作品紹介→高屋奈月「星は歌う」
6巻レビュー→ユーリがやってくれました《続刊レビュー》高屋奈月「星は歌う」6巻
7巻レビュー→傷を抱え寄り添う者たち《続刊レビュー》高屋奈月「星は歌う」7巻
8巻レビュー→辛気くさい空気が一変、突如として青春ラブコメに!:高屋奈月「星は歌う」8巻
9巻レビュー→恋、進路、高3の彼らに迫る選択のとき:高屋奈月「星は歌う」9巻
10巻レビュー→手をつなげば、きっと心もつながる:高屋奈月「星は歌う」10巻
高屋奈月「星は歌う」(11)
大好き
■11巻発売、完結しました。
目覚めていた桜を支えるため、千広は東京へ戻ることを決める。千広の決意に周囲は戸惑うが、やがてみな、その選択を受け入れる。高校卒業を前に、各々の進むべき道を決めた4人。そして刻一刻と迫る、卒業。あと数日でお別れという時に、千広がサクヤに、そしてサクヤが千広に残したものとは…片恋ダイアリー、完結です。
~この結末とは~
ついに完結しました。このような結末だとは。少しの予感はありつつも、いやさすがに高屋先生がそんな優しいことはしてこないと、少しだけやるせなさの残るラストかと予想していただけに、正直驚きでした。ちょっと拍子抜けた感はあるものの、いやこれこそベストな終わり方なのかな、と読み終わってみれば納得。良いお話でした。
しかし10巻であれだけかましておきながら、その実くっついてなかったんかい、と。一緒だけど、一緒の人生じゃないってのはなかなか読み取れなかったです。「一緒に」という言葉は前の高校時代にも、千広がサクラに送っている言葉で、字面的な違いはありませんでした。けれども2度目の「一緒に」を聞いたとき、サクラは前回のそれとはニュアンスが異なることを、敏感に感じとったのです。これはサクラが敏感だったというよりは、それだけで意思の疎通が可能であるほどに、二人が強い絆で結ばれていたということなのでしょう。そしてもう一つ、何度か使われたフレーズ「魔法使い」がここで効いてくるとは…。「魔法使いにはなれないけれど」そう語った千広に対して、とっておきの、たったひとつの「魔法」をかけたサクラ。もうまさかのフレーズで、瞬間心が震えましたよ。
~朝が来ても、星は歌う~
さて、今回印象的な言葉として残ったのは、タイトルにもなっているこのフレーズ…

星は朝になっても
歌ってくれる
周囲の人物たちを星と見立てての、この言葉は、千広の心にも深く刻まれていたようで、同じ言葉をサクラにも言っていたりします。大事なのは、星は歌うというところではなく、「夜が明けて朝になっても」星は歌っているという所にあります。このフレーズをまさに体現しているのが、コミックス各巻の冒頭に刻まれているとあるページ。1巻を見てみると…
1巻
そこにあるのは、黒く塗られたページに落ちる、一節の言葉。これが巻を重ねる毎に、徐々に変化してきていることに、皆さんは気がついていたでしょうか?例えばこれが、7巻あたりになると…
7巻
黒塗りではあるものの、そこには星々が瞬き、その中に一つのフレーズが刻まれています。それが9巻あたりになると…
9巻
徐々に星空は白みはじめ、そして11巻では…
11巻
ついに真っ白=夜明けが訪れます。そしてその中に浮かぶ、ひとひらの言葉。夜が空け朝になっても、そこでは星が歌っていました。そして最後の言葉は、「大好き」。文字のみで、ここまで突き刺さる「大好き」は、未だかつて見たことがないです。本当にすごかった。そうそう、そういえば物語の最後のカットもまた、夜明けと思しき空の下、手を繫ぐ二人の姿が描かれているんですよね。これもまた、凄く素敵でした。
~最終話、メイン二人は言葉を発さず~
最終話でメインの二人が描かれない、もしくは第三者視点で展開されるという演出はしばしばされるわけですが、この「星は歌う」も同じパターンを辿ることとなりました。最終話だけは、サクラの視点から描かれ、彼女の決意と、彼女の祈りが全てを包みこむような形での終焉。表紙に描かれている舞い散るサクラの花びらが、その想いを表しているかのようで、なかなか感慨深いものがあります。
この物語に於いて、唯一最後まで救われずにいたのが彼女でした。サクヤも、千広も、お互いに周囲の人間に支えられ、再び歩き出すことができました。そして再生を辿った結果、それぞれが「相手のために」行動することができたわけですよ。物語が真の意味でハッピーエンドを迎えるには、彼女が救われ、再生の過程を辿り、そしてその中で誰かのために行動できるようになることが、必須要件であったわけで。それらがギュッと集約されていたのが、最終話。物語は最後「ありがとう」という言葉で締められるわけですが、それまでサクラが「ありがとう」と発せていたのは、千広に対してだけ(もちろんそれまでに、誰かに対して言っていたかもしれませんが、明示的に描かれていないわけで)。それが最後、彼女が違う人に対して「ありがとう」と発せたその様子は、彼女が千広のみを縛り頼りにする人生からの決別を象徴しているようで、すごく良かったです。
新連載決定しているようですが、なにやら洋風ファンタジー?さてどんなお話になるのか、すごく楽しみです。とりあえず今は、素晴らしい物語をありがとうございました!ほんと序盤は何度投げそうになったか…。ここまで読んで、本当に良かったです!
■購入する→Amazon
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大好き
■11巻発売、完結しました。
目覚めていた桜を支えるため、千広は東京へ戻ることを決める。千広の決意に周囲は戸惑うが、やがてみな、その選択を受け入れる。高校卒業を前に、各々の進むべき道を決めた4人。そして刻一刻と迫る、卒業。あと数日でお別れという時に、千広がサクヤに、そしてサクヤが千広に残したものとは…片恋ダイアリー、完結です。
~この結末とは~
ついに完結しました。このような結末だとは。少しの予感はありつつも、いやさすがに高屋先生がそんな優しいことはしてこないと、少しだけやるせなさの残るラストかと予想していただけに、正直驚きでした。ちょっと拍子抜けた感はあるものの、いやこれこそベストな終わり方なのかな、と読み終わってみれば納得。良いお話でした。
しかし10巻であれだけかましておきながら、その実くっついてなかったんかい、と。一緒だけど、一緒の人生じゃないってのはなかなか読み取れなかったです。「一緒に」という言葉は前の高校時代にも、千広がサクラに送っている言葉で、字面的な違いはありませんでした。けれども2度目の「一緒に」を聞いたとき、サクラは前回のそれとはニュアンスが異なることを、敏感に感じとったのです。これはサクラが敏感だったというよりは、それだけで意思の疎通が可能であるほどに、二人が強い絆で結ばれていたということなのでしょう。そしてもう一つ、何度か使われたフレーズ「魔法使い」がここで効いてくるとは…。「魔法使いにはなれないけれど」そう語った千広に対して、とっておきの、たったひとつの「魔法」をかけたサクラ。もうまさかのフレーズで、瞬間心が震えましたよ。
~朝が来ても、星は歌う~
さて、今回印象的な言葉として残ったのは、タイトルにもなっているこのフレーズ…

星は朝になっても
歌ってくれる
周囲の人物たちを星と見立てての、この言葉は、千広の心にも深く刻まれていたようで、同じ言葉をサクラにも言っていたりします。大事なのは、星は歌うというところではなく、「夜が明けて朝になっても」星は歌っているという所にあります。このフレーズをまさに体現しているのが、コミックス各巻の冒頭に刻まれているとあるページ。1巻を見てみると…

そこにあるのは、黒く塗られたページに落ちる、一節の言葉。これが巻を重ねる毎に、徐々に変化してきていることに、皆さんは気がついていたでしょうか?例えばこれが、7巻あたりになると…

黒塗りではあるものの、そこには星々が瞬き、その中に一つのフレーズが刻まれています。それが9巻あたりになると…

徐々に星空は白みはじめ、そして11巻では…

ついに真っ白=夜明けが訪れます。そしてその中に浮かぶ、ひとひらの言葉。夜が空け朝になっても、そこでは星が歌っていました。そして最後の言葉は、「大好き」。文字のみで、ここまで突き刺さる「大好き」は、未だかつて見たことがないです。本当にすごかった。そうそう、そういえば物語の最後のカットもまた、夜明けと思しき空の下、手を繫ぐ二人の姿が描かれているんですよね。これもまた、凄く素敵でした。
~最終話、メイン二人は言葉を発さず~
最終話でメインの二人が描かれない、もしくは第三者視点で展開されるという演出はしばしばされるわけですが、この「星は歌う」も同じパターンを辿ることとなりました。最終話だけは、サクラの視点から描かれ、彼女の決意と、彼女の祈りが全てを包みこむような形での終焉。表紙に描かれている舞い散るサクラの花びらが、その想いを表しているかのようで、なかなか感慨深いものがあります。
この物語に於いて、唯一最後まで救われずにいたのが彼女でした。サクヤも、千広も、お互いに周囲の人間に支えられ、再び歩き出すことができました。そして再生を辿った結果、それぞれが「相手のために」行動することができたわけですよ。物語が真の意味でハッピーエンドを迎えるには、彼女が救われ、再生の過程を辿り、そしてその中で誰かのために行動できるようになることが、必須要件であったわけで。それらがギュッと集約されていたのが、最終話。物語は最後「ありがとう」という言葉で締められるわけですが、それまでサクラが「ありがとう」と発せていたのは、千広に対してだけ(もちろんそれまでに、誰かに対して言っていたかもしれませんが、明示的に描かれていないわけで)。それが最後、彼女が違う人に対して「ありがとう」と発せたその様子は、彼女が千広のみを縛り頼りにする人生からの決別を象徴しているようで、すごく良かったです。
新連載決定しているようですが、なにやら洋風ファンタジー?さてどんなお話になるのか、すごく楽しみです。とりあえず今は、素晴らしい物語をありがとうございました!ほんと序盤は何度投げそうになったか…。ここまで読んで、本当に良かったです!
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