
僕と一緒に生きようよ
今度こそ
■19世紀末、吸血鬼のしわざと噂される、通り魔事件が相次ぐロンドン。そんな中、小説を書きながら細々と暮らしているアランは、とある夜、通り魔に襲われた少女・マリーに出会う。家が無いからと、アランのアパートに押し掛けるマリー。その日から、アランは奇妙な夢を見るようになる。実はその正体は吸血鬼であるマリー、彼女とアランを結びつける深い因縁とは…?
裏表紙のっけからネタバレはげしいっすな!花とゆめCOMICSなんかは、第一話の半分くらいまでのネタバレしか許容していないようなものすらあるというのに、こちらはもう半分くらい言っちゃってんじゃね?という(さすがに言い過ぎ、こちらも1話目の途中までですよ)。というわけで、よくわからない導入になってしまいましたが、気を取り直してご紹介をば。以前オススメ作品としてご紹介した、「青春トリッカーズ」(→レビュー)の水野美波先生が描く、19世紀のロンドンを舞台にしたヴァンパイアロマンスでございます。
元々ヴァンパイアものってたくさんあるのですが、ここ1か月くらいで複数冊読んでいる気が…なんて2記事前もヴァンパイアコメディだったり、いつになっても鉄板ですな。表紙を見た感じ、この男がヴァンパイアかという印象を持たれるかもしれませんが、彼はごくごく普通の青年。むしろ過去に別れた女性にいまだ未練を重ね続ける、ちょっと弱い男性だったりします。そんな彼がとある夜出会ったのが、やたらと積極的で元気な女の子・マリー。初対面にも関わらず、怒濤の押しでアランの家に転がり込んだマリー。なし崩し的に同居を始めることになるのですが、その頃からアランは不可解な夢を見るようになり…やがてその謎が明らかになっていきます。

初対面にしてこの「押し」である。
水野先生って、青春トリッカーズの印象が強すぎるのか、ファンタジーロマンスを描くイメージがあまりなかったのですよね。それがこの作品ですから、すごいです。けれども終始シリアスに…というわけではなく、しっかりと笑わせる要素を落とし込み、小気味良いテンポは保ったままに物語は展開していくことになります。何よりこの作品を単純なファンタジー少女漫画とは異ならせている(水野先生のイメージに合う感じ)のは、ヒロインのキャラクターがすごいということが挙げられるでしょう。
一言で表すのであれば、ヤンデレ。主人公が男とはいえ、そのお相手役は感情移入のしやすい子であるに越したことはありません。しかしながら、この作品のヒロイン・マリーはそんなのお構いなし。もちろんそうさせる理由はしっかりと描かれるのですが、それでもふと見せる笑顔が怖い怖い。描き分けの非常に上手い先生ですから、どこか感情がないというか生気のない感じを受けるこの表情とか、絶対わざとだと思います…

この表情、なんだかめちゃくちゃ怖くないですか?なんかこう、全体からヤンデレの匂いが立つヒロインなのですよ。
中盤から後半にかけて、絶対にハッピーエンドはないな、と思わせておきながらの最後の最後での回収はお見事。短い話数の中で、しっかりとドラマを見せてくれました。後味の悪さもなし、逆にすっきり整い過ぎるところに違和感を感じる方もいるかもしれませんが、ファンタジーなんだからそういうのも良いですよね。同時収録の読切りは、現実ベースの学園物語。どちらかというと自分のイメージする水野先生の作品はこちら。男の子が主人公で、安定した面白さのある良作コメディでございました。
【男性へのガイド】
→男性の描き方とか、絵柄とか、こうオタク女性向けの感は強いのですが、オタクという部分で繫がれるのであればきっと大丈夫かと。私は好きでございます。
【感想まとめ】
→こういうお話も描けるのですね。安定の絵柄に、クセがなく非常に読みやすい作り。個人手にはもうちょっとコメディ要素あっても良いかと思ったのですが、それは今回敢えて排除していた部分もあったでしょうし、言うだけ野暮なのだと思います。そろそろ長期連載読んで見たいですねー
作品DATA
■著者:水野美波
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:マーガレット(連載中)
■全1巻
■価格:400円+税
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