このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2011.03.21
1106005302.jpg槙ようこ×持田あき「ピカ☆イチ」(1)


おまえらの根性
叩き直す



■地味で目立たない鈴木花子とくうきのように存在感のない鈴木太郎。校訓に憧れ入学したこの学校で、誰かの役に立ちたいと、強く願ったその結果、変身したのは金髪美少女と眼光鋭きイケメン。そのきっかけになったのは、偶然遭遇した、許せない非道な行為。。。生徒騒然!教師蒼白!学校を揺るがす大闘争が、今始まった…!!

 講談社にて新創刊された雑誌「ARIA」のコミックスでございます。相応に豪華な描き手のラインナップから見て、一番の目玉となっていたのが、こちらの先生方。そう、主にりぼんで活躍されている、実姉妹・持田あき×槙ようこのタッグです。ネームを持田あき先生、そして作画を槙ようこ先生が担当しております。

 それでは内容のご紹介を。主人公はふたり、名門進学校に通う、鈴木花子と鈴木太郎。その名前から想像できる通り、あまりに平凡すぎて、一緒に過ごしていても一切クラスメイトに認識してもらえない二人は、人一倍この高校(の校訓)に憧れて入学してきたクチ。清く正しくを信念とし、校訓を体現するような素敵な人間になりたいと、恒日頃思いながら行動しています(けれど気づかれない)。そんなある日二人が目にしたのは、成績上位者が成績下位者をリンチしている現場。どうやら深く根付いているらしいこの“ゲーム”を目の当たりにし、許せないと息巻いた二人は、金髪の美少女と眼光鋭きイケメンに大変身して…というストーリー。


ピカイチ
変身前はこんな感じ。どちらも同じ素養を持った、似たもの同士。


 ストーリーは、ファンタジックないし腐向けが揃うと思われるARIAの中にあって、そういった要素は一切出てこない、ハチャメチャ学園ドラマとなっています。正義に燃える目立たぬ二人が、目の前で繰り広げられる非道な行為に怒りを爆発させ、大変身し討伐へと向かう…。もちろん悪が散在しているわけではなくて、その先にはフィクサー的存在がおり、そいつを倒してやっと大願成就…という流れになります。物語的にはどこにでもありがちなストーリーなのですが、違うところは異色の主人公が二人いるというところ。こういう特殊な存在(しかも同じような方向性)が二人いるとぶつかりあって、お互いの魅力を消し合ってしまいそうなのですが、それを上手く共存させているのは実績のある作者さんだからこそ成せる業といったところでしょうか。
 
 進学校という舞台であるため、生徒たちはストレスを溜め、目の前で非道な行為が繰り広げられていても見て見ぬ振り、参加するか無視するかという二択といった状況。そんな中、突如現れ反旗を翻す二人に、最初は奇異の目を向けるのですが、やがて成績下位者を中心に感化され仲間に加わる面々が増えて行きます。文法的には少年漫画・ヤンキー漫画的なそれ?きっと今いる敵を倒しても、その先にはさらに強大な…ってパターンが往々にしてありえそうで、長期連載にも対応可能に思えます。内容的に、舞台が中学ではなく高校というところに違和感を覚えるも、これは掲載誌的に狙う読者層がこの辺ということからでしょうか。普通にりぼんやなかよしなどで連載していても、違和感を覚えない…というか、むしろそちらでやっていた方が自然な感じすら覚える内容で、そういう意味では新雑誌の中にあって、作家さん本来のテイストをしっかりと受け継いだ安心の出来と言えるのかもしれません。


【男性へのガイド】
→バトル系かと言われるとそうでもなく、むしろ説教臭く諭す場面が多し。そういう部分含めて女性向けテイストであり、敢えてこれを手に取るという感じでもないのかと。作者さんのファンの方は既に購入されているでしょうし。
【感想まとめ】
→ファンの方は買いそうですが、そうでない方が敢えてこの作品を手に取って、旨味があるのかと言われるとどうだろうという気も。展開としてはわかりやすく、かつ動きのある作品ですので、読み応えはあります。


■作者他作品レビュー
持田あき先生
時空にたたずむ誰かの想いが、君を呼んでる…:持田あき「おもいで金平糖」
持田あき「君は坂道の途中で」

槙ようこ先生
槙ようこ「山本善次朗と申します」
槙ようこ「勝利の悪魔」


作品DATA
■著者:持田あき/槙ようこ
■出版社:講談社
■レーベル:ARIA
■掲載誌:ARIA(連載中)
■既刊1巻
■価格:562円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「ARIA」コメント (2)トラックバック(0)TOP▲
コメント

ピカ☆イチ、マジサイコーv-415
From: ピカ☆イチ * 2012/01/07 16:24 * URL * [Edit] *  top↑
全巻ほしー♪
From: ~名もなきお * 2013/08/13 14:16 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。