
この街を守りたい
■遠い昔、季節ごとの植物の力で災いを祓い崇め奉られてきた子供たちがいた。その名前は「節句の子」と言う。だがしかし、彼らはある術者に呪いをかけられ、不老不死の身体とされてしまう。時は流れ現在、今なお生き続ける彼らは、一人の少女と出会う。“死を求める少年”と“死を恐れる少女”が出会う時、運命は動きはじめる。運命に抗う少年と少女の、ロスト・ガーデン・ストーリー開幕。
なんとも耽美な雰囲気漂う美麗な表紙が目につく「花檻草子」のご紹介です。第1回シルフ乙女コミック賞入選者である、長神先生のデビュー単行本になります。節句と呪いを紐解く、学園ファンタジー。主人公となるのは、表紙の子…ではなく、ごくごく普通の女子高生・双葉千晴。幼くして両親を亡くした彼女は、現在シスコンを大爆発させている兄(ものすごくイケメンで秀才かつ運動神経抜群)と一緒に暮らしています。そんな彼女の前にある日表れたのが、兄弟という新任教師と、転校生の初見兄弟。初日から、なんだかやたらと関わることが多いと思っていたら、その夜には自分の家に尋ねてきたりと、なんだかちょっと怪しげ。しかも何やら真剣な眼差しで「俺を殺せ」なんて言ってくるのです。そんな彼の謎の行動を紐解くヒントとなるのが、ここ最近頻発している傷害事件。千晴の目の前でまさにその事件が起きようとしていた刹那、転校生の初見寿弥の目の色と服装が一変、人を襲おうとしていた人物を倒してしまう…という所から始まるストーリーでございます。

基本は学園コメディです。特殊な力を持っている他、結構な生きる術を持っている子も。
この導入だけじゃ全然わからんって感じでしょうが、正直私もあんまりわかってないです(おい)。できるだけ簡単に、この物語の背景を説明してみましょう。時は数百年前、“箕門”と呼ばれる宗教団体があり、“花織”と呼ばれる術者を使って人々を導いていました。やがて彼らは野心を持ちはじめ、人の負の感情を増幅させる“胤”と呼ばれる装置を作り出し、それを自ら鎮圧することによって、名声を得ていったのでした。しかし胤自身が力を強めてしまい、自らの手に負えない状態になってしまったのです。そんな中、箕門が目をつけたのが、植物の能力を持つ“節句”と呼ばれる子供たちでした。彼らの魂には強い浄化能力が備わっており、箕門は節句の子の魂を抜き出し胤に吸着させて暴走を抑えるのですが、やがてそれも限界に。そしてついに花織は、節句の子達に不老不死の呪いをかけ、この世につなぎ止めてしまうのでした。そうしてこの世に放たれた、節句の子が、転校生である初見寿弥。そして忌まわしき花識の生まれ変わりであるのが、ヒロインの千晴だったのでした。
転生して、今はどういう関係になっているかというと、花織は忌まわしき存在であるのだけれど、その呪いを解けるのは花織のみであり、また胤を浄化することができるのもまた、花織の生まれ変わりである千晴しかいないのです。ここ最近頻発している傷害事件は、その胤が原因。それらを全て根絶やしにするため、呪われた節句の子(季節ごとにおり、6人くらいいます)は千晴と協力し、胤と向き合っていくというのが本筋となります。学園バトルファンタジー的な様相が強いでしょうか。というわけで、序盤でその出自が殆ど明らかになる登場人物達なのですが、唯一怪しい、千晴の兄。彼が今後の物語の鍵を握ってきそうですが、果たして。
学園コメディのノリを取り入れつつも、非常に複雑な背景のある歴史ファンタジーをベースとしているので、取っ付きは若干しづらいところがあるかもしれません。デビュー作からこれってのはなかなかチャレンジングだと思うのですが、振り落とされ率も高そうで、本誌での人気は一体どの辺なのでしょうか。しかしながらストーリーに反して、登場するキャラクターは皆々愛嬌たっぷりで、良い味出してます。個人的にはメガネ先生と、ワガママ双子がお気に入り。不老不死ということで、見ためだけではなく、中身もそのまんまって感じなのでしょうか。長生きしている割には、子供らしさたっぷりで、場を非常に賑やかにしてくれるのが良いですね(あ、双子の話です)。先生については、安定のメガネということで。冷静な指南役かと思ったら、別にそうでもなくて、結構メンタル弱そうなところに、涎が出ます。
【男性へのガイド】
→キャラクターとかは特に違和感なく読めると思うのですが、このストーリーはどうなのでしょ。男の子視点であれば、また違ったのかもしれませんが。
【感想まとめ】
→複雑な割には、そこまで濃いというか、重苦しい方向にはいかないような気がしていて、それが良いのか悪いのか。キャラ萌え的には大満足。やがて彼らの過去回想も見られるのでしょうが、それが楽しみですかね。絵は表紙見て頂いてもわかるでしょうが、とってもキレイです。
作品DATA
■著者:長神
■出版社:アスキーメディアワークス
■レーベル:シルフ
■掲載誌:シルフ(連載中)
■既刊1巻
■価格:580円+税
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