市川ショウ「初恋の悪戯」
私の気持ちは変わらないって!■等身大の恋を描いた物語、3編を収録。それでは表題作をご紹介。
「はじめての恋」それは私にとっての宝物。十年経ったら、もう一度キミと出会ったこの場所で、再会すると約束した。子供にとっては、気の遠くなるほどに長い時間、キミとの再会を願っていた。そして訪れた運命の日、大好きな「青くん」の姿がそこにあることを願って。私の「初恋」は始まりますか?キミに今日会えますか?今、キミとの約束の場所に向かいます。
市川ショウ先生の新作でございます。ここ最近はめっきり少コミの新刊を買わなくなっているのですが、市川先生の作品は毎度毎度表紙の色合いやデザインが好きで、ついつい手に取ってしまいます。今回も、淡いグリーンが映える、優しい風合いの表紙で、非常に好みだったり。派手な色使いの作品が多い中、逆に落ち着かせることで目立つってことも、多分にあると思うんですよね。そして物語の内容もまた、恋愛をスタンダードに描いた、実に少女漫画的な内容となっていました。
表題作は読切りなのですが、その他に読切り1編と、3話1シリーズのお話が収録されています。普通であれば、3話セットの方を表題作に持ってくるところなのですが、表題作の方が掲載時に人気があったのでしょうか?表題作もロマンチックでなかなか楽しめたのですが、個人的にはキャラがどちらも非常に立っていた、同時収録の読切り「smile!」と、「HOBBY☆HOBBY」が印象的でした。今回はこの2作について、ちょっと書いてみたいと思います。

両親が経営する保育園のお手伝いをする女子高生・椎名小雪がヒロインの「smile」。無表情ヒロインという設定なのですが、少コミらしからぬ、この簡素な描きっぷり。表情もさることながら、腕とかどんだけ脱力してるんだっていう。けれどもむしろそれが、愛嬌すら感じさせるんですよね。
親もそうであるように、小雪も非常に子供好きであるのですが、その無表情さが祟って、子供が寄ってくるどころか、逃げ回りしまいには泣き出す始末。どうしたら子供と仲良くなれるのか…と悩んでいた所、彼女の前に現れたのは、子供にもの凄く好かれるイケメン。その好かれっぷりに静かに驚愕した小雪は、無表情に子供に好かれる方法を尋ねるのですが…というお話。何が良いって、この小雪の無表情っぷりがなんとも素敵。
無表情であるというだけで、ヒロインの作画がややシンプルになるのですが、少コミライクに描込み丁寧美麗な相手役の男の子との対比が、また面白いのですよね。もうちょっとこのデフォルメ絵とか使って欲しいのですが、そこは少コミという掲載誌の性格的に許さないのでしょうか。非常に親しみやすい作画で、驚きました。あ、それと保育園ということで子供達も描かれるのですが、こちらもとても可愛く描かれていて、親しみやすかったです。こう、4コマとかで見ても違和感無いような。
3話1シリーズの「HOBBY☆HOBBY」は、彼氏が趣味にのめりこみすぎて、自分がおざなりになってんじゃね?と感じる女の子のお話。その趣味がきっかけとなり、思わぬ恋のバトルが始まるわけですが、女の子そっちのけで趣味で勝負付けようとする、男の身勝手さが非常に良く描かれているなぁ、と。もちろん趣味に打ち込み楽しそうにしている表情というのは、すごく素敵なわけですが、それだけじゃお腹が空くわ、と。そしてそんなバカな男どもを叱責したのは、ヒロインではなくお父さんというね。

お父さんがマジカッコいい「HOBBY☆HOBBY」。趣味はラジコンです。
もうこのお話の何が良かったって、お父さんがカッコ良すぎて惚れてしまいそうになるという(笑)全力で楽しめる趣味があり、そして娘の気持ちもしっかりと思いやれるなんて、こんな素敵なお父さんいません!最後もバッチリ持ってっちゃって、個人的にこれは、恋愛漫画というよりは、お父さんのカッコ良さを堪能する作品でした(笑)
【男性へのガイド】→「HOBBY☆HOBBY」をはじめとして、男の子って身勝手なんだなぁと、少々身につまされるところがあるかも(笑)でもそういうところを楽しめば、面白く読めるのではないかなぁ、と。
【感想まとめ】→なんだか違うベクトルで楽しんでしまった感があるので、全うな評価というかコメント残せそうにないのですけど。とりあえず、自分はすごく面白かったです。
■作者他作品レビュー
市川ショウ「空色恋色」作品DATA■著者:市川ショウ
■出版社:小学館
■レーベル:Sho-Comiフラワーコミックス
■掲載誌:sho-comi
■全1巻
■価格:400円+税
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