作品紹介→モデルの裸、全て見せます:しばの結花/田中渉「ランウェイの恋人」1巻
しばの結花「ランウェイの恋人」(2)
それでも私には
モデルしかない
■2巻発売です。
カリスマモデルとして、ますます人気を高めていく唯。だけど、本当になりたいのは“ショーモデル”。現実と夢の狭間でもがく唯の前で、親友であり無名の新人モデル・亜希がその才能を開花させていく。元カレの心、母の期待、業界の注目…すべてを無邪気に奪っていく亜希に、嫉妬や焦りを隠せない唯。そんな中、ファッション界最大のイベント“東コレ”のオーディションが始まって…!?
~めちゃめちゃ面白いです~
1巻から面白い予感はしていたのですが、いかんせん2話のみの収録と、まだまだ全容がハッキリとしない印象がありオススメせずにいた本作。2巻はガッツリ全編表題作となっており、しかもそれがめちゃめちゃ面白いのですよ!
2巻ではいよいよド素人・亜希の才能が本格的に開花しはじめます。その持ちたる素質は、唯なんて軽く越えてしまうもの。元来ショーモデルとしての資質には恵まれていなかった唯は、その舞台を最も強く願っていながらも、なかなかその機会に恵まれずにいました。そんな彼女の前に突如現れた、亜希。一緒に暮らすことでその人の良さを知るも、同時にモデルとしての可能性も突きつけられ、募るのは焦りや嫉妬ばかり。邪魔なものは全てを投げ打って、懸けられるもの全てを懸けて、それでやっとここまできたその場所を、スキップするように登ってきてしまうような圧倒的な才能。

努力と執念でのし上がって来たトップが、有り余る才能を持つ後発の若手に抜かれる時のその時の心情が、メチャクチャ熱く、そして切ないのです。この表情が、カッコ良過ぎる。
~全てを懸けて掴んできたものを、瞬く間に~
元々向いていないと自覚はしていたけれど、それでも抜かれてしまう。そこまでは彼女自身も覚悟はしていたかもしれませんが、亜希の成功は思わぬ形で他のものも奪っていくことになりました。
まずは、元カレであるかつきの存在。今は付き合ってはいないものの、嫌いというわけではなく、仕事を優先させるために付き合ってはいないというもの。別に付き合ってはいないのだから、多くを求めることはしませんが、数少ない自分の理解者として彼を信頼していました。そんな彼が、亜希に優しくしモデルとしても成功できると話す姿を目撃。また二人で食事に行ったりと、親密さを窺わせる話も聞きます。仕事のためにと諦めた存在を、亜希が仕事でも成功しながら攫っていくような感覚に、唯は陥ったはずです。
またもう一つ大きいのが、唯がモデルを志すキッカケとなった、元カリスマモデルの母。亜希の才能を早々に見抜いた彼女は、唯を現在の事務所に残したまま、亜希を引き抜いて新たな事務所を設立しようとします。唯にとってモデルの仕事とは、母の果たせなかった夢を果たすためにはじめたもの。向いていないとわかっているショーモデルを志し、アイドルモデルとしては不動の地位を築いている現在でも全く満足することなくいるわけで。母親の夢を邪魔してしまったという強い後ろめたさがあるからこそ、ここまで頑張るのでしょう。夢は母親のためでもあり、同時に自分のためでもあり。夢を果たすということは、イコールで彼女がこの世に生まれ落ちたことを正当化させることになるのです。

例え亜希が成功したとしても、それで叶えられるのは母親の夢のみであり、唯が感じる後ろめたさはいつまでも解消されることはありません。だからこそ、亜希の邪魔をしても意味はないわけで。もちろん焦りや嫉妬という心情は先行しますが、彼女が解消すべきものはもっと根深いもの。物語の執着点として、単にライバルとのせめぎ合いのみでなく、負けたけど夢を叶えたとか共存といった可能性を感じさせてくれる面はありますが、ただ今はあまりにも絶望が深過ぎて切ない。全てを懸けてきたからこそ、そこを絶たれるとどうしようもなくなるわけで。それでも彼女はモデル以外の道は知らず、打ち拉がれ立つ力がなくなるまで、何度も何度も立上がって同じ道を歩むのですよ。才能だったら諦めがつくんです。でも人生を懸けていたら、簡単には諦められないんですよ。その狭間で苦しむ、その辛さがひしひしと伝わってきて辛いです(でもそれがいい)
~ここまでカッコイイヒロインがいただろうか~
努力型のモデルというと、これまた私のお気に入りのキャラである、「好きっていいなよ」(→レビュー)のめぐみがいます。彼女もまた、ライバルの登場をきっかけに心を弱らせたのですが、その時相対したのはわかりやすい「悪意」。結果的にめぐみはそんなもの力強く撥ね除け復活を果たしました。努力型は、悪意に強いです。けれども唯の場合、相対するのは圧倒的な才能。しかもその持ち主は、自分のことを心から尊敬し慕っていると来たもんだ。こりゃあどうすることもできないですよね。勝とうったって、知っているのは努力のみ。そして相手と向き合う度に湧き上がるのは、努力の邪魔をするような感情ばかり。ここから唯がどのような変化をして、相手に、そして自分に向き合っていくのか、楽しみです。
しかしモデルものって個人的にあたりが多い気がします。仕事ものとして、女性の様々な心情がガッツリ出るからでしょうか。そして何より、努力で自分の地位を勝ち取ってきた女性キャラが好きです。一本芯の通った逞しさに、思わず惹かれてしまいます。そしてそれを恋愛に素直に生かすことのできない、不器用さもまた魅力的なんですよね。
■購入する→しばの結花「ランウェイの恋人」(2)

それでも私には
モデルしかない
■2巻発売です。
カリスマモデルとして、ますます人気を高めていく唯。だけど、本当になりたいのは“ショーモデル”。現実と夢の狭間でもがく唯の前で、親友であり無名の新人モデル・亜希がその才能を開花させていく。元カレの心、母の期待、業界の注目…すべてを無邪気に奪っていく亜希に、嫉妬や焦りを隠せない唯。そんな中、ファッション界最大のイベント“東コレ”のオーディションが始まって…!?
~めちゃめちゃ面白いです~
1巻から面白い予感はしていたのですが、いかんせん2話のみの収録と、まだまだ全容がハッキリとしない印象がありオススメせずにいた本作。2巻はガッツリ全編表題作となっており、しかもそれがめちゃめちゃ面白いのですよ!
2巻ではいよいよド素人・亜希の才能が本格的に開花しはじめます。その持ちたる素質は、唯なんて軽く越えてしまうもの。元来ショーモデルとしての資質には恵まれていなかった唯は、その舞台を最も強く願っていながらも、なかなかその機会に恵まれずにいました。そんな彼女の前に突如現れた、亜希。一緒に暮らすことでその人の良さを知るも、同時にモデルとしての可能性も突きつけられ、募るのは焦りや嫉妬ばかり。邪魔なものは全てを投げ打って、懸けられるもの全てを懸けて、それでやっとここまできたその場所を、スキップするように登ってきてしまうような圧倒的な才能。

努力と執念でのし上がって来たトップが、有り余る才能を持つ後発の若手に抜かれる時のその時の心情が、メチャクチャ熱く、そして切ないのです。この表情が、カッコ良過ぎる。
~全てを懸けて掴んできたものを、瞬く間に~
元々向いていないと自覚はしていたけれど、それでも抜かれてしまう。そこまでは彼女自身も覚悟はしていたかもしれませんが、亜希の成功は思わぬ形で他のものも奪っていくことになりました。
まずは、元カレであるかつきの存在。今は付き合ってはいないものの、嫌いというわけではなく、仕事を優先させるために付き合ってはいないというもの。別に付き合ってはいないのだから、多くを求めることはしませんが、数少ない自分の理解者として彼を信頼していました。そんな彼が、亜希に優しくしモデルとしても成功できると話す姿を目撃。また二人で食事に行ったりと、親密さを窺わせる話も聞きます。仕事のためにと諦めた存在を、亜希が仕事でも成功しながら攫っていくような感覚に、唯は陥ったはずです。
またもう一つ大きいのが、唯がモデルを志すキッカケとなった、元カリスマモデルの母。亜希の才能を早々に見抜いた彼女は、唯を現在の事務所に残したまま、亜希を引き抜いて新たな事務所を設立しようとします。唯にとってモデルの仕事とは、母の果たせなかった夢を果たすためにはじめたもの。向いていないとわかっているショーモデルを志し、アイドルモデルとしては不動の地位を築いている現在でも全く満足することなくいるわけで。母親の夢を邪魔してしまったという強い後ろめたさがあるからこそ、ここまで頑張るのでしょう。夢は母親のためでもあり、同時に自分のためでもあり。夢を果たすということは、イコールで彼女がこの世に生まれ落ちたことを正当化させることになるのです。

例え亜希が成功したとしても、それで叶えられるのは母親の夢のみであり、唯が感じる後ろめたさはいつまでも解消されることはありません。だからこそ、亜希の邪魔をしても意味はないわけで。もちろん焦りや嫉妬という心情は先行しますが、彼女が解消すべきものはもっと根深いもの。物語の執着点として、単にライバルとのせめぎ合いのみでなく、負けたけど夢を叶えたとか共存といった可能性を感じさせてくれる面はありますが、ただ今はあまりにも絶望が深過ぎて切ない。全てを懸けてきたからこそ、そこを絶たれるとどうしようもなくなるわけで。それでも彼女はモデル以外の道は知らず、打ち拉がれ立つ力がなくなるまで、何度も何度も立上がって同じ道を歩むのですよ。才能だったら諦めがつくんです。でも人生を懸けていたら、簡単には諦められないんですよ。その狭間で苦しむ、その辛さがひしひしと伝わってきて辛いです(でもそれがいい)
~ここまでカッコイイヒロインがいただろうか~
努力型のモデルというと、これまた私のお気に入りのキャラである、「好きっていいなよ」(→レビュー)のめぐみがいます。彼女もまた、ライバルの登場をきっかけに心を弱らせたのですが、その時相対したのはわかりやすい「悪意」。結果的にめぐみはそんなもの力強く撥ね除け復活を果たしました。努力型は、悪意に強いです。けれども唯の場合、相対するのは圧倒的な才能。しかもその持ち主は、自分のことを心から尊敬し慕っていると来たもんだ。こりゃあどうすることもできないですよね。勝とうったって、知っているのは努力のみ。そして相手と向き合う度に湧き上がるのは、努力の邪魔をするような感情ばかり。ここから唯がどのような変化をして、相手に、そして自分に向き合っていくのか、楽しみです。
しかしモデルものって個人的にあたりが多い気がします。仕事ものとして、女性の様々な心情がガッツリ出るからでしょうか。そして何より、努力で自分の地位を勝ち取ってきた女性キャラが好きです。一本芯の通った逞しさに、思わず惹かれてしまいます。そしてそれを恋愛に素直に生かすことのできない、不器用さもまた魅力的なんですよね。
■購入する→しばの結花「ランウェイの恋人」(2)