このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [続刊レビュー] 2011.02.28
作品紹介→芦原妃名子「Piece」
3巻レビュー→「砂時計」との違いを生む相手役の性質 《続刊レビュー》「Piece」3巻
4巻レビュー→物語を構成する、異なる性質を持った“Piece”:芦原妃名子「Piece」4巻
関連作品紹介→「ユビキリ」「蝶々雲」「月と湖」



1102992664.jpg芦原妃名子「Piece」(5)


人の言動には
必ず理由がある



■5巻発売しました。
 はるかの元カレは成海の兄・比呂だと確信した水帆。比呂の居場所を知るため成海の母親・理沙子を訪ねるが、彼女の口から聞かされたのは「比呂は異性恐怖症で絶対にありえない」「今は一切連絡を取っていない」という事実だった。元カレ探しは再び行き詰まるが、かつて比呂が住んでいた茨城に向かい、彼の情報を集める水帆。そんな中、比呂に関わっていた人物が浮上してくる。一方、姿を消していた成海から、水帆の携帯に連絡が入って…
 

~発売は昨年末でした~
 えーと、昨年末に5巻発売されていたのですが、このタイミングまで延び延びに。感想書きづらい作品というのは結構あるのですが、この作品は抜群に書きにくいです。というのもあまりに謎が多く、ヒントの散在っぷりに比べて全然整理できていないというのがあります。もうね、こんなすごいことになってるのに、どうしてこんなことしか書けないんだってパターンに陥るわけですよ。何かをヒントに紐解いていっても、絶対に正解に辿り着けない自信があります!(そこで自信を持ってどうする)いやでも、本当に見当つかないのですよ。それでもついにメールにて「まだ5巻のレビューしないんですか?」とのお話を頂いてしまったので、毒にも薬にもならないレビューをお届けします。(ヒドい掴みです)
 
 そういえば5巻の帯、帯の裏にも情報が書かれていたの、気づきましたか?こんなところ誰も見なさそうですが、こんなところにちょっとしたことが書かれているのを気づいた時、すごく得した気分になります。
 


~突如絡んできた礼美~
 さて、一つ明らかになる毎に、新たな謎が二つ三つと出てくる展開は未だ続いているのですが、5巻では意外な人物がストーリーに絡んできました。その登場は、ヒロインである水帆すらも困惑させる意外さを孕んでいました。その人物とは、序盤に積極的に絡んできた元クラスメイトの礼美。
 
 興味本意で絡んでくることはある程度予想はついたのですが、コウジをはじめとした悪ガキ集団の存在が明らかになってきたことをきっかけに、礼美は「どうしてここまで?」と思わせるほどに、その捜索に躍起になります。この物語、台詞抜粋でも取り上げたのですが、基本的に意味のない言動はありません。その全てに、理由があります。この礼美の行動にも、必ず理由があるのです。そのヒントとなるのが、携帯の電源が切れ、それでもなお電話ボックスから手当たり次第に電話をかける、その最中での彼女の回想にありました…
 

piece5-3.jpg
うーむ、一体彼女に何があったのか。少なくとも、明るい過去でないことは想像に難くありません。そしてこの男の姿、5巻のキーパーソンとして名前の上がる、坂田コウジに似ています。彼の現在の面影は、5巻では見ることができないのですが、4巻ラストに台詞付きで登場していました…


piece5-2.jpg
坂田コウジ(現在)


 ヒゲの有無やピアス、髪の流れ方など、多少の違いはあるものの、ほぼ確定と見て間違いないでしょう。一体礼美とコウジがどのように過去に関わっていたのか。何より回想のカットで目を引くのが、お弁当とフルーツ盛りみたいなもの。無意味にこんなカットを挟むとは思えず、どのような意味を持つのか非常に気になるところです。

 さて、これだけではつまらないので、まだヒントがないか、関係のありそうな部分を拾ってみましょう。まずはここ最近の礼美について。恋愛好きで、合コンに参加していることから、結構だらしない性格のように映る礼美ですが、実は結構潔癖な性格だそう。それは、4巻の序盤にて水帆によって言及されているのですが、彼女によるとここ最近はさらにその潔癖がエスカレートしているようです。
 
 水帆にその回想をさせる契機となったのが、礼美の、
 
 「女慣れしてる」
 「気軽に女の手を触ってくる」

    …というのがありえない
  
 という発言。無理矢理感は否めませんが、先の回想シーンには手が握られているカットがあり、また女慣れしていそうなコウジくんのその姿勢。関係ありそうな気がしてなりません。また逆に、コウジの言動にもヒントとなりそうなものが…
 
 
oiece5-1.jpg
つーか、また女紹介してよ
昔みたいに


 
 どうやら皓は、昔コウジに女を紹介していたようです。しかし皓は、茨城では基本的に知り合いの女の子はいないはず。紹介するとしたら、こちら側の人間になるはずなのですよ。ということで、これが繋がる発言なのかはわかりませんが、言動全てがピースであると考えると、繋がらない気がしないという。なんて6巻で「全然違うじゃねーか!」ってパターンも往々にしてありえるので(笑)


~瀬戸内さんマジ天使!~
 さて、長々礼美について書いてきましたが、私はこの作品で一番好きなのは、クラスのアイドル瀬戸内さん。この「他に美人な子はいるのだけど、その雰囲気と性格から、クラスの男子の人気を一手に集めていた」というキャラ設定が、高校時代を思い出させるという(すごく被る存在がいたのです)。なんだかんだで先輩の次ぐらいに協力してくれている彼女、今回も癒し系としてその素敵さを如何なく発揮してくれていました。
 
 礼美に面会拒否をされ、凹んでいる水帆に対して、「またくれば良いよ」と優しく声をかけ、さらにさりげなく傘を水帆に差し、そして極めつけは
 

piece5-4.jpg
そうだ
甘いもの食べていこうよ!
私おいしい店知ってるんだーっ


 
 この癒し…!水帆の好みとか、そんなの関係ないんです。敢えてその問題を一緒に背負おうとはしない、というか背負えないことをしっかりと弁えて、最善の励まし方をする、その姿。こういう子がいてくれるだけで、きっとすごく救われるのだろうなぁ、と。


 さてさて、なんだかんだで長くなってしまったレビューですが、全然スッキリしない(笑)きっと6巻読んでもスッキリしないのでしょうが、それでも読みたい、読まずにはいられない!発売が楽しみでございます。
 


■購入する→Amazon

カテゴリ「ベツコミ」コメント (2)トラックバック(0)TOP▲
コメント

5巻レビュー待ってましたぁぁ!!
ありがとうございます☆彡
しかし管理人さんのレビューを読んでいるといかに自分がただ何となく流して読んでいるのか思い知らされますね(汗
そんなヒントがあったのか(/□≦、)!!分かりやすいヒントにしか気付けていないなんて面白さを分かりきれていない自分にがっかりしたり。。。ヾ(;´▽`A``

しかし1巻から読み直してもまだまだ飽きさせないこの感じ
ついつい単行本が待ちきれずベツコミを買ってしまったり
作者さんの昔の作品を読んでみたり。。。どっぷり芦原妃名子にはまっております☆彡

管理人さんのレビュー付なので楽しみ倍増でございます!!ありがとうございます♪♪
From: あかね * 2011/03/01 12:45 * URL * [Edit] *  top↑
レビュー遅くなってしまい、申し訳ございませんでした!
そしてコメントのお返事まで遅くなってしまい、申し訳ございません!

芦原先生の作品は至る所にヒントがあるのですが、どれも巧妙かつ複雑に配置されているので、
レビューが非常にしにくいですのですよー
今回も何度か読み返して、切り口を一つに絞ってやっとまとめあげました。。。
次はもっとスマートにお届けしたいものです(笑)

レビュー楽しみと言っていただけると、俄然やる気が出ます!
ありがとうございます!
From: いづき@管理人 * 2011/03/18 00:03 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。