
小説は言葉の魔法だ
わくわくする
■本への愛がはんぱない女子高生・浅見菜都。彼女のここ最近のお気に入りの場所は、町にある、小さな小さな図書館。豊富な読書量を誇る彼女は、毎日借りられる限度の5冊を読み、毎日足繁く通っている。そのうちに、一風変わった図書館司書の水島先生と知り合い、いつしか心を通わせるように…!?小さな町の図書館で起こる、怪事件&物語になぞらえて進む、恋模様にドキドキする、文学系ラブストーリー登場です!
こちらも「この新人を読め!」フェアの一人。幸村アルト先生の初コミックスになります。おめでとうございます!雑誌デビューは2007年と、どちらかというと早期デビュー組になりますので、今から要チェックでございます。それでは早速作品をご紹介しましょう。「六百頁のミステリー」というタイトルから、「ミステリー系ですか…」なんて思っていたら、それはちょっと違います。これは、本が大好きで図書館に足繁く通っているヒロイン・浅見さんが、その図書館の司書をしている青年・水島さん(通称:水島先生)という人を形容した時の言葉。掴みどころなく、単純には読切れないその深さを、そういった言葉で表したのでした。本の虫であるヒロインと、同じく本好きの水島先生。自然と出会った二人は、本というお互い大好きな存在を通して、心通わせ、いつしかお互いを大切な存在として認識していくようになります。

優しい先生。けれど決してガードはユルくない。掴みどころがなくて、奥深い。その魅力に引き込まれ、本と同じくらい夢中に。
個人的に図書館ものって大好きでして。閉ざされた静かな空間で織り成される、二人だけの時間というのが、もうシチュエーション的に。。。この作品も、ちゃんと図書館は閑散としている設定で、しかも手狭ときたものですから、うってつけ。特別な場所、大好きなもの、そして特別な人と過ごす、特別な時間というものが、しっかりと作品に落とし込まれていて、しばしの癒しの時間を与えてくれます。
ヒロインの浅見さんもその容姿からして愛くるしいですねー。文学少女はなぜか黒髪という印象が強いのですが、前髪パッツンが個人的にGOOD。つやつやだけども、サラサラしてそうで、そりゃあ水島先生も撫でたくなるよね、と。第一優先はやっぱり本なのですが、もちろん恋愛もしたいお年頃。そのどちらも手に入れちゃうという、なかなか欲張りな設定ではあるのですが、それを嫌味に感じさせず、至極自然に、当たり前に感じさせてしまう、不思議な魅力の持ち主でした。
相手役はもう図書館司書や書店員デフォな、メガネさんです。「本屋の森のあかり」(→レビュー)もそうですが、こういった役柄にメガネってつきものですよね。その安定感と来たら。。。ちなみに司書ということで、普通にこちらは成人しておられるのですが、女子高生との恋愛に関しての抵抗感とかはないようです。そういったものは無視というところは、いかにも白泉社っぽいですが、文学モチーフであるならそれもまた良いのかなという気もしております。

文学好きは潜在的なロマンチストなのか、けっこうクサい感じのものとか多いです。でもそれが良いのですよ!想いっきり向こう側の雰囲気に浸りましょう。
読切りとして描かれた1話目と、続編として描かれた4話が収録されており、後続4話は有名な文学作品がモチーフとなっています。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」や、太宰治の「走れメロス」「女生徒」等、個人的には、走れメロスのメロスを、一生懸命走るヒロインに重ねたところが素敵だと思いました。こういう解釈を、真っ直ぐに落とし込むその素直さと、重なってからの力強さといいますか。ちなみに文学ベースであるためか、言葉の一つ一つは非常にクサいです。冷静になってみると、けっこうムズ痒いこと言っているのですが、物語を読むというのは、別世界へのショートトリップなわけで、とっぷりとその世界に浸かって、楽しみましょう。というわけで、非常に楽しみな漫画家さんを知ることができました。面白かったです!オススメで!
【男性へのガイド】
→図書館に通う、本好きな女の子は好きですか?浅見さん本当にかわいいので、それだけで一見の価値ありですよ、はい。
【感想まとめ】
→面白かったです。かなり甘々で、ふわふわしたお話なのですが、ここまで張り切ってやってくれるなら大歓迎。面白かったです。
作品DATA
■著者:幸村アルト
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ
■全1巻
■価格:400円+税
■購入する→幸村アルト「六百頁のミステリー」