
真一さんのことが
好きなんだと思います…
■31歳の小説家・内海真一は、現在スランプのど真ん中。祖父母が使っていた空き家を借りて、執筆をしてみるも、大して状況は変わらずだった。そんな彼の家に、子猫を連れた一人の少女が訪ねてきた。森本遥・10歳。「猫を…飼いたくて…」そういう彼女の言葉と表情に気圧されたのか、子供嫌いながら庭で猫を飼うことを許可してから、二人の不思議な関係は始まる。そんな二人の様子を見て、担当編集が提案したのは、遥をモデルにした恋愛小説だった。少女は思った「そばにいたい」と。男は感じた「放っておけない」と。そう…これは恋のはなし。
先日ゴルゴ31さんにお会いした際に、「最近読んだ中でもイチオシ」と教えて頂いた、ARIA発の新作。近所の本屋でも平積みされており、非常に驚いたのですが、まぁこれは手に取らざるを得ないですよ。帯には「31歳×10歳 歳の差ラブストーリー」との文字が。もう、それだけでどインパクトです。というわけで、そんな「これは恋のはなし」のご紹介です。
物語の主人公は、31歳の小説家。イケメン若手小説家として人気を博したのも今は昔。現在は一定の人気はあるものの、ここ最近スランプで全く筆が進まないという状況。気晴らしにと、都会から田舎へと移り、空き家となっていた祖母の家で生活しています。今日も今日とて文が出ない…そんな昼下がり、気がつけば庭先に猫を抱えた少女が一人。10歳のその少女・森本遥は、捨て猫をこの家の庭で飼わせてくれないかと申し出ます。普段であれば無視なり無理だなり言って断る、子供嫌いの内海でしたが、その少女に見つめられた刹那、何やら幻想めいた姿を見てしまい、断るタイミングを逃すことに。結局飼うことを許してしまった真一は、以降遥と不思議な関係を築くことになるのですが、その様子を友人で担当編集の大垣が目をつけ、彼女を題材に恋愛小説を書かないか、と提案してくるのですが…

不器用だけど、すごく素直というか。正直に自分の気持ちを言う遥。10歳という歳の割には、すごく大人に、そして時にすごく幼く映る瞬間がある。
スランプでどこか人恋しさを抱えた31歳の小説家と、その歳には似つかぬ心の傷を持った少女という組み合わせ。全く違う二人に見えて、お互いに愛情表現が下手で、心に寂しさを抱えているという点では同じです。「惹かれる」なんて、きらびやかな言葉は似合わない。もっと、必要だからこそ、いなくてはいけないからこそいる、そんな必然めいた強いつながりを、数少なく柔らかさのない言葉のやりとりから感じとることができます。確かにこれは“恋”ではあるのだけれど、ありふれた“恋”という言葉とは確かに違う、不思議な関係。双方共に不器用な上に、一人暮らしの男の家に一人の少女が日がな通うというその状況が、世間的に良く映らないということで、さらに二人を引き離すわけですが、こういった関係は、上手くいかなければいかないほどに、強く相手を求め、そして再び繋がりが生まれれば、その時の感動はひと際大きいものに。いやぁ、これはある意味で極上の二人でございますよ。
31歳の男が主人公で、彼視点で物語が進行することから、一見ロリコン層に訴求してきそうなこのお話。もちろん小さいにも関わらず、精一杯の言葉と表情で想いを伝えてくる遥ちゃんはもの凄くかわいいのですが、このお話のメインディッシュはそちらにあらず。この作品、遥ちゃんを愛でるというよりも、むしろ全力で不器用なオッサンを愛でる内容になっています。とにかく口べたでぶっきらぼうな物言いしか出来ない主人公・真一。絶対に相手を受け入れるような言葉は投げず、「好きにしろ(超興味なさそうに)」、「うるせーな(面倒くさそうに)」。そして極めつけはこれです「おまえが現れたのもめんどくせーと思ったけど、来なくなってからもふんだりけったりなんだよ、俺は。どーしてくれんだ」…なんだこのステレオタイプのドツンデレ…!31歳の男が、10歳相手に全力でツンデレを発動しておられるという、その光景が、真一が可愛すぎて可愛すぎてもう…(笑)

31歳が10歳に、素直にありがとうも言えないこのツンデレっぷりを見よ。梅以外食わないってまた(笑)
女性向け作品であるARIAでこれって需要あるのかな…なんて思っていたら、こりゃあ絶対大丈夫だ、と。この主人公に加え、鬼畜メガネな香りのする担当編集や、マスコット的に賑やかさをふりまく友人など、登場人物たちのバランスも良し。早々に特別な関係であることを印象づけた上で、後は終始不器用さから来るお互いの“引き”の応酬と、その揺り戻し。前に進むためには、当人たちの覚悟と開き直りが鍵になるのですが、真一についてそれがわかりやすく現れるのが、ツンデレ。そしてそのツンとデレを引き出すのは、決まって遥の切実な想いの吐露であり、行動。要するに、抜群の相性だということですよ。まだ“恋”というには幼すぎる想いの芽。これからどう育っていくのか、凄く楽しみです。そして2巻発売は来月と、これどう考えても出版社側気合い入れてきてますよ。この流れに乗るしかないですな。オススメです!
【男性へのガイド】
→これがオススメできないわけなかろう。どこかBL臭漂うも、遥ちゃんの存在が全て消し去ってくれます。
【感想まとめ】
→これはオススメしたいです。シチュエーション勝ちな部分もあるかもしれませんが、それぞれのキャラクターの味付けがしっかりできているために、プラスαの面白さがあります。オススメです。
作品DATA
■著者:チカ
■出版社:講談社
■レーベル:ARIA
■掲載誌:ARIA(連載中)
■既刊1巻
■価格:562円+税
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