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岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」(8)
この夏
あたしはどうやら
瞬ちゃんを好きになったらしい■8巻発売です。
あっという間に学祭の話し合いをはじめる時期がやってきた。憧れのダンスを勝ち取れるかどうかが、秋姫たち女子の気になるところ。。。そして運命の抽選の結果、見事秋姫はダンスに…!そして相手は瞬ちゃん。楽しく充実した学校生活を送りながらも、秋姫の心の中には、漠然とした不安が広がっていた。それは、瞬にとっても、大きな問題となっていて…。
~夏に煌めく恋花火~ この時期に丁度良く、物語でも春過ぎから初夏にかけて季節が流れていきます。って発売されたの6月ですか。だいぶ溜めてしまいましたが、8巻のお届けでございます。日々募っていく、自分の中に眠る天狗としての力への不安と、それに呼応するようにして強くなる、瞬ちゃんへの想い。非常に自覚的であった武くんへのそれとは違い、今度はなかなか自分の想いを自覚することができません。それは憧れと恋の差とも言えるわけですが、秋姫は結構ミーハーな所があり、そういう積み重ねる想いってのには鈍感なんだろうなぁ、とここ数巻で思わされます。武くんの時もマディの時に見せた、あのテンションの高さは一切ないその落差が、彼女の想いの深さと戸惑いを感じさせると言いますか。
~好きになったからこそ、負担になりたくない~ 瞬ちゃんへの恋心を自覚して以降、秋姫の行動・言動は大きく変化を見せることになります。これまでは頼りっぱなし、もたれかかりっぱなしであった秋姫ですが、瞬ちゃんへの想いを自覚すると共に「瞬ちゃんの負担になりたくない」と強く意識するように。頼りっぱなしから、対等な関係へ。このままもたれかかり続けても良いですが、相手が大切であるからこそ、負担にはなりたくないと思うものです。そして同時にぐるぐると巡る、自分が遠くに行ってしまうという想いと、このままここにいたいという想い。頼りっぱなしの相手に対し、募る想いを抑えきれずにその場所を離れる考えを…というと、同じ岩本先生の作品「雨無村役場産業課兼観光係」(→
レビュー)の澄緒を思い出します。
スミオ 取り巻く環境、置かれている状況は異なるものの、生活力のなさから想いを寄せる相手に面倒をかけてばかりの自分に落ち込むという所は、秋姫と似ているのではないかな、と。彼は結果的に、この町を離れる決意をしてしまいましたが、秋姫はどうなのでしょうか。「このままこの村にいたい」と強く願っているのに反して、心のどこかでは瞬ちゃんの元を離れる予感を諦め気味に受け入れているような気もします。そのことが最もよく表れていたのが、43話でしょうか。「いつか」と題されたこのお話で、最後にたたみかけるように交わされる「いつか」の話。これがもうやたらと切なくて…
「いつか上手になったら
瞬ちゃんの好きなパンも作ってげるね」…という秋姫の言葉に対して瞬ちゃんは
「メチャクチャ手間暇かかってめんどくさいやつ考えとくから
いつか作らせてやる」さらにこんな会話の先、五郎坊に秋姫は…
いつか瞬ちゃんが天狗になったときに眷属になって
ずっと助けてあげてね 先の「いつか」のやりとりも、どこか不安げな秋姫のいつかと、なんとかつなぎ止めようとしているような瞬ちゃんの「いつか」のやりとりが、なんだかやたらと切ない。別に何も起きちゃいないんですが、どこまでも優しくてどこまでも寂しいというような。なんでしょう、この別れの前の空気感。そういう風に感じでいるのは私だけですかね。でも最後の秋姫の言葉を見ても、やっぱりなんだか瞬ちゃんとの未来については悲観的な気がするのですよ。ちなみに今このエントリは、ゆずの「いつか」を聴きながら書いてます。めっちゃ冬の歌ですが、なかなか良いですよ、はい。
~修学旅行にフラグがビンビン~ さて、物語の一番のポイントとなりそうなのが、7巻にてフラグビンビンであった修学旅行。行き先と良い、どうなるのか楽しみでもあり不安でもあり。季節的には夏が過ぎて秋。偶然か必然か、ヒロインの名前は「秋姫」ですから、このまま一気にラストまで…なんて予感すらさせます。なんとも気になる9巻、今から発売が待ち遠しいです。
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岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」(8)