情を持ち込まなかったのがよかったのかもしれません。何かしらの影を抱えるヒーローよりも、ただ純粋にヒロインのことを支え守るその姿は、最近の少女漫画のヒーローよりも、余程ヒーロー然としていました。そんな歩に支えられながら、もう一度頑張り、自分一人でも何かできるようにと頑張った美鈴もまた素敵。そんな二人が迎えた卒業は、それまでの残りの中学生活と二人の関係の充実が、そしてこれから二人の未来が、輝き方は違うにしてもきっと明るいものであることを暗示させるような、感動的なものでした。このラストへ向かう過程の中、特に注目すべきは、二人のキス…ではありません(というかこの作品においてキスってどんな役割を果たしてたのかよくわからなかったり。中学生というアンバランスな年頃の象徴?)。本当に注視すべきだったのは、卒業式の前の文化祭でのラストシーンと、物語の冒頭にありました。

文化祭で演劇を成功させることによって得た、美鈴の再生への兆し。その光を導いたのは、他でもない歩。そこに描かれていたのは、包帯が巻かれた美鈴の手と、歩の手。そしてこのカットと全く同じ構図のカットが、物語の一番始めに描かれています…
こちらのカットでは、包帯はほどけ、服は制服、そしてバックには桜の花びらが舞っています。2巻ラストから繋がる、1巻冒頭の一コマ。暗示しているのは、美鈴の歩からの一人立ちというところでしょうか。傷を癒す包帯となってくれた歩からの、一人立ち。卒業の日のくだりは、これがあってこそ。だからキスとか(以下略
~美鈴の意外な設定~
物語中で明言されることはありませんでしたが、描写から読み取れる美鈴のキャラ・設定というのが実に興味深い。まずは彼女、どうやら左利きみたいなんですよね。それが窺えるのは、彼女が自傷を図ったシーン。巻かれた包帯からも分かると思いますが、彼女が傷を付けたのは、右手。基本的に刃物というのは利き手で持つもので、ましてや自分の体を傷つけるとなれば、より慎重になります。。。なーんて、1巻とかでは普通にペンを右手に…。ここで浮上する説と言えば、あ、両利きだったのか、と。まぁそんなどうでも良い指摘は置いておいて、注目すべきは別荘にて歩と一夜を明かした後です。美鈴に手料理を振る舞うのですが(どこから食材を持ってきたのかは謎)、その料理がまた…
別荘持ちのお嬢様で、かつこんなにも見目麗しい美鈴ですが、意外にも朝はパンではなくご飯派。そしてさらに絵を見ると、どうも鮭の塩焼き的な何かと煮物っぽいものがそこに見てとれます。ええ、むっちゃ和食!てか中学生でこのラインナップを作れるってどんだけなんですかって話で、あまりのギャップにこのコマだけずっと見てしまったという(笑)そもそも美鈴がお米を磨いで炊飯器セットしたってだけでもかなりシュール。
というわけで、意外なところで美鈴に癒された2巻でしたが、最初に書いた通り、最後は驚く程の爽やかさで読み終えることができました。どこか話題先行で、かつテーマとして難しいものでもあったとは思うのですが、えばんふみ先生は見事に描き上げたな、とただただすごいという気持ちが溢れて来ます。さすがに次回作も百合ってことはないと思いますが、楽しみです。
■購入する→Amazon
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ずっと
あんたのそばにいてあげる
■2巻発売、完結しました。
男勝りのまっすぐな性格で、女子に人気の少女、歩。男子に人気だが、どこか影を潜めた美少女、美鈴。突然のキス、嫉妬、誤解…。様々な壁にぶつかるも、そのたびに乗り越え、互いに惹かれ合っていく。。。だが、美鈴の過去を知る謎の美少女、東の登場で事態は思いがけない方向へ動き出す。そんな中、美鈴の過去を知らされた歩は…
~帯は煽りすぎも、良き完結~
完結です。2巻とは、少々早いような気もしますが、なかよしで同じ百合系統の「野ばらの森の乙女たち」(→レビュー)もまた早期完結ということで、このぐらいが一つの限界(掲載誌的)なのかもしれません。しかし帯の煽り方がえげつなくて心配になるレベルです。「この百合マンガがすごい!」…個人的には、1巻の作品紹介時にも書いている通り、この作品から百合感はあまり感じることがなく、やはりタイトルから受ける通り、フレンド=友情から発展した恋愛に限らない様々な感情がミックスされた青春物語という印象が強いです。てか1巻と2巻の両方にコメントがある、(23歳 IT関係)って同一人物としか思えないのですが。両方「まさか…とは」口調ですし。
とはいえ物語の良し悪しに、プロモーションの仕方は無関係。もしそれに引っぱられたとしたら、不幸です。1巻ラストから考えて、どんどん重い方向に行き、出口が見えなくなるのでは…と若干思っていたのですが、2巻完結、しかも思いのほかあっさりと、そして爽やかに物語は幕を閉じました。
~美鈴の物語だった~
元々物語は歩の視点で進行しており、ラストに近づくにつれて美鈴視点へと変化していったのですが、ストーリーは一貫して美鈴のものでした。二人の前に立ちはだかる問題は、いつだって美鈴のもの。クラスメイトたちとの確執に、東という美少女の登場、中傷の貼り紙に、過去の傷。それらの彼女を縛る過去からの解放が、この物語を形成する軸となっているのです。そんな中、その救世主となってくれたのが、歩。自分一人では身動きができず、頼らざるを得なかった美鈴と、そんな彼女をどうしても放っておくことのできなかった歩。逆に歩が美鈴に救われる場面は、殆どありませんでした。
物語の段階としては、出会い→過去の露呈→過去からの解放→解放してくれた歩からの一人立ちという過程を踏んでおり、それが完了した時点で完結と、文脈的にスッキリするのは美鈴からの視点であるということです。そういうところからも「物語の世界の創造者と、登場人物の一人」「常に助けられる側と、常に助ける側」という構図が見てとれるわけですが、その非対称性が、この作品を単純な「百合マンガ」と感じさせない一つの要因になっている気がします。
~挿込まれるべき、一枚のカット~
それでも、でもやっぱりラストは感動。逆に歩に複雑な事情を持ち込まなかったのがよかったのかもしれません。何かしらの影を抱えるヒーローよりも、ただ純粋にヒロインのことを支え守るその姿は、最近の少女漫画のヒーローよりも、余程ヒーロー然としていました。そんな歩に支えられながら、もう一度頑張り、自分一人でも何かできるようにと頑張った美鈴もまた素敵。そんな二人が迎えた卒業は、それまでの残りの中学生活と二人の関係の充実が、そしてこれから二人の未来が、輝き方は違うにしてもきっと明るいものであることを暗示させるような、感動的なものでした。このラストへ向かう過程の中、特に注目すべきは、二人のキス…ではありません(というかこの作品においてキスってどんな役割を果たしてたのかよくわからなかったり。中学生というアンバランスな年頃の象徴?)。本当に注視すべきだったのは、卒業式の前の文化祭でのラストシーンと、物語の冒頭にありました。

文化祭で演劇を成功させることによって得た、美鈴の再生への兆し。その光を導いたのは、他でもない歩。そこに描かれていたのは、包帯が巻かれた美鈴の手と、歩の手。そしてこのカットと全く同じ構図のカットが、物語の一番始めに描かれています…

こちらのカットでは、包帯はほどけ、服は制服、そしてバックには桜の花びらが舞っています。2巻ラストから繋がる、1巻冒頭の一コマ。暗示しているのは、美鈴の歩からの一人立ちというところでしょうか。傷を癒す包帯となってくれた歩からの、一人立ち。卒業の日のくだりは、これがあってこそ。だからキスとか(以下略
~美鈴の意外な設定~
物語中で明言されることはありませんでしたが、描写から読み取れる美鈴のキャラ・設定というのが実に興味深い。まずは彼女、どうやら左利きみたいなんですよね。それが窺えるのは、彼女が自傷を図ったシーン。巻かれた包帯からも分かると思いますが、彼女が傷を付けたのは、右手。基本的に刃物というのは利き手で持つもので、ましてや自分の体を傷つけるとなれば、より慎重になります。。。なーんて、1巻とかでは普通にペンを右手に…。ここで浮上する説と言えば、あ、両利きだったのか、と。まぁそんなどうでも良い指摘は置いておいて、注目すべきは別荘にて歩と一夜を明かした後です。美鈴に手料理を振る舞うのですが(どこから食材を持ってきたのかは謎)、その料理がまた…

別荘持ちのお嬢様で、かつこんなにも見目麗しい美鈴ですが、意外にも朝はパンではなくご飯派。そしてさらに絵を見ると、どうも鮭の塩焼き的な何かと煮物っぽいものがそこに見てとれます。ええ、むっちゃ和食!てか中学生でこのラインナップを作れるってどんだけなんですかって話で、あまりのギャップにこのコマだけずっと見てしまったという(笑)そもそも美鈴がお米を磨いで炊飯器セットしたってだけでもかなりシュール。
というわけで、意外なところで美鈴に癒された2巻でしたが、最初に書いた通り、最後は驚く程の爽やかさで読み終えることができました。どこか話題先行で、かつテーマとして難しいものでもあったとは思うのですが、えばんふみ先生は見事に描き上げたな、とただただすごいという気持ちが溢れて来ます。さすがに次回作も百合ってことはないと思いますが、楽しみです。
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