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Tag [新作レビュー] 2011.04.25
1106019022.jpgチカ「番長乙女」


さぁ
私のモテ期は今日からよ!



■恋人を作る気満々で入学した高校…。しかし建築家志望ということで、工業高校に入学してしまったのが、間違いでした…。うっかりクラスのヤンキーに喧嘩で勝ってしまって以来、組の番長として怖れられるようになった蘭子は、すっかり恋とは縁遠い毎日を送っていました。そんなところに、蘭子の雄々しい正体を知らない病弱な転校生がやってきて…!?男にも勉学にも、仁義を切って咲かせてみせます、乙女華!!

 先日ご紹介した「これは恋のはなし」(→レビュー)のチカ先生の、カグヤでの新作になります。何気にカグヤ連載作(スペードコミックス)のレビューするの初めてな気が…。というわけで、「番長乙女」のご紹介です。物語の舞台となるのは、とある工業高校。この高校に通う、唯一の女子・蘭子が、この物語の主人公になります。蘭子は恋に恋する女子高生。「恋をするぞ!」と意気込んで高校に入ったは良いものの、なまじ建築家志望で工業高校なんぞ選んでしまったのがマズかった。そこにいたのは男子男子男子…!しかもみんなむさ苦しく、血の気が多い…!さらにあろうことか、クラスで一番ガラの悪い男子を成敗して以降、クラスの番長として怖れられる存在に…。このままでは恋なんて出来やしない…!途方に暮れる蘭子でしたが、ある日東京から、一人の男の子が転校してきて、蘭子は早速彼にロックオン…!というお話。


番長乙女
女子扱いでもこの浮かれようである。それぐらい彼女にとって、恋は縁遠いもの。


 なんだかストーリーを説明しているときに、凄く沢山感嘆符を使った気がするのですが、それぐらい基本テンション高めのハイスピードコメディ。「これは恋のはなし」とは全く異なる、おバカコメディが展開されております。ヒロインは恋に恋する女子高生。けれども人一倍正義感が強い上に、道場の娘で腕っ節も強いということで、気がつけば番長格に。そういう設定だと、例えば「あぁ愛しの番長さま」(→レビュー)や、「おバカちゃん、恋語りき。」(→レビュー)などがあるのですが、これはどちらかというと「おバカちゃん~」タイプのヒロインかと。勢い先行で、後先考えられないという。それが恋愛に向けばせめてそれなりに恋ができそうなものの、短絡的すぎてそこにまで辿り着けないという。そんな様子が実に清々しいというか、見ていて元気を貰えるので、良いキャラだなぁ、と。
 
 こういった設定がある場合、人一倍強いヒロインはどうしたら…みたいな感じで思い悩むパターンになるのですが、こちらは違います。元ボクシング界希望の星というすごい経歴の相手役を用意し、比較してみてヒロインの方がやや弱いという、強引な技を使ってきます。ギャップではなく、強制的な補正。けれども共に格闘技をたしなむ者ということで、そちらの方が意思の疎通はしやすいのかもしれません。掲げられる課題は、相手役にとことんやる気がないというところなのですが、逆に全力で全滑りしているヒロインが素敵。くじけない蘭子ちゃん、ついつい応援してあげたくなるのですよ。
 

【男性へのガイド】
→「これは恋の話」に比べると、だいぶ乙女もの要素強めで、抵抗感はより大きなものになるかと思われます。おバカコメディがお好きな方は。
【感想まとめ】
→あれこっちが本来?と思える程度には自由に伸び伸びと描いておられます。これだけ違う作風で描けるってのは凄いですよね。


作品DATA
■著者:チカ
■出版社:新書館
■レーベル:SPADE コミックス
■掲載誌:カグヤ
■全1巻
■価格:590円+税


■購入する→Amazon

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