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「ユビキリ」/
「蝶々雲」/
「月と湖」
芦原妃名子「Piece」(6)
この感情の行きつく先を
必ず
自分で看取るから■6巻発売です。
「成海は人を殺しかけてる」
矢内から、成海と坂田コウジの関係、そしてかつて二人が引き起した衝撃の事件について知らされた水帆。それでも成海のことを嫌いにはなれず、自分の想いを最後まで見届けようと決心する。東京に戻った水帆は、気まずくなっていた礼美と冷静に話をするため、彼女の大学を訪ねるが…!?
~お待たせしました…~ 先月6巻発売されていました。ということで、「Piece」のレビューです。最初に言うと、
「Piece」の感想いつも難産すぎるよー!!!! なら書かなきゃいいじゃんという話なのですが、書かないと読んでいる時の自分の考えを整理できず、また一度書かないとこれから先もずっと書かないはずなので、やっぱり書いておいた方が良いかな、と。あとメールやコメントにて頂くレビューのリクエストで、一番多いのがこの作品なのですよ。特定の作品のレビューを楽しみにして頂けているというのは、非常にありがたいことですので、やっぱり書きたいのです。ちょっとプレッシャーではありますけどね(笑)というわけで、リクエストくださったみなさん、ありがとうござました。ご期待に沿えるかはわかりませんが、どうぞ。。。
~礼美回~ 前回思わぬ形で物語に食い込んできた礼美でしたが、6巻はまさに礼美回。その表紙のみならず、本編でも最も掘り下げて描かれました。正直お調子者のちょい役だと思っていたので、ここまで描かれたのはかなり意外。すみませんでした、礼美さん。誰一人として、余る者などいない、全てが物語を形成するピースというわけなのですね。改めて物語の後ろに渦巻くものの深さに、ワクワクと怖さが浮かんできます。
~こんな形でつながるのね~ 礼美といえば、前回登場時に回想として流れたあのシーン。回想に登場している人物、そして4巻巻末での坂田コウジの発言から、なんとなく「成海が礼美を紹介し、行きずりで…」という流れを想像、しかしながらあのお弁当は…?という想像で落ち着いていたのですが、その考えはのっけから崩れることになります。出会いは成海を介してではなく、偶然に。

お酒を飲んでしまい、気持ち悪くなったところを介抱されて…
あれ、坂田コウジのイメージが、想像していた人物像と全く違う…。話を追えば追うほどに、積み重なるイメージは
「面倒見の良いお兄さん」という感じで、当初想像していた、凶悪ジャイアンとはかなり異なるものでした。礼美の回想だからそうさせている…なんてことはなさそうで、少なくとも実際に、彼女の前ではそういった態度を取っていたようです。前回レビュー時に気になっていたお弁当の件も…
礼美がコウジに作って渡していた そして直後にホテルへ。前向きに考えるのであれば、ここをキッカケに男女の恋愛関係が築かれて行くような気がするのですが、礼美の回想から窺えるのは、どうにもそれが思い出したくない過去というか、決して明るい思い出には映っていないということ。それをきっかけに、むしろ彼と疎遠になってしまったような感すらあります。そして辿り着く、折口はるかとの関係。
折口さんとの関係については、ここでつながるか…という感じで、全く予想だにしていない展開でした。というのも彼女は、折口はるかの葬儀の時に、「特に思い出もない」と、ほぼほぼ無関係であったかのような語り口で、その関係を話していたので。これが彼女の本心であったのか、はたまた演技でそうしていたのか、その真実はやがて明らかになるのでしょうが、また一つ気になることが増えました。
~礼美の自己評価~ 物語の本筋に絡んでくる部分での意外性と同じく、礼美自身の恋愛感覚というか、自己の捉え方もまた少しイメージと違っていて、なんだか非常に新鮮でした。彼女の自己評価は、高くないにせよ、低いってことはないだろうと、勝手に思っていたのですが、実際には…

人間だとすら捉えていない、非常に低いものでした
水帆の序盤の回想で、礼美のことはムードメーカーとして位置づけられ紹介されていたのですが、そういえばお調子者やムードメーカーって、人一倍周りの空気に敏感なタイプが多い気がします。無神経に明るくしているのではなく、しっかりと空気を読んで、自分の立ち位置を理解して、その上で最善の行動をするという。彼女があれだけ合コンに前向きであったのも、数打ちゃ当たるという実に理にかなったというか、恋人を見つけるためには最善の策であったわけで、こう思い返すと彼女の行動ってのは、決して感情優先ではなく、それなりに考えた上での行動だったのだな、と思えてきます。「幸せになりたい症候群」と、芦原先生によって解説されていますが、なかなか幸せになれないのは、自分の姿をあまりによく見つめ決めつけすぎてしまったがために、身動きが取れなくなっているからかもしれません。決めつけた型が、もしどうあがいても幸せになれないものだとしたら、それはもうどうしようもないよね、と。
~まだまだ気になることがたくさん~ もうね、ホント色々気になることが多いのですが、読み返しても全く糸口が見つからないです!(笑)ということで、これから7巻以降を読んでいくにあたって、最低限気にしておきたいことを書いておこうかな、と。多分7巻発売の時には何を気にしていたとか忘れているので、きっと。というわけで、箇条書きっぽく気になることをだらだらと…
・何のために成海は名古屋で坂田コウジを? 木戸くんが渡した坂田コウジの住所情報は、成海が名古屋に乗り込んで捜し出したものであったそうで、どうやら成海は、名古屋にて何かを企んでいるようです。しかしなんのために?彼はどちらかというと目的とか全くなしに生きているような感じがしていたので、こういう動きは不気味すぎて怖いです。どちらにせよ、一つの決戦の地は名古屋になりそうで、ドキドキですね。
・便利屋は誰? 6巻読み終えた時点で皆さんが一番気になってるのは多分これだと思うんですが、正直「誰だよ、またヒゲかよ」と。金髪系という所ぐらいしかヒントにならなそうなのですが、全く新しい登場人物じゃなく、一度でも作中に名前なりが出てきてる人の方が確率高いんじゃないかなって気もします。自分の中での候補は二人で、一人は茨城時代の悪ガキの一人(集合写真でいう右上の子)か、坂田コウジの会社の先輩かな、と。正直どっちも確率低そうだなぁ。。。
・卵を食べれなくなったきっかけ
お手伝いさんのお話によると、成海(弟)が卵を食べられなくなったのは、弟と出会いしばらく経ってから。そして彼女曰く「今はもう食べられるはずです」と言っているところから、明確な原因がそこにはあり、そして現在はもうその原因となったものはなくなっているはず。先般話題になった、「オムライスを食べれない女子云々」なんかを思い出して、シリアスになりきれなかったのですが、正直自分の中ではここが一番気になっているところです。
・折口はるかと兄の出会いのきっかけは? 折口はるかの相手は、絵の具の匂い云々という所から考えても、成海兄でほぼ確定だと思われます。その中で、どうやって彼と出会ったのか、そこまでまだ描かれていないんですよね。礼美が坂田コウジに出会ったのと、彼女がバイトをしている時期が被っているので、その時はもうコウジと成海の関係は疎遠になっていた可能性が高いです。その中で、成海は兄と繋がっていたのか、とか。礼美と出会っても、なお成海兄への道筋は途切れたままで、未だ釈然としない所が多くあります。
とりあえず言えるのは、芦原先生の掌の上で踊らされまくっているということだけ。礼美の回想で、成海に言われたちょいデブのくだりも、なんと第一話にて登場しているエピソードだったりします。それに矢内先輩の発言によって明らかにされた、1巻登場時の店員さんの再登場とか、どれだけ計画立てた上で物語描いてるんだっていう。そういったところだけでも、楽しみが募る本作。7巻も今から楽しみで仕方ありません。
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