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Tag [オススメ] 2011.07.03
■毎年上半期オススメ新作をご紹介しているのですが、今年は6作品に絞りました。というか、10作品にしたらきっと数が足りなくなるぞ…と。単純に読む量・書く量が減ったというのもありそうですが、ここ最近はビビッと来る新作がガタっと少なくなったような気もします。感覚が鈍ってるのか、それとも新作自体が減ってるのか、それはひとまず置いておいて、こちらが2011年上半期のオススメ新作でございます!(順番には特に意味はありません)


山川あいじ「やじろべえ」
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…今まではどちらかというと原作付きで、というイメージの強かった山川あいじ先生のオリジナル新作でございます。血の繋がりのない父と二人で生活をしている、一人の少女の成長と絆を描いた温かい物語。家族ものを軸に据えるのか、これから少女漫画らしく恋愛に倒していくのか、今はまだどちらの可能性も残しているのですが、そういった様々な感情がアンバランスにミックスされているところが逆に味わい深いというか、新鮮。話題になるかはわかりませんが、抑えておいて欲しい一作です。



やまがたさとみ「12」
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…こんなあぶない作品を、まさかフィーヤンで読めるとは思ってなかったです。未発達なカラダと、成熟したココロを持て余す少女を描いた短編集。少女のカラダとココロということで、当然エロティックな描写もございます。けれどもやたらとアブナイ印象が先行するのは、各話のヒロインがどこまでも自分自身の性的な部分やその存在に自覚的であるからでしょうか。そしてそれに引き寄せられるようにして寄ってくる男どもがまたアブナイ。2011年で、読んでいてビビった新作は、たぶんこちらで揺るぎないです。そしてね、本当にいいお話なんですよ、これが。



咲坂伊緒「アオハライド」
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「ストロボ・エッジ」の咲坂先生の新連載。前作がものすごく話題になっただけに、プレッシャーのかかる中でのスタートだったと思われるのですが、安易に前作踏襲のようなお話にはせず、しっかりと違う味付けをしてきました。1巻読んだ時点ではちょっとピンとこない所もあったのですが、実は前作「ストロボ・エッジ」も1巻時点での印象はぼやけ気味。個人的にはスロースターターのイメージで、そういった上積みも期待しての選出とさせて頂きました。



松本ひで吉「さばげぶっ!」
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…サバイバルゲームと少女漫画というわけのわからない組み合わせで、しかもそれが低年齢向けのなかよしだってんだから恐ろしい世の中になったものだ、しかし侮るなかれ、これものすごく面白くて、そしてつくりも丁寧な良作コメディなんです。元々少年誌で連載を持っていて、賞も獲っていらっしゃる、実績十分の先生の手腕にかかればこの通り。こう出オチっぽい印象が強かったりネタありきの作品って、高確率で後半垂れるので、オススメするのを躊躇してしまったりするのですが、これは大丈夫だと思います。ひとつ気になるのは、まだサバイバルゲームやってないところが…なんて、それでも十分成立してるので、全く問題ないのですが。



チカ「これは恋のはなし」
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…絶対に転けると思ったARIAが生んだ、強力作。これは完全に予想外でした。31歳の男と10歳の女の子の間に芽生える“恋”(?)を描いたお話。もちろん正面から「恋」という形で提示するわけではなく、寄添わなくてはならない関係性をベースに、お互いの絆を築いていくというアプローチで。これが本当に恋愛作品として転がっていくかはさておき、とにかく愛おしい31歳のツンデレ男と、健気すぎて可愛い10歳の少女のどちらも素敵すぎるのです。今年の新作で一番プッシュしたかったのが、こちらでしょうか。



中村明日美子「鉄道少女漫画」
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…短編からはこちらを。中村明日美子先生の、楽園掲載作を中心とした、鉄道にまつわる物語集です。幸せに溢れるお話もあれば、青春の甘酸っぱさに溢れる切ないお話もあり。どれもブラックさはなし、白美子全開な読み心地の非常に良いお話たちになっています。個人的に好きだったのは、「彼の住むイリューダ」でしょうか。海外へと発つ高校生の女の子が、好きだった男の子の下駄箱に手紙を忍ばせ、一日中彼のことを駅で待ち続けるというお話なのですが、とにかく純粋で青春で、美しかった。




 というわけで、振り返れば集英社3作、講談社2作、白泉社1作という形になりました。白泉社は花とゆめCOMICSがなかったですね。もちろん面白い作品はたくさんあったのですが、印象に残るのはどちらかというと新作よりも既に連載している作品の新刊が多かったです。集英社が多くなってしまうのは、私が「りぼん」→「別マ」という形で少女漫画に触れてきたからだと思います。ちなみに月間オススメでは、「やじろべえ」より「シトラス」を上にしているのですが、未だに印象に残っているのが「やじろべえ」なので、今回はこちらをピックアップしました。この中で話題になるのは、おそらく講談社の異色2作だと思います。どれもそれぞれ違った形で面白い作品ですので、興味のある方はチェックしてみてください。

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。