
この街でいいことも悪いこともかさなって
あたしはあたしになってゆく
■超ワガママなイトコ・真夜のお供で上京した千帆子。地元で仕事もしているし、彼氏だっている。本家のイトコがわがままさえ言わなければ、来ることなんてなかったのに…。それでもかつての夢だった、イラストレーターの夢を少しだけ追いかけるため、専門学校に入学。しかし現地に赴いて愕然、詐欺に遭ってしまう!初めての東京での生活に、途方に暮れる千帆子を救ったのは、謎の美人・ミチだった。今、下北マジックが起こる…!!
「少女漫画」や「花吐き乙女」(→レビュー)を描いている、松田奈緒子先生のCookie連載作でございます。下北沢を舞台とした、青春ストーリーとでもいうのだろうか、いや青春というにはややただれた部分もあり…みたいな位置付けのお話です(よくわからない説明に)。状況願望の強い本家の娘のわがままに付き合わされる形で、一緒に東京について行くことになった千帆子が物語の主人公。仕事もしているし、彼氏もいるため、地元を離れるという選択肢など到底浮かばなかった彼女でしたが、本家の命令とあっては逆らえません。祖母に小さい頃の夢だった、イラストレーターを少しだけ追いかけてみては、と言われ渋々承諾した彼女は、東京は下北沢で、ワガママなイトコ・真夜と一緒に新生活を始めることになったのですが…というお話。

はじめての人もすんなりと受け入れるお店があったり。温かく、こじんまりとしているからこそ、居心地が良い。
下北沢というと、結構オシャレ度というかサブカル度の高い場所っていうイメージで、上京したての頃は自分的には敷居の高いというイメージからなかなか近付けなかった覚えがあります。なんてもう上京してから6年経ちますが、まだ一度も行ったことないですよ。というかどんな用事があると行くの?というわけで、下北沢を舞台とした物語。この作品の他にも、下北が舞台となっているお話っていくつかあった気がするのですが、検索してヒットするのは「ホーリーランド」ってそれバトル漫画だしなぁ。その他ドラマで言うと、上戸彩ちゃんを主役に沿えるもあえなく打ち切りとなった「下北サンデーズ」とか。こうぱっとも思い浮かべても具体的な作品名は出てこないですが、舞台となった作品は多々ある印象です。
こちら、物語の本拠地となるのは、下北沢にあるバー。入学予定の専門学校が、入学金だけかっさらって倒産。行くあてをなくした千帆子は、道端で泣き崩れるのですが、そんな彼女をバーの常連客が保護し、以来そこに通い詰めるように。そして、そこから広がる人間関係、物語。下北沢という受け皿の広さもあり、集まる人々は多彩で、様々な傷やコンプレックスを持つ者から、芸能人まで。どんどんと広がりを見せる、キラキラとした世界にだんだんと引き込まれつつも、同時に遠くなって行く地元の恋人。その間で揺れる、ヒロインの心情と、そんな彼女に関わる下北に集う人たちの過去と現在。下北沢という土地に居着くことになった人々の情景を、切り口鋭く描き出していきます。
例えば街を扱ったお話としては、同じクッキー掲載でおかざき真里先生の「渋谷区円山町」(→レビュー)などもありますが、こちらの方がより街にフォーカスがあたっている気がしなくもないです。というか、登場人物の受け皿として「街」が機能しているというか。単純に街の性格なのかもしれませんけれど。
【男性へのガイド】
→こざっぱりした印象の作風は、男女共によく受け入れられそう。女子の葛藤であるとか、男性的なカッコ良さを放つ女性とか、女性のツボを刺激するような要素多めではありますが、街を描くという大きな受け皿を持っているので、さほど気にせずとも大丈夫かな、と。
【感想まとめ】
→松田先生ですし、高め安定の面白さでございます。私は続きも買います。
作品DATA
■著者:松田奈緒子
■出版社:集英社
■レーベル:Cookieマスコットコミックス
■掲載誌:クッキー(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
■購入する→Amazon