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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.08.28
1106057465.jpg熊岡冬夕「花君と恋する私」(1)


笑いかけられたらうれしくて
ちょっと泣きそうになる



■花君のなんてことない言葉に
いちいち胸がぎゅってなるのは、なんでなのかな   
優等生で委員長だけど、ちょっと抜けてる七世。そんな彼女が最近よくお話をするのが、暴力事件を起こして停学中の花君。最初の印象は最悪だったのに、彼の意外な落とし物を拾ってから、花君のやさしさと笑顔に気づいて…。委員長×停学男の、心にきゅんきゅん響く初恋ストーリー、はじまりです…!

 「マイヒーロー!」(→レビュー)の熊岡冬夕先生の新連載になります。前作が非常に勢いがあり面白い作品だったので、新作も期待大だったのですが、この作品も面白かったです!ということで、「花君と恋する私」のご紹介です。ヒロインは、優等生で委員長も務める秀才女子の七世。長めの髪にスラッとした見ためから、スペックの面ではかなり秀でた子ですが、どこか抜けたところがありときおりドジをしたりしています。そんな彼女のクラスで最近話題になっているのは、最近暴力事件を起こして停学となっている花君。不真面目でいつもブスっとしている彼とは、普通であれば関わることもなかったはずですが、ひょんなことから話をするように。口は悪いし、態度も悪い。けれどもある時拾った、彼の落とし物をきっかけに、七世は花君を目で追うようになっていくのでした…


花君と恋する私1
掴みどころのない花君。でも近づいて話をしてみると、意外な面が見えてくるように。


 前作は相手役がとにかくべた惚れでド直球で突っ込んで行く勢い重視のキャラが非常に魅力的でしたが、今作ではどちらかというと、相手役ではなくヒロインが素敵に映ります。成績優秀で委員長も務めていて、見ためも悪くなく告白もされちゃったりするような子。その見ためだけを拾えば、いわゆる“委員長タイプでツンケン…”みたいなイメージに辿り着くわけですが、彼女が纏う雰囲気はむしろゆったり。委員長だからといって気張ることもなく、出来る範囲で最低限のことをして、行動する際はひとつひとつ消化するように考えてから。そんな子が、恋をしてしまうわけですから、当然流れもゆったりとなります。学力は全然異なりますが纏う雰囲気は「360°マテリアル」(→レビュー)の美桜に似てるかもしれません。
 
 相手役の花君についても、暴行事件で停学というところから乱暴者の強引男子を想像するかもしれませんが、単純に不器用で想いが強い男の子ってだけ。とある女性に強い想いを寄せている純情男子で、またその想いをどうやって発露すれば良いのか全くわからずに、くすぶっているという感じです。根が優しいかは別として、非常にピュアな男の子。前作のヒーローもそうでしたが、熊岡先生は純粋な男の子を描くのが本当に上手いなぁ、と思わされます。そしてそんな彼の純情に当てられてしまったのが、ヒロイン。恋心に引っぱられて、自分まで…というシチュエーション、個人的に大好物です。ごちそうさまです。


花君と恋する私1-2
彼の存在が一旦気になると、もう無意識に目で追っている。席が自分の前ともなると、やっぱり見てしまう。

 
 基本的に花君は気怠げで無口なため、作品としての雰囲気や空気感を作り出していくようなタイプではありません。もちろん相手役として、それなりにイベントや事件は起こしてくれるのですが、いかんせん少女マンガのヒーローの不良枠の中では大人しめで、その立ち位置の割に存在薄く印象に残らないやもしれません。結果作品の空気感を作り出すのは、ヒロイン。ゆったりした性格のヒロインですから、怒濤の流れであった「マイヒーロー!」とは異なり、非常に落ち着いたペースで物語は進んでいきます。そもそも自分の恋を自覚するのに時間を要するのですが、そこでの自覚っぷりがなかなかのもので、2巻以降はちょっと加速してくる予感がしています。ヒロインはちょっと鈍感というベクトルでピュアで、逆に相手役はとにかく真っ直ぐに純情でピュア。タイプの違う二人の純粋さが混じり合って、ちょっとお兄さんにはちょっと眩し過ぎるくらいですよ(笑)

 初っぱなからヒロインではなく脇役の台詞がフィーチャーされていて、「なんでだバランス悪いなぁ」とか思っていたら、後半にあからさまに回収していたりと、その作りは粗くはなくとも特別上手いという感じは受けませんが、その分かりやすさがまた好感へと繋がっています。登場人物も必要最低限で回している分、心情描写はより細やかに。大人しくはなくとも純粋な恋模様を楽しむことのできる一作となっております。繰り返しになりますが、面白かったです。オススメです。


【男性へのガイド】
→ヒロインはかわいく、また男の子もはぐれ生徒純情派でかわゆい。私の知り合い(男)が読んでいたのですが、良かったと言っておりました。
【感想まとめ】
→こういうペースでも面白い作品を描けるのかと、いい意味で期待を裏切られてもう大満足です。楽しみな新作が登場しました。



作品DATA
■著者:熊岡冬夕
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別フレ(連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税


■購入する→熊岡冬夕「花君と恋する私」(1)

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コメント

男です!
このサイト役に立って毎日見てます

花君、発売日に一目ぼれで買いました
いづき様の評価が高くてなおさら嬉しかったです

これからもがんばってください!

あ、アオハライド2巻とかのレビュー期待してます
From: poncho * 2011/08/28 15:50 * URL * [Edit] *  top↑

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