このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2011.05.31
1106025823.jpgなるしまゆり「ライトノベル」(1)


理解できない…さっぱり


■高校生でのデビュー以来、人気ライトノベル作家として執筆活動を続ける佐々暗龍。現在大学生の彼は、ある日自分のファンだという少年・ミカトに出会う。ミカトという名前は、佐々暗の小説に出てくる登場人物と同じだった。この出会いに、佐々暗は必要以上に気まずい想いをしていた。なぜなら、書き上げたばかりの作品の中で、佐々暗はミカトを殺してしまっていたから。そんな少年と出会った頃から、佐々暗の身の回りでおかしな事件が続発するようになる。そしてその内容は、まるで自分の小説の内容をなぞっているようで…

 なるしまゆり先生のARIA連載作になります。物語の主人公は、高校生にしてライトノベル作家としてデビューし、今は売れっ子作家として大学に通いながら執筆を続けている・佐々暗龍。締め切りに日々追われながらも、着々と執筆を重ねる彼の作家人生は、それなりに順調。しかしある頃を境に、それが一変します。事の始まりは、マンションでのミカトという少年との出会い。自分の作品の登場人物と同じ名前である彼は、佐々暗作品のファンだと言うのでした。しかし佐々暗は、書き上げたばかりの作品でミカトを殺してしまったばかり。気の毒に思った彼は、ミカトが殺される話から、内容を変更。その後あたりから、おかしな事件が頻発するように。それは、彼の描いた小説の内容をなぞるように、殺人事件や行方不明が起こるというものだったのです。。。


ライトノベル1-1
ある日突然送られてきた、犯人からのものと思しきメール。そこには自分の作品のキャラクターのコスプレをした女性の遺体が写っていた。


 「自分が書いた小説の通りに、殺人が起きたら…どう思う?」これが帯に踊る言葉です。ミカトという少年は謎に包まれており、小説を模倣しての事件が起きているという意外は、何も明らかになっていません。そのためこれが、ファンタジーを含んだミステリー作品なのか、それとも現実ベースのサスペンスなのかもわからないという、謎多き状態。なるしまゆり先生の作品は総じて説明不足でわかりにくいところがあるのですが、それが芸風というか作風だと思われ、ついて来れない人は振り落とされて結構という感じなのでしょう。
 
 個人的にも基本的に読者に易しくないつくりの作品は苦手としているのですが、この作品は色々な意味で興味深く、終始前のめりで読まざるを得ませんでした。というのも、物語の全容は明らかではないものの、物語の途中途中で挟まれる「物語の作者とファン」「作品への思い入れ」「非実在少年」「作品が現実世界へ与える影響」「作者とネット評」などについての考え方が、すごく興味深くて。基本的には作者視点での話。けれども決して一つに凝り固まった考え方のみを提示するのではなく、複数提示できるものは、する。その一歩引いたところからの語りが、妙に生々しく、そして説得力があるのです。
 
 先の帯の言葉も、「小説で描いたことが起きたら」というのが大事なのではなく、むしろメインとして据えられているのは、「どう思う?」の部分であるような気がしてなりません。中盤以降の大ネタとなるのは、フィクションが現実に与える影響について。凶悪犯罪が起きる度に、アニメやマンガの悪影響論を叫ぶ者がおり、そしてそれに反論する人がいるわけですが、そこでこんな一言が
 

ライトノベル1-2
でも先生
俺はスラムダンクを読んでバスケ部に入ったクチです
そして世の中にはプラスもあればマイナスもあると思いますよ


 なかなか考えさせられる言葉です。「○○の影響を受けた」と自己申告している場合とそうでない場合を一緒くたに考えてはいけないですし、また総論として影響のあるなしの二極で考えるのもおかしな話で、そもそも私はそういう難しい話は苦手なのですが、でも考えないわけにはいかないよね、と。色々な意味で一石を投じることになりそうな本作、気になる方は是非とも手に取ってみてください。


【男性へのガイド】
→男性主人公ということで、問題ないと思いますよ。腐臭もなし。少年にショタの匂いを感じるくらいでしょうか。
【感想まとめ】
→物語としてはどうなるかはわからないものの、別の意味で注目。とりあえずは追いかけてみたいなぁと思いました。


■作者他作品レビュー
なるしまゆり「鉄壱智」


作品DATA
■著者:なるしまゆり
■出版社:講談社
■レーベル:KCARIA
■掲載誌:ARIA(連載中)
■既刊1巻
■価格:562円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「ARIA」コメント (1)トラックバック(0)TOP▲
コメント

僕もスラムダンクの影響です!!
でも中学1年から卒業するまでに3センチしか背が伸びず。。。

憧れは憧れのままでした。
最終的にはスラムダンク関係なしにバスケ好きだったし。

バイオレンス系好きだけど、
暴力嫌いだし。。。

って事で気になるんで、
「ライトノベル」手にとって見ます。

From: カネシン * 2011/06/01 21:03 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。