ももち麗子「トモダチごっこ」(1)
私は
タイムスリッパーなんだから■人生をやり直せたら、あなたはどんな選択をしますか?
東京からの引越し、仙台での高校生活を順調にスタートさせた「みどり」。だが、いじめられていた幼なじみの「あーちゃん」を助けたことで、クラスの影のボス「エレナ」の反感を買い、いじめの新しいターゲットにされてしまう。終わることのないいじめに耐えられず、自ら命を絶った「みどり」だったが…!?
「いのち」(→
レビュー)などを描かれている、ももち麗子先生の新作でございます。「トモダチごっこ」ということで、同名(漢字かそうじゃないかの違い)の
作品あるなぁ、なんて思っていたら、内容も似たような感じ。イジメがひとつのテーマとなっております。ヒロインとなるのは、東京から仙台に引っ越してきたみどり。その持ち前の明るいキャラと、東京出身という特別感から、一気にクラスに溶け込んでいきます。新生活も順風満帆、何の心配もなく、毎日楽しみに学校に通っていたのですが、それは突如として終わりを告げることになります。クラスでいじめられている女の子が、小学校の時の幼なじみだと気づいたみどりは、彼女を積極的に助けます。しかしそういうことをすると、当然のことながらみどりもターゲットになるわけで。気がつけばターゲットは完全にみどりだけに。日々エスカレートしていくイジメの内容に、ついにみどりは自殺にまで追い込まれることになるのですが…
イジメの話なのに、裏表紙にある言葉は「タイムスリップ・ストーリー」。あれ?と思っていたら、1巻の中盤にてやっとその真相が明らかになります。自殺したみどりが気づいたら、そこは引っ越してくる前の家のベッドの上。あれ?なんで?と思ったみどりですが、置かれている状況を整理していった結果、ひとつの結論を導くことになります「自殺したことで、タイムスリップしたんだ」。もう同じ失敗はしないと強く決意したみどりは、再びあの学校へと転校することになるのですが…というお話。タイムスリップものはたくさんありますが、きっかけはどこまでも後ろ向きなタイムスリップであり、そしてどこまでも救いのある(現時点では)タイムスリップでありました。

前と同じ学校に行かないという選択肢もあった。けれどもダメなことは回避できるという自信と、母への想いから再び同じ学校へと通うことになる。
前作の「いのち」も、ガチで描くとどこまでも重くなるテーマに、ファンタジックな要素を交えてキャッチーに仕上げるという手法を用いていましたが、今回もやり方としては同じ路線になります。正直なところ、こういうテーマを扱うときは真っ正面から描いてほしいという想いがあるのであまり好みではないのですが、確かにこう作れば読み離れが起こる可能性も減って行くわけで(あくまで印象にすぎませんが)、難しい所です。とはいえ人生やり直したからといって全てが上手くいくのでは物語として成立しないので、もちろん生まれ変わった後も思いもよらない出来事が多数起こります。一筋縄ではいかず、安直なところに落とすつもりなど毛頭ないと感じることができる所は、先に感じた嫌な気分を消し去ってくれるには充分でした。手法としては、好評(であったと思う)前作と同じということを考えても、高め安定。ファンの方、前作既読の人たちからすれば納得の出来と言えるのではないでしょうか。
【男性へのガイド】→女の子メインのイジメをどう見るか。講談社はイジメに定評がある気がするのですが、それが結構えぐいので、その辺大丈夫であれば。
【感想まとめ】→いじめとタイムスリップという二つの要素を融合。さて、それをどう捉えるか。そのご判断は、皆さんにお任せ致します。作品としては、混ぜた也に読ませる内容となっております。
作品DATA■著者:ももち麗子
■出版社:講談社
■レーベル:KCデザート
■掲載誌:デザート(連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税
■購入する→
ももち麗子「トモダチごっこ」(1)