
落ちる…………!
■東京の学校でハブられ、3人目の継父とは上手く行かず、逃げるようにして、実父のもとへと引っ越した糸真。父が暮らすのは、東京から遠く離れた北の土地・札幌。見知らぬ場所で、わくわくと不安を抱えながらの転校初日、出会ったのは和央と弦の2人のクラスメイト。特別な存在として見られている2人に近づくとハブられるみたいだけど、恋に落ちてしまったら仕方ありません…!
昨年の完結作の第1位に据えた「潔く柔く」(→レビュー)のいくえみ綾先生のcookieでの新作です。なんだか表紙が非常に愉快なことになっていますが、作品の乗りもこんな感じです。というわけで、「プリンシパル」のご紹介です。物語は、高校生のヒロイン・糸真が北海道に越してくるところからスタート。3人目の継父と上手く行かず、さらに学校でハブにされたことがきっかけで、札幌の実父の元へ引っ越すことになった彼女。新たな家族生活、新たな学校生活に不安と期待を抱えていた彼女は、その先でとっても面白い二人組に出会います。病弱で学校を休みがちな少年・和央と、そんな彼を守るように行動する、ぶっきらぼうな物言いの弦。和央の飼っているわんこをきっかけに、この二人と仲良くなる糸真でしたが、この二人は学校で特別視されている存在。みんなのもの認定されているこの二人に近づくと、学校でハブにされるみたいなのですが、頼れる存在はこの二人しかおらず、なんだか気持ちは加速していくばかりで…というストーリー。

安定のいくえみ男子。そして考えながらも、感じる方が先行する直感系女子。今回も面白くなりそうです。
いくえみ綾作品によく登場する印象の、ちょっと影のある、ちょっと気が利かないようで、気が利く(というか優しい)男の子二人。はい、これだけでもうある意味鉄板です。ヒロインは、人間関係で何かと苦労している女の子。恋多き母親もそうだし、クラスメイトとの関わりもそうだし。リセット願望を持って降り立った北海道の地で、恋の予感…と思ったら、その二人はある意味触れてはいけない存在でした。。。という流れは、結構見られる展開ではあるのかもしれません。登場してくる人物がそれぞれに後ろめたさのようなものを抱えていて、そこら辺をどう克服し、人間関係をこれから築いていくのかというところが、物語の主眼として置かれるところだと思われます。特に男の子二人に関しては色々とありそうで、これから物語にどのように影を落としてくるのか、とてもとても気になりますね。
恋とはいえど、いい男二人の間で、どちらかにターゲットを絞って具体的に動く…なんてことはなく、ただ感じるままに動いているという状態のヒロイン。相手の先決めではなく、そういった短絡的な行動を起因にして、その人のいい所も悪いところも知り、その上で改めて自分の身の振りを考えるということになるのかな。若いというか幼いがゆえの痛さというものを、隠すことなく描く先生なので、読んでてちょっと辛いときもあるのですが、それでもそこからの巻き返しが心地よいので、やっぱり好きです、うん。
表紙が愉快という話をしましたが、物語中でもこの演出なんだろうというような所が。例えば物語の締めは、一度たりとも姿が出てこない能天気な母親の手紙というのがデフォ。最後の最後でなんがか気が抜けるなぁ、なんて思いつつも、この人もまたヒロインに影響を与え、与えられる人物であるわけで。しかも回を重ねる毎にちょっとずつ内容が変化しているのが面白い所です。違和感を感じさせる所が、やがて物語に繋がってしっかりと合わさる…なんてことがあるかはわかりませんが、ひとつこれから読んでいく中で注目しておきたい部分ではあります。いくえみ綾先生の作品って、こう1巻だけで決め打って語れることって個人的にあまりない印象で、巻を重ねて振り返ってやっと、みたいな。多いに語るのは、2巻3巻と出てきてからにしましょうか。たぶん物語的にも、今はまだ舞台を整えただけという感じですし。
【男性へのガイド】
→いくえみ綾先生が好きな人はもう読んでいらっしゃるでしょう、と勝手な言葉を。未読の方は、他の作品からでも良いのではないかなぁとも思います。このノリは、確かに良いのですが、できればシリアス多めの作品のが。
【感想まとめ】
→正直なところまだ全体を掴みあぐねているところがあるので、どうこう言える感じでは。もちろん面白いんですけど、これからどうなるのか、とかは、ちょっとわからず。
■作者他作品レビュー
いくえみ綾「いとしのニーナ」
いくえみ綾「そろえてちょうだい?」
摩訶不思議な少年少女のワンダフルデイズ:いくえみ綾「爛爛」
作品DATA
■著者:いくえみ綾
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックスcookie
■掲載誌:cookie(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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