
咲坂伊緒「アオハライド」(1)
戻れる
一番楽しかった
あの頃に
■ずっと男子が苦手だった双葉が、中学のときに唯一好きになった相手・田中くん。高一になった今でも、忘れられない初恋の人。中学のときに、女子に嫌われはぶられた経験から、高校に入学してからは、ガサツに振る舞って意図的に男子を遠ざけている。そんなある日、校舎内で「田中くん」を思わせる男子とすれ違うが、彼は…。恋、友情、家族
「ストロボ・エッジ」(→レビュー)の咲坂伊緒先生の新作でございます!集英社は力を入れたい作品を13日に発売してくるのですが、「アオハライド」も当然のように13日。気合い入っています!というわけで、新作のご紹介でございます。ヒロインは、高校1年生の女子・双葉。中学の時に「男子に対して猫かぶってる」と女子からはぶられた経験があり、敢えてガサツに振る舞っているといます。そんな彼女には、どうしても忘れられない男の子が。元々苦手である上に、女子との軋轢を生じさせた原因ともなった「男子」という存在を毛嫌いしていた双葉が、唯一好きになった田中くん。中学のとき、想いが通じたと思った矢先に転校してしまった彼の姿を、未だに心のどこかで追いかけ続けていたのでした。そんなある日、校舎内で「田中くん」を思わせる男子と遭遇。勢いにのって話しかけてみると、どうやら彼は、その田中くんらしい。嬉しさのあまり泣き出してしまう双葉でしたが、あの時の田中くんとは違い、高校生となった彼はどこか冷たく、時に突き放すような言葉を双葉に向けて…

何度も思い描いた再会。しかしあの時の「田中くん」はそこにはおらず、すっかり変わった彼の姿が。過去の想いと、変わった今。その二つが交わり、青い軌跡を描いていきます。
初恋の甘みやすっぱみを、一から丁寧に描いた「ストロボ・エッジ」に対して、こちらは一歩進んだところからのスタート。もちろん初恋発の、恋のあれこれを丁寧に描いていくことは変わりないのですが、前作の恋すら知らないヒロインとは異なり、こちらは強く「好き」という感情を持ちながらとなっています。お互いに「好きだ」という感情を持ち、それに双方気づきつつも、離ればなれになり再会。どちらも“あの時”のことを忘れてはおらず、むしろずっと意識していたのですが、それでも再会後すんなりと結びつけてくれないのは、お互いに変わりすぎていたため。そうさせたのには、双方幾つかの理由があるので、物語は再会後の歩み寄りによる恋愛を描くと同時に、過去も掘り下げていくという形になります。それゆえに、キラキラ感は前作よりも控えめ。ちょっとビターな高校生の恋を、楽しみましょう。

ヒロインは、中学時代に女子からはぶられたという経緯から、わざとガサツに振る舞い溶け込もうとしているということで、要するに元はすんごくかわいいです。ええ、仁菜子もよかったですけど、双葉も良い良い。てかヒロインに植物由来の漢字が入っているのは偶然なのかしら。とにかく素直な仁菜子に対して、こちらは捻くれているというか、警戒心が人一倍強め。そんな子が勇気を出して、追いかけ続けた中学の時の恋愛を実らせようとするその行動に、すごく勇気づけられるのです。それに過去の実らなかった恋愛をずっと引きずるって、マインドが男子的で、凄く親しみが持てるのですよ。
中学時代のエピソードが1話として描かれ、結果的に本編は2話目からとなるのですが、その1話目の初々しさがたまりません。それがあるために、「これから『ストロボ・エッジ』みたいなキュン死に系の瑞々しい恋物語が!?」と期待した人は、2話目以降のギャップに戸惑うことになるかも。双葉も田中くんも、変わりまくり。とはいえ対人スタンスという外面的な部分での変化が大きいだけで、お互いに“あの時”のことを覚えているあたり、基本的に内面は変わりありません。ちょっと苦いけど、初々しさはそのまま。しっかりと青春しております。イメージ的には、別冊マーガレットの系統と、ベツコミ系統の間って感じでしょうか。1巻ではまだ登場人物が少ないので、恋愛メインで進んでいますが、恐らくこれから友情に家族関係と、広がりを見せ、より別冊マーガレット的なテイストが強くなっていくと思われます。
さてどんなお話なのか、あれこれ語ってはみたいものの、1巻ということでネタバレは避けたいところ。また準備段階の1巻でもあるので、詳細に語るのは難しいところでもあります。そんな中、前作「ストロボ・エッジ」との違いを象徴しているようなカットが。それが、相手役・洸くんが飲み物を飲んでいるシーン。彼、高一にして飲んでいるのは…

ブラックコーヒー。ビターです。
それに対して蓮くんが飲んでいるのは…

正午の紅茶。爽やかです。
この違い。この作品で決定的に異なるのは、相手役のタイプだと思うのですが、それがこの飲料に良く出ている気がするのですよ。これでちょっとでも伝わってくれれば…良いのですが。もちろん面白いのでオススメです。「ストロボ・エッジ」がどちらかというと晩成型というか、徐々に盛り上がりを見せた印象があるので、同じパターンを辿るという期待も込めての大プッシュです!
【男性へのガイド】
→「ストロボ・エッジ」がいけたなら全然大丈!むしろ男女よりもリア充オーラに耐えうるかという、咲坂先生作品に常につきまとうハードルぐらい。
【感想まとめ】
→思っていたより、苦みが。とはいえトキメキはしっかり残し、違った奥深さを見せてくれそうな序盤。これは期待でございます。もちろんオススメで!
作品DATA
■著者:咲坂伊緒
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
■購入する→Amazon