作品紹介はこちら→桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」
8巻レビュー→目黒の愚行とその裏にある弱さについて少々…《続刊レビュー》「悪魔とラブソング」8巻
9巻レビュー→脆性と熱情が同居する目黒のピアノ演奏:桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」9巻
10巻レビュー→目黒先輩じゃだめとは、これ如何に:桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」10巻
11巻レビュー→マリアからみた目黒の印象:桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」11巻
12巻レビュー→良いセックスとは具体的にどうすれば…:桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」12巻
桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」(13)
ありがとう
だいすき
■13巻発売、完結しました。
目黒がアメリカへ行って半年が過ぎようとしていた。残されたマリアは、みんなと一緒に音楽PV作りに励み、日々目黒のコメントを待つ。一方マリアの側でPVを録り続ける優介は、気持ちが揺れはじめ…。3年生となり進路を決める時。ラブソングは、みんなの悩みや想いを乗せて…それぞれが、それぞれの道を進み始める、感動の最終巻。
~それぞれに答えを出しての完結~
13巻完結です。「悪魔」ということでの13巻。予定通りの完結ということでしょうか。物語は目黒と離れた後、マリアを中心とした残された仲間たちの日々が中心として描かれていきます。各々に答えを出して、卒業へと向かっていくというのは、ある程度予想はできたものの、ここまでしっかりと描かれるとは思っていなかったので、ちょっとビックリでした。特に、完全な脇役だと思っていた中村さんの心情が描かれたことが。いつも強気で、なんだか高慢さすら感じる中村さんですが、実はコンプレックスの固まりで、劣等感を抱きつつマリアや優介と付き合っていたのですね。こうして彼女の内面が描かれたことで、より親しみやすいキャラとして認識されるように。悩みなんてそんなになくて、それでもって意外と友達思いな子なのかな…程度の認識だったので、こうしてマイナスな部分を知れたことは、大きかったです。この物語でメインで描かれるキャラは、総じて負の部分を抱えており、それを克服して生まれ変わるという過程を踏んでいるわけですが、中村さんもそうだったのですね。その他にも、今回はエロスの過去も明らかになって、同じようなパターンを辿ることに。この徹底っぷりが、なかなか気持ち良かったです。
~帰国後の目黒の変わりっぷりと、手をつないだこと~
さて、最終回ということで、当然目黒が再登場するわけですが、帰国後の彼はまるで別人のように頼れる男の子になっていましたね(笑)いや、特に何が変わったってわけでもないのですが、妙に落ち着いたというか、安定しているというか、達観したというか。リハビリという非常に苦しい状況に置かれているその環境が、逆に彼を強くしたのかもしれません。そんな彼の変化を見てとれたのが、マリアと再会した直後のこと…

あの時握れなかったマリアの手を、握る
リハビリ中であるとはいえ、危機的状況でもないので、あの時と全く同じシチュエーションではないですが、それでもこの瞬間が強調して描かれたということは、注目すべきポイントであるわけで。海ではなく、将来の事を考えて溺れそうになっているマリアを、しっかりと導き救いあげたとも言えるこのシーン、本当に素敵でした。12巻まではヘタレの極地とでも言えるような、頼りない男だったのですが、こうも変わるものですかねぇ。
~最後を締めたのは、神田優介でした~
さて、というわけで感動のラストを迎えるわけですが、最後を締めたのは意外や意外、マリアでも目黒でもなく、神田優介でした。確かにこの3人がメインキャラクターではあったものの、最後に結ばれたのはマリアと目黒であったわけで。そこで優介が出てくることに違和感を覚えた方もいるかもしれません。しかしこれ、最初から読んでみると至極当然の結果なんですよね。というのも1巻冒頭、物語はこんな言葉から始まります…

マリアのことを話すのはちょっと難しいんだ
それは俺がバカだからってわけじゃなくて(それもあるけど)
可愛マリアはなんていうかつまり
アクマなんだよな
そう、この語りをしているのは、他でもない優介なのです。そして最終話は、こんな言葉から始まります…
彼の語りで始まり、彼の語りで終わる。13巻の長い長い物語は、優介によって語られていたのでした。こうすることで、この物語はマリアと目黒二人だけの物語ではなく、第三者的視点(優介は語り部的な役割)から語られる、みんなのための物語へと昇華したと言っても過言ではありません。「たくさんの人に向けて歌いたい」と言ったマリアの願いを叶えるように、この「悪魔とラブソング」という歌は、「彼女が歌を届けるのを手伝いたい」と自らの役割を見出した優介によって語られる。うーん、実に美しい。優介はちょっと可哀想な気がしなくもないですが、きっと持ち前の明るさで幸せを掴んでくれることでしょう!
■購入する→Amazon
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8巻レビュー→目黒の愚行とその裏にある弱さについて少々…《続刊レビュー》「悪魔とラブソング」8巻
9巻レビュー→脆性と熱情が同居する目黒のピアノ演奏:桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」9巻
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11巻レビュー→マリアからみた目黒の印象:桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」11巻
12巻レビュー→良いセックスとは具体的にどうすれば…:桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」12巻

ありがとう
だいすき
■13巻発売、完結しました。
目黒がアメリカへ行って半年が過ぎようとしていた。残されたマリアは、みんなと一緒に音楽PV作りに励み、日々目黒のコメントを待つ。一方マリアの側でPVを録り続ける優介は、気持ちが揺れはじめ…。3年生となり進路を決める時。ラブソングは、みんなの悩みや想いを乗せて…それぞれが、それぞれの道を進み始める、感動の最終巻。
~それぞれに答えを出しての完結~
13巻完結です。「悪魔」ということでの13巻。予定通りの完結ということでしょうか。物語は目黒と離れた後、マリアを中心とした残された仲間たちの日々が中心として描かれていきます。各々に答えを出して、卒業へと向かっていくというのは、ある程度予想はできたものの、ここまでしっかりと描かれるとは思っていなかったので、ちょっとビックリでした。特に、完全な脇役だと思っていた中村さんの心情が描かれたことが。いつも強気で、なんだか高慢さすら感じる中村さんですが、実はコンプレックスの固まりで、劣等感を抱きつつマリアや優介と付き合っていたのですね。こうして彼女の内面が描かれたことで、より親しみやすいキャラとして認識されるように。悩みなんてそんなになくて、それでもって意外と友達思いな子なのかな…程度の認識だったので、こうしてマイナスな部分を知れたことは、大きかったです。この物語でメインで描かれるキャラは、総じて負の部分を抱えており、それを克服して生まれ変わるという過程を踏んでいるわけですが、中村さんもそうだったのですね。その他にも、今回はエロスの過去も明らかになって、同じようなパターンを辿ることに。この徹底っぷりが、なかなか気持ち良かったです。
~帰国後の目黒の変わりっぷりと、手をつないだこと~
さて、最終回ということで、当然目黒が再登場するわけですが、帰国後の彼はまるで別人のように頼れる男の子になっていましたね(笑)いや、特に何が変わったってわけでもないのですが、妙に落ち着いたというか、安定しているというか、達観したというか。リハビリという非常に苦しい状況に置かれているその環境が、逆に彼を強くしたのかもしれません。そんな彼の変化を見てとれたのが、マリアと再会した直後のこと…

あの時握れなかったマリアの手を、握る
リハビリ中であるとはいえ、危機的状況でもないので、あの時と全く同じシチュエーションではないですが、それでもこの瞬間が強調して描かれたということは、注目すべきポイントであるわけで。海ではなく、将来の事を考えて溺れそうになっているマリアを、しっかりと導き救いあげたとも言えるこのシーン、本当に素敵でした。12巻まではヘタレの極地とでも言えるような、頼りない男だったのですが、こうも変わるものですかねぇ。
~最後を締めたのは、神田優介でした~
さて、というわけで感動のラストを迎えるわけですが、最後を締めたのは意外や意外、マリアでも目黒でもなく、神田優介でした。確かにこの3人がメインキャラクターではあったものの、最後に結ばれたのはマリアと目黒であったわけで。そこで優介が出てくることに違和感を覚えた方もいるかもしれません。しかしこれ、最初から読んでみると至極当然の結果なんですよね。というのも1巻冒頭、物語はこんな言葉から始まります…

マリアのことを話すのはちょっと難しいんだ
それは俺がバカだからってわけじゃなくて(それもあるけど)
可愛マリアはなんていうかつまり
アクマなんだよな
そう、この語りをしているのは、他でもない優介なのです。そして最終話は、こんな言葉から始まります…
初めてマリアに会った時を思い出してた。
彼の語りで始まり、彼の語りで終わる。13巻の長い長い物語は、優介によって語られていたのでした。こうすることで、この物語はマリアと目黒二人だけの物語ではなく、第三者的視点(優介は語り部的な役割)から語られる、みんなのための物語へと昇華したと言っても過言ではありません。「たくさんの人に向けて歌いたい」と言ったマリアの願いを叶えるように、この「悪魔とラブソング」という歌は、「彼女が歌を届けるのを手伝いたい」と自らの役割を見出した優介によって語られる。うーん、実に美しい。優介はちょっと可哀想な気がしなくもないですが、きっと持ち前の明るさで幸せを掴んでくれることでしょう!
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