作品紹介→*新作レビュー*尾崎あきら/誉田哲也「武士道シックスティーン」
2巻レビュー→微笑み絶やさぬ清楚美人、河合先輩が素敵すぎる件:尾崎あきら/誉田哲也「武士道シックスティーン」2巻
3巻レビュー→良い先輩達に恵まれた、最高の環境にいる二人:尾崎あきら/誉田哲也「武士道シックスティーン」3巻
尾崎あきら/誉田哲也「武士道シックスティーン」(4)
さあ始めよう
わたし達の戦いを
■4巻発売、完結しました。
勢いで剣道を辞めると宣言した香織だが、父が自分の試合をいつも見ていたと知り、心境に変化が…。そんな中、こっそりと観に行った大会で力を振り絞る仲間を目にして、剣道部に戻りたいと思うように。だが、なかなか踏ん切りがつかない。そんな香織に対して、早苗は「ある理由」から挑戦状を叩き付け、真剣勝負を挑む……。剣を交えて愛を知る、青春ストーリー堂々の完結!!
~完結です~
完結です。当初の予定では、もっと早く完結の予定だったらしいのですが、好評につき連載延長、このタイミングでの完結となりました。しかし見返してみても、終始濃密でテンションは落ちず、全力疾走で最後まで。素晴らしい連載だったと思います。連載延長は絶対に成功ですよ!本当に最終巻に相応しい、美しい形でのラストであったので、大満足。今回はその辺についてあれこれ書こうかな…と思っていたのですが、その前にまずはこれに触れないわけにはいきません。それが、村浜部長について。
~村浜部長の涙~
今巻の序盤に、東松学園最後の大会の様子が描かれるのですが、そこでの村浜部長の姿がすごく印象的で。3巻のレビューの際、団体戦で敗戦しても決して泣くことのない河合さんと村浜部長について書いたのですが、今回の団体戦でも同じで、村浜部長は泣くことはありませんでした。むしろやりきった感すらあり、最後には共に戦ってきた3年生とこんなやりとりをしていました…

あんた達がいたから
怖いものなんてなかった
ありがとう
最高の三年間だった
そんな気丈な村浜部長ですが、これで引退ということではなく、翌日の個人戦にも登録。今度は一人孤独に戦うことになります。結果は、奇しくも団体戦と同じ4回戦での敗退。これをもって、村浜部長の部活生活は終わることになります。そしてそんな彼女に対して、先生が「お疲れさま。今までで一番良い試合だった」との言葉をかけた直後…

村浜部長にも涙が
絶対に泣かないのではないかと思えた、部長の涙。これまでは部長の立場として、先頭に立ち部員のみんなを引っぱってこなくてはいけないという役目を背負っていました。けれども団体戦の大将としての役目、そして団体戦での部長としての役目は昨日で終わり。先のシーンで、ひとつ荷がおりたのかな、という感じがします。そして部長よりも上に立つ立場の人間からの、優しい言葉。この時初めて部長としてでなく、剣道に打ち込む一人の選手として存在できたのではないかなぁ、とこの時の様子を見ていて感じました。
~香織のための、市民大会決戦~
さて、そんな村浜部長の様子を見て少なからず心を動かされた香織。最初から最後まで…とは言いませんが、この物語において最も大きな変化を見せたのは、彼女でしょう。本当に、彼女のための物語であったと言っても、過言ではないのではないかな、と思います。今回物語は、部活への復帰を賭けて再び同じ場所で早苗と戦うという道筋を辿ることになるのですが、それが尽く香織にとって大きな意味を持っていたものだから、もう決勝のあのシーンは心が震えました。
そもそも香織が東松学園へ入学したのは、早苗と戦うため。市民大会で一戦交え敗戦した相手・甲本を追って、憎き兄の敵がいるのを我慢してまで東松学園へとやって来たのでした。そこで果たしたかった目的は、再び早苗と戦い、その正体を見るということ。しかし早苗はそれを拒否。頑に真剣勝負することを避けていました。それが今回は、早苗からの勝負宣告。この展開をもってして、当初の香織の目的はやっと達成されたのです。
とはいえ当初と今では、香織の剣道観もだいぶ変化が見られています。先の「早苗と再び戦うこと」という目的は、付け加えるならば「戦って勝つ」というところにありました。それは、元々香織の剣道観として、「斬られたら(負けたら)終わり。もし斬られたとしたら、生きている限りまた斬りに行く。」というものがあり、勝たない限り香織はずっと早苗を斬りにかかるはずでした。けれども今回早苗から香織に突きつけられた条件は…

私(早苗)が勝ったら磯山さんは部に戻る
というものでした。そして結果はあの通り。「負けたら終わり」ではなく、そこにあったのは、「負けたら始まり」という、香織のかつての剣道観とは180°異なるもの。この早苗の救い方は、本当に熱くて一本筋が通っていて、そして物語的にもすごく美しかった。負けるって大事ですよね。山王の堂本監督も言ってましたしね、「負けたことがあるというのがいつか大きな財産になる」って(突然「スラムダンク」の話)。この勝負宣言をされたとき、「心臓が大きく跳ね上がった」とあるのですが、それは読者もまた同じ。この瞬間、ガツンと心に衝動が走ったのではないでしょうか。
そうそう、香織の剣道観が大きく変化を見せる過程で、彼女はこんなことを思っていました。
「もしも
西荻のように笑って剣道ができていたら」
その願いも、市民大会の決勝で叶うことになります。面の隙間からのぞく口角は微かに上がり、笑っていることがすごくわかりやすく。そしてそれ以降、香織は笑って剣道をするようになります。それまで勝ち負け・生き死にしかなかった香織の剣道に、楽しさと笑顔をもたらした早苗って、本当にすごいな、と。そしてその集大成が、表紙ですよ。香織とか「え、誰?」って程に笑顔ですよね(笑)ストーリーから表紙まで、何から何まで素晴らしかった!本当にオススメですので、是非ともチェックしてみてくださいね!
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2巻レビュー→微笑み絶やさぬ清楚美人、河合先輩が素敵すぎる件:尾崎あきら/誉田哲也「武士道シックスティーン」2巻
3巻レビュー→良い先輩達に恵まれた、最高の環境にいる二人:尾崎あきら/誉田哲也「武士道シックスティーン」3巻

さあ始めよう
わたし達の戦いを
■4巻発売、完結しました。
勢いで剣道を辞めると宣言した香織だが、父が自分の試合をいつも見ていたと知り、心境に変化が…。そんな中、こっそりと観に行った大会で力を振り絞る仲間を目にして、剣道部に戻りたいと思うように。だが、なかなか踏ん切りがつかない。そんな香織に対して、早苗は「ある理由」から挑戦状を叩き付け、真剣勝負を挑む……。剣を交えて愛を知る、青春ストーリー堂々の完結!!
~完結です~
完結です。当初の予定では、もっと早く完結の予定だったらしいのですが、好評につき連載延長、このタイミングでの完結となりました。しかし見返してみても、終始濃密でテンションは落ちず、全力疾走で最後まで。素晴らしい連載だったと思います。連載延長は絶対に成功ですよ!本当に最終巻に相応しい、美しい形でのラストであったので、大満足。今回はその辺についてあれこれ書こうかな…と思っていたのですが、その前にまずはこれに触れないわけにはいきません。それが、村浜部長について。
~村浜部長の涙~
今巻の序盤に、東松学園最後の大会の様子が描かれるのですが、そこでの村浜部長の姿がすごく印象的で。3巻のレビューの際、団体戦で敗戦しても決して泣くことのない河合さんと村浜部長について書いたのですが、今回の団体戦でも同じで、村浜部長は泣くことはありませんでした。むしろやりきった感すらあり、最後には共に戦ってきた3年生とこんなやりとりをしていました…

あんた達がいたから
怖いものなんてなかった
ありがとう
最高の三年間だった
そんな気丈な村浜部長ですが、これで引退ということではなく、翌日の個人戦にも登録。今度は一人孤独に戦うことになります。結果は、奇しくも団体戦と同じ4回戦での敗退。これをもって、村浜部長の部活生活は終わることになります。そしてそんな彼女に対して、先生が「お疲れさま。今までで一番良い試合だった」との言葉をかけた直後…

村浜部長にも涙が
絶対に泣かないのではないかと思えた、部長の涙。これまでは部長の立場として、先頭に立ち部員のみんなを引っぱってこなくてはいけないという役目を背負っていました。けれども団体戦の大将としての役目、そして団体戦での部長としての役目は昨日で終わり。先のシーンで、ひとつ荷がおりたのかな、という感じがします。そして部長よりも上に立つ立場の人間からの、優しい言葉。この時初めて部長としてでなく、剣道に打ち込む一人の選手として存在できたのではないかなぁ、とこの時の様子を見ていて感じました。
~香織のための、市民大会決戦~
さて、そんな村浜部長の様子を見て少なからず心を動かされた香織。最初から最後まで…とは言いませんが、この物語において最も大きな変化を見せたのは、彼女でしょう。本当に、彼女のための物語であったと言っても、過言ではないのではないかな、と思います。今回物語は、部活への復帰を賭けて再び同じ場所で早苗と戦うという道筋を辿ることになるのですが、それが尽く香織にとって大きな意味を持っていたものだから、もう決勝のあのシーンは心が震えました。
そもそも香織が東松学園へ入学したのは、早苗と戦うため。市民大会で一戦交え敗戦した相手・甲本を追って、憎き兄の敵がいるのを我慢してまで東松学園へとやって来たのでした。そこで果たしたかった目的は、再び早苗と戦い、その正体を見るということ。しかし早苗はそれを拒否。頑に真剣勝負することを避けていました。それが今回は、早苗からの勝負宣告。この展開をもってして、当初の香織の目的はやっと達成されたのです。
とはいえ当初と今では、香織の剣道観もだいぶ変化が見られています。先の「早苗と再び戦うこと」という目的は、付け加えるならば「戦って勝つ」というところにありました。それは、元々香織の剣道観として、「斬られたら(負けたら)終わり。もし斬られたとしたら、生きている限りまた斬りに行く。」というものがあり、勝たない限り香織はずっと早苗を斬りにかかるはずでした。けれども今回早苗から香織に突きつけられた条件は…

私(早苗)が勝ったら磯山さんは部に戻る
というものでした。そして結果はあの通り。「負けたら終わり」ではなく、そこにあったのは、「負けたら始まり」という、香織のかつての剣道観とは180°異なるもの。この早苗の救い方は、本当に熱くて一本筋が通っていて、そして物語的にもすごく美しかった。負けるって大事ですよね。山王の堂本監督も言ってましたしね、「負けたことがあるというのがいつか大きな財産になる」って(突然「スラムダンク」の話)。この勝負宣言をされたとき、「心臓が大きく跳ね上がった」とあるのですが、それは読者もまた同じ。この瞬間、ガツンと心に衝動が走ったのではないでしょうか。
そうそう、香織の剣道観が大きく変化を見せる過程で、彼女はこんなことを思っていました。
「もしも
西荻のように笑って剣道ができていたら」
その願いも、市民大会の決勝で叶うことになります。面の隙間からのぞく口角は微かに上がり、笑っていることがすごくわかりやすく。そしてそれ以降、香織は笑って剣道をするようになります。それまで勝ち負け・生き死にしかなかった香織の剣道に、楽しさと笑顔をもたらした早苗って、本当にすごいな、と。そしてその集大成が、表紙ですよ。香織とか「え、誰?」って程に笑顔ですよね(笑)ストーリーから表紙まで、何から何まで素晴らしかった!本当にオススメですので、是非ともチェックしてみてくださいね!
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