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Tag [新作レビュー] 2011.07.24
1106027451.jpg如月弘鷹「声優一年生」第1巻


なんとなく
こいつとは
一緒に走っていけそうな気がしたから



■投稿動画に吹き込んだ“声”が元で、声優にスカウトされたのは、神絵師志望のオタク高校生・伊勢一海。声優になるなんて、まったくの予定外。けれども憧れの女性声優に会えるというその一言で快諾。声優デビューすることに。だが、元アイドル子役の同い年の共演者・黒江劉生に書くの違いを見せつけられ、さらに、上手くできたと思った演技に「人まねだ」とNGを出され…!?キャラの心を現実へ伝えるのが、声優の役目…養成所・アフレコ・イベント…等身大のガムシャラ声優ストーリー!!

 角川書店からの新刊は、いかにも“らしい”、声優ものとなっております。声優を描いたお話はここ最近多い気がするのですが、こちらの作品はデビューまでの道筋が特異。主人公である伊勢くんは、声優志望ではなく絵師として成功したいと願っている動画投稿者の高校生です。そんな彼が自分でアテレコをした動画を、とある業界関係者が見かけ、声優としてスカウトされ、いきなりデビューという過程を踏む事になります。ということで、中心として描かれるのは、デビュー後の苦悩。トントン拍子でデビューすることになるのですが、同い年の子役上がりのパートナーに実力の差を見せつけられ、また原作者からは演技へのダメ出しが。早速幾多の壁にぶちあたる主人公でしたが、持ち前の前向きさと情熱で、作品と声優という仕事に向き合い、前へと進んでいく…というお話になっています。


声優1年生
二人とも声優は初経験。わからない事だらけの中、自分たちなりの答えを出し、声優という仕事に向き合っていく。


 こんな簡単にデビューできるかよ、という突っ込みはありそうですが、そこはご愛嬌。お仕事マンガという側面は薄く、何かに真剣に向き合い、壁にぶつかりながらも努力と情熱と仲間の支えによって前に進んでいくという、少年達の成長譚となっています。“少年達”ということで、メインで描かれるのは伊勢一海一人ではありません。主人公と同じタイミングで声優デビューと相成った、元アイドル子役の黒江劉生が、ライバル&戦友という立ち位置で、主人公とともに歩んでいきます。オタクということで、作品への情熱は人一倍あるけれどど素人という主人公に対して、劉生は演技力はあるけれど作品や声優への情熱はやや欠けるという欠点があり、お互いの足りない部分を切磋琢磨し合いながら埋めていくという関係が築かれます。一見いやみなライバルな感じなのですが、早々に弱みを見せて、異様に萌えるキャラになるあたり、美味しいです。
 
 ベースとなるのは、メイン二人の漫才でしょうか。勢いよくボケる主人公に対して、冷静に突っ込む劉生は相性抜群。今のところ、というかこれから先も多分恋愛方面に転がっていく様子はないところからも、この二人の関係にによによするという感じなのではないでしょうか。ザ・脇役の域を越える女性キャラが登場しないのが、男性的視点では残念なところではあるのですが、余計なものは入れず、純度たっぷりに1対1の関係を堪能するという意味では、この人物配置がベストなのでしょう。個人的には過去の実績と現状の差に苦悩する、劉生くんの方が俄然好みですかね。恵まれてる環境にいるはずなのにそう感じず、必要以上に自分を追い込んでしまうその姿が、とても素敵です。


【男性へのガイド】
→これはキレイに女性向けの造りになってると個人的には感じました。勢いに任せた熱い成長譚がお好きな方は良いんじゃないでしょうか。
【感想まとめ】
→この二人に萌えられるかが鍵となるのかな、と。見たまんまのキャラクターですので、ビビっと来た方は是非ともチェックを。


作品DATA
■著者:如月弘鷹
■出版社:角川書店
■レーベル:角川ASUKAコミックス
■掲載誌:ASUKA(連載中)
■既刊1巻
■価格:560円+税


■購入する→Amazon

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