
神さまは
髪の中から現れる
■髪のなかで神様を休ませて癒す神事「神々返し」
物心ついたときから小さな窓があるだけの部屋に幽閉されている少女・ましろは、髪の中に神様を封印している。小さなときから同じ姿、16歳には到底見えないその容姿。面会できるのは、幼なじみの男の子・はやてだけ。小さな窓と、本を通して思い描く外の世界は、ましろにとって憧れの対象。そんなある日、自らの髪に封印された神様と出会い…!?
「わたしに××しなさい!」(→レビュー)の遠山えま先生の連載作です。「×しな」の6巻と同時発売、こちらは1巻になります。遠山えま先生の作品では珍しい、ファンタジー作品となっています。物語の主人公は、3歳のときから16歳の現在まで、小さな格子窓が一つあるだけの部屋に幽閉されている少女・ましろ。この世界では、髪の中で神様を休ませる、「神々返し」という儀式が行われているのですが、ましろは髪の中に神様を封印している「神々返し」の当事者。その弊害か、見ためは小さな子供のときのまま。そんな彼女が外の世界を知ることができるのは、部屋にある数少ない本と、食事を運び髪を梳かしてくれる幼なじみの男の子・はやてだけ。そんなある日、髪に封印されていた神様が、ましろの髪から飛び出してきて…というお話。

世間知らずというレベルではない。生きて行けないレベル。だからこそ、目に映る外の世界は希望のかたまり。そしてそんな彼女をサポートする、幼なじみの男の子。面倒見の良い幼なじみってのは、遠山えま先生の作品では鉄板のキャラ配置ですよね。
遠山えま先生というと、日常ベースの萌え風味な作品というイメージがあったので、こういったお話はちょっと意外。髪から封印されていた神様が飛び出してきたことをきっかけに、幽閉されている環境から脱出。追っ手から逃れつつ、初めて見る世界を知っていくという物語になります。幽閉されていたのは、「神々返し」の儀式とは全くの別物。分家の出身であるヒロインが、本家の娘が儀式をしている中に飛び込んでしまい、彼女の髪に神様が宿ってしまったというのが、事の始まりであり、幽閉はいわばイジメ。そんな所から、髪から飛び出してきた神様、そして幼なじみの男の子(彼もちょっとした能力の持ち主)と一緒に逃げ出すのですが、当然本家の人間は追っ手を送り込むわけで、物語はファンタジーらしく、バトル要素も多く含んだものになっています。やっぱりなかよしのファンタジーは、バトルがあってこそですね!(←未だに「セーラームーン」「魔法戦士レイアース」のイメージを持っている)
普段は表紙のような、少女っていうか幼女のような容姿をしているヒロイン。世間知らずどころか、ずっと幽閉されていたということから、家での生活知識すらないような子で、16歳ではあるものの、意外と見ためとのギャップはないです。そんな彼女が、とある瞬間のみ年齢通りの容姿になるときがあるのですが、そちらがやたらとセクシーというか、コスチュームがちょっとこう「え?」って感じで、むしろこっちが違和感バリバリだったり。当然のことながら、恋愛以前の感情すら知らないような子で、イケメンな相手候補は複数いるものの、そういった展開になるのはまだまだ先になりそうです。展開は慌ただしいものの、読者層を考えると、これくらい忙しない話の方が好まれるのかな、という気がします。ちょっと気になるのは、これからどこを落としどころとするのか、今のところ全く見えていないというところぐらいでしょうか。それ以外は概ね遠山先生っぽさ溢れる作品で、安定の楽しさ。キャラ配置は鉄板です。作者さんのファンタジー方面での引き出しを楽しめるということでも、遠山えま先生のファンはチェックしておいて損はないのではないでしょうか。
【男性へのガイド】
→遠山えま先生ですしね、もうね。とはいえこれはより少女漫画向けに味付けされてある印象で、他作品に比べると、男性向けの感は薄れるかもしれません。
【感想まとめ】
→意外とバトルが充実の、ファンタジー作品。こういうのも描けるのかと、ちょっと驚きながら読むことができました。
■作者他作品レビュー
遠山えま「ココにいるよ!」
作品DATA
■著者:遠山えま
■出版社:講談社
■レーベル:KC なかよし
■掲載誌:なかよし(連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税
■購入する→Amazon