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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.09.07
1106057188.jpg緋桜泉「メタモ☆レイヤーLV.0」


私の一番は篠崎くんです!!


■無口&無表情が悩みの、真面目な委員長の雨宮雫。幼い頃から全く感情が表情に表れず、なんとか治そうと考え抜いた末に辿り着いたのは、コスプレをしてキャラと同化して表情を引き出すというもの。そんな変わったきっかけからコスプレイヤーになった雫だが、自分のファンのカメコさん(カメラ小僧)を通じて、クラスメイトの篠崎鶇にそのヒミツがバレてしまい…!?

 こちらも白泉社で行われています、「この新人を読め!」シリーズの一冊でございます。緋桜泉先生は2007年末に雑誌初掲載、白泉社としては早期単行本デビュー組になるでしょうか。何はともあれ、おめでとうございます。というわけで、早速作品の方をご紹介致しましょう。主人公は、とにかく無表情(本人曰く表情筋が死滅している)な女子高生・雨宮雫。その無表情さゆえに近寄ってくる友達もおらず、感情がない人と誤解されることもしばしば。そんな自分の表情のなさを憂いた雫は、なんとか治そうと考え抜いた挙げ句にこんな結論に。コスプレでそのキャラになりきれば、表情が生まれるかもしれない…ひょんなことからはじめたコスプレが、今では一番の趣味。ところがそんなある日、ファンのカメコ(カメラ小僧)さんが連れてきた弟くんに会ってビックリ、それは同じクラスの男子・篠崎鶇くんで…というストーリー。
 

メタモ☆レイヤーLV.0
委員長です(押し出されて断れずなっちゃった系委員長)

 
 これが少コミだったら、「このことバラされたくなかったら俺の言いなりになりな」という展開になるのですが、こちらは花とゆめですから、そんなことにはなりません。どちらかというとコミュ力高い草食系男子の鶇くんは、レイヤーとしての雫を全力でサポート。自身もシルバーアクセの制作という趣味を持つことから、その制作品をコスプレの時のアクセサリーにしてもらったりするようになります。いつの間にか週末はコスプレ(するのは雫だけ)で一緒に過ごすようになった二人の間には、特別な絆が…。けれどもヒロインの雫は自分の感情にはとことん疎く、恋愛感情だと気づくまでには時間がかかります。一方で鶇は、そのヘタレっぷりから一緒にいるだけで何も動きやしねえ…!しかしながら二人の間には確かに特別な空気感が流れていて、その雰囲気をやんわりと感じられるだけでなんとも良い心地になれるのですよ。
 
 コスプレをしたところですぐに感情が表に出るようになるわけではありませんでした。けれども感情の揺れ動き自体はあって、鶇はそれを敏感に察知してくれます。言わずとも、表情に出さずとも自分のことを分かってくれるという、それだけで特別な存在なんですよねー。ヒロイン側からしたらそれだけで満足だし、逆にそんな彼女の感情の機微を自分だけが感じ取ることができるというのは、男の子からしたらすごく嬉しい事なんです。コスプレという設定に目が行きがちではあるのですが、そもそもヒロインが表情を表に出さないというだけで、半ば勝ちみたいなもの。良いカップルです本当に。


メタモレイヤーlv.0-1
自分の表情を読み取ってくれるというのは、自分の感情を汲み取ってくれるということで、それってもうこれ以上ないくらい素敵な存在なわけですよ。先立つのは恋愛感情よりも、信頼感ではあるのですが、その特別な関係が微笑ましいのです。


 そういう設定であるがために、もちろん容易にラストは想像できるわけですが、わかっていて待つからこそ得られる感動というのもあるわけで。ドキドキやワクワクは控えめですが、ニヤニヤとほんわかは最大級。「この二人でないとダメ!」という感覚は、他の作品よりも強かったような気がします。
 
 私はコスプレとか詳しくないので、どういう世界かはわからないのですが、交流盛んで雑誌のモデルになったりしちゃうこともあるのですね。ちょっとした用語なども勉強になったりと、オタク文化の端に座っている者として、もうちょっとこういうことも見聞として学んでいかねばならないと思っていた中、良き入門書(というほどコスプレについて詳しく描かれているわけではないですが)になりました。あとコスプレだからなのか、全体的にキラキラした雰囲気の漂う作品です。普段の委員長さん、メガネかけて地味な格好なんですけど、それでもなんだかやたらと光って見えるのは、気のせい?何はともあれ、オススメ作品でございます。


【男性へのガイド】
→コスプレという要素をどう受け入れるか。物語の作りは少女漫画のソレですが、こういう特別な二人を描いた作品は割と微笑ましく外から見ることができるので、男女関係なく楽しめるのではないかと思います。そういう系が好きなのであれば。
【感想まとめ】
→白泉社の新人さんはやっぱり毎度レベル高いですねー。無表情ヒロインというだけで、もうツボなのですが、物語自体も面白かったです。


作品DATA
■著者:緋桜泉
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ
■全1巻
■価格:400円+税


■購入する→緋桜泉「メタモ☆レイヤーLV.0」

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