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お前の運転する車でな
■時は大正。とある女学校に、少女達の憧れと嫉妬を一身に受ける乙女たちがいた。彼女の名は芳村さやか。華族出身ではなく、事業によって一財産を築いた、新興の成金貴族の娘であった。そのため貴族内での風当たりは強いものの、いつも気丈に前向きに振る舞い、最優秀学生として名を馳せている。そんな彼女には、幼い頃から共に育った鳴滝という従者がいた。お抱えの運転手として、いつも側に付き従っているのだが…!?
石原ケイコ先生の初単行本となります。大正時代、貴族の娘と運転手の身分違いの2人を描いた物語です。主人公は、とある女学校で少女たちの憧れと嫉妬を一身に受ける少女・芳村さやか。美しさ、快活な性格、礼儀ただしさ、勤勉さ…どこをとっても完璧で、この春には最優秀学生のリボンも貰っています。しかし華族出身ではなく、事業によってひと財産を築いた成金貴族の娘であるため、嫉妬の風も同時に強く吹いていたのでした。そんな彼女は、幼い頃に事故で足を痛めてから、歩行が不得手になってしまい、学校には車で送り迎えをしてもらい、通っています。その運転手が、幼い頃から一緒に育った使用人の鳴滝。元々さやかと仲が良いこと、そして何より見ためも良いことから、嫉妬をした者からあらぬ噂が立つように…というお話。

恋愛の匂いは薄め。というのも、お嬢様がとことん鈍いというか、相手を信用しきっているいるために、そういうことがどうしても起こらないのです。
お嬢様と運転手の、禁断の恋…かと思いきや、作中で主に描かれるのは、恋や友情というありがちな感情を越えた、主人と従者の深い深い絆です。表紙のその姿からも伝わってくるとは思いますが、ヒロインのさやかは非常に活発で、ちょっと向こう見ずな性格。正義感から危ない行動に出ることもあれば、興味を持ってそのまま突っ走ってしまうこともしばしば…そのたびに危ない目にあったり、よからぬトラブルを招いてしまったりします。そんな彼女を陰から、そして時に表に出て助けるのが、鳴滝。トラブルに巻き込まれ、果ては周囲の誤解から2人の関係の危機にすら陥ることがあるのですが、それでもなお一緒にいることを選び歩んでいく2人の強い繋がりを、お楽しみください。
四話完結とコンパクトに纏まったお話となっているのですが、全体を俯瞰するとヒロインの成長物語としてしっかりと機能しており、これで初単行本ですか!とちょっと驚くほど。恋愛要素が薄いところ、またヒロイン自身がちょっと頑固というか、聞き分けの良くない子というところから、時折イライラが重なることがあるのですが、最終的にはストンと落ち着くというか、非常に腑に落ちるラストとなっています。あくまで絆を描くので、大正ロマンスを期待すると若干肩すかしを食らう形になるかもしれませんが、そこを弁えていれば大丈夫なはず。
【男性へのガイド】
→暴走しがちなヒロインを、運転手が離れることなくしっかりサポートしてくれるというシチュエーションは、女性こそが好む内容かと。
【感想まとめ】
→意外とあっさりしていたので、最初は違和感を感じていましたが、成長記として見た時腑に落ち、その作りのしっかり具合に驚くという。絵もキレイです。
作品DATA
■著者:石原ケイコ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLADX
■全1巻
■価格:400円+税
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