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Tag [続刊レビュー] 2011.04.26
1106019019.jpgかわい千草「101人目のアリス」(5)


だってオレ
出来る子なんだよね!



■5巻発売です。
 シンデレラ役とバイオリン演奏、学園祭でふたつの大役を果たしたアリス。それは彼を子供扱いするヴィックの想像を超えるものだった。冗談だった「マックスのライバル」という話も、意外にありえるかも…?そんな中アリスの父より持ち込まれた、故郷での演奏会の話に、いつものメンバーが参加することになり…。またまた、死んだはずのじーちゃんが登場し、探し求めた楽器・Margoの謎が明らかに…!?


~えええ生きてたのー!?~
 5巻発売です。ずいぶん久々な気がしますが、それもそう、新刊はなんと1年振り。しかしそれだけ待たせるに十分なほど、内容は濃密で、それまで謎であった数々の真実が明らかになりました。こんなに出しちゃって大丈夫?というレベル。本当に畳み掛けるように来たので、どれから出していけば良いのか難しいのですが、個人的に一番の驚きであったのは、アリスのお爺さんが超健在だったということでしょうか。どう考えても死んだ体で話が進んでいたので、登場した時はドびっくりですよ。幽霊か何かかと。しかもなんかすごい禿げてて背が高くて豪快な感じだし。イメージと真逆のパワフルじいさんで、バイオリンというよりはむしろ工具なんかが似合いそうな感じ。しかし彼、見ためとは裏腹に、もの凄くロマンチストなわけで。自分の作ったバイオリンに、自分の好きな女性の名前をつけるなんて。そしてそれを娘婿に託すってんだから、こうなかなかに状況は複雑です(笑)
 
 
~クレアさんさすがです~
 そんなお祖父ちゃんに異様なほど興味を示したのが、そう、クレア嬢(嬢を付けると怒る)です…
 

101人目のアリス5-2
普段トレーニングとかなさってるんですか!? 

 
 「ちゃおか!」ってな突っ込みを入れられそうなほどに目を輝かせて、迫る彼女。ジジセン…?確かに年上好きの気はありましたが、ここまでの歳の差まで守備範囲とは。ペタジーニもびっくりですよ(誰もわからないネタ)。いや、というよりも、筋肉フェチなのか。彼女はチェリストということもあって、楽器の持ち運び一つでもひと苦労。ゆえに、ものを軽々と持ち運ぶことのできる筋力の持ち主というのは、ちょっと憧れるのかもしれません。もしかしたら人知れず筋トレとかしていたりして…。それはそれで、絵的に面白いのでなかなかに良ろしいですね、うん(勝手に納得する)。

 そうそう、そんなクレアさん。今回明らかになった一つの真実に、既に気がついておりました。それは、ヴィックとマックスの関係。それぞれの空気から読み取った彼女は、のらりくらりかわすヴィックではなく、敢えてマックスにこんなことを…
 
 
101人目のアリス5-1
 お見事。いやぁ、さすがです、クレアさん。いつも一歩引いたところから全体を俯瞰し、かつしっかりと目をこらしているからこそできる芸当。だからといって、必要以上に干渉しないのもまた大人。でも子供っぽいキャラが多い中、引きすぎて物語に深く入って来れないなんてこともありそうなので、もうちょっと突っ込んできても良いんじゃないですか?なんて、たぶんまだこの生活の中には、彼女がリスクを冒すほどに大切なものがないということなのでしょう。これからです、これから。


~ヴィックの想いとは~
 そんなわけで、ヴィックとマックスの関係、そして消えたMargoとヴィックの行動が明らかになりました。そのことを知り、アリスは激昂するわけですが、そんな彼に対しヴィックは謝るわけではなくただ「違う。違う。」とだけ言っていました。世渡り上手、交渉上手なヴィックが、謝るタイミングを見逃すような男には思えず、恐らくこれこそが彼の真意なのだろうな、という感じがしてきます。それではここまでして、アリスをマックスの競争相手として仕立て上げたかったのか。「復讐」という選択肢を除いて考えてみると、幾つか可能性が見えてきます。まずは、マックスを育てるためという可能性。単純に兄心、もっと言ってしまえばプロデューサーとしての観点からです。現在ライバル不在のマックスは、バイオリンに対するモチベーションは下がり気味。クレアもちょいと怒りを覚える程度には、バイオリンに対する情熱が欠けています。絶対的な才能とスキルは持っているけれど、それ以上になるには、何か大きな存在が必要。けれども界隈にはそれまで彼に太刀打ちできる人間はおらず、それならばと目をつけたのがアリスだったのかもしれません。加えて、アリスとのパイプを持っていれば、一石二鳥。
 
 というかこれらの行動から考えても、ヴィックがアリスの才能に惚れているってのは間違いないわけで。元々要領の良い彼ではありますが、退学のリスクを背負ってまで、楽器の保管庫のカードキーを拝借したり、ましてや名器であるマルゴを盗み出すなんてことしないはずですよ。それも出会って間もない頃に、そんなことをしてしまう程に、ヴィックはアリスのバイオリンの才を見出し、それを信じようとしていた。その結果取った行動は褒められるものではありませんが、それだけの想いの強さが、彼の行動・言動の端々から伝わってくるのですよ。6巻以降、生まれた蟠りをどう挽回するのか。それもまた、プロデューサーとしての手腕の見せ所。大けがをしてこそ、その人の強さがわかるってもんです。頑張れヴィック!!



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