
誰もが延命を望むわけではない…か…
■葬儀屋を営む、美しいブロンディ姉弟。姉のアッシュは、葬儀のほかに、不思議な力を用いて死者を蘇らせる“延命術”を施している。一方弟のダストは、姉への強い想いを胸に秘めながら、彼女の仕事を手伝っているのだった。そんな中、アッシュを獲物を狙う目で見つめるもうひとつの存在が…。逝き行く者と残されるものの想いを繫ぐ、19世紀英国葬儀屋ファンタジー!
「コルセットに翼」(→レビュー)などのもとなおこ先生の、フレアでの連載作品になります。もとなおこ先生については、「コルセットに翼」ぐらいしかまともに作品を知らず、勝手にプリンセス専門の漫画家さんかと思っていたのですが、なんとフレアでも描いていたとは。というわけで、「葬儀姫」のご紹介です。舞台となるのは19世紀のイギリス。ここで葬儀屋を営むのは、姉・アッシュと弟・ダストの美しき姉弟。葬儀屋を営むと同時に、二人は別の稼業も行っています。それが、死者の魂を期間限定で蘇らせる“延命術”の仕事。この世界では延命は正式に認められており、正当な理由と資金があれば、延命が認められているのです。その理由は様々。ただ一つ、決められているのは「死者と契約をしてはいけない」ということ。そんな中、淡々と延命を行うアッシュと、特別な感情を抱きつつ彼女の手伝いをするダスト、そして遠くから、アッシュを見つめる視線が…というお話。

生き返ることはできるが、そこには様々な制約が。約束を破ると、当然のことながら罰がくだる。
蘇生術というか延命術が登場する漫画は結構たくさんありますが、それは基本的にカリスマ的な術師がおり、それに付随して物語が派生していくみたいな面が強い印象があります。一方こちらは姉と弟そろってやっとひとチーム。また延命というファクターがあるからと言って、容易にお涙頂戴の生温い物語を展開するわけでもありません。1話完結を繰り返して大筋を作り上げるというスタイルを用いているために、もちろんそういった展開はありはするのですが、それはメインディッシュにあらず。この物語の核となるのは、主人公であるアッシュの秘密と、彼女を狙う一人の少年の存在。あくまでもファンタジーということで、より器の大きな受け皿を用意しています。
そのため1巻時点では謎の端っこが明らかになった程度で、物語が本格的に動くのは2巻からという予感が。なんとなく一筋縄ではいかなそうな物語となっており、シンプルすぎるファンタジーはちょっと…なんて思うことがある方にはぴったりかもしれません。コルセットに翼は明るい面がすごく出た作品だと言えますが、こちらはダークな面が醸成されて香り引き立っている感じ。死人を扱うという時点で生臭い感はあるのですが、それでも最大限美しく見せているのはさすが。上手い具合にバランス取れています。
ヒロインがキャラ立ちしすぎているため、視点を重ねる余地があるとすれば弟のダストになるのでしょうか。とはいえシチュエーション的には、男達に見守られるヒロインという形になっていて、羨ましいのはヒロインの立場という。読み手によって様々感想が分かれそうでもあります。とりあえずみんなクセ者ということだけ、念頭に置いておいてください。
【男性へのガイド】
→もとなおこ先生の作品は本当に少女漫画然としているというか。そういう純少女漫画がお好きな方は是非とも。
【感想まとめ】
→ちょっとダークなもとなおこ先生の世界を堪能。物語としてのサイジングも絶妙で、これから盛り上がりもあると思いますし、気になった方はお手に取ってみてはいかがでしょうか。
■作者他作品レビュー
もとなおこ「ドリーナ姫童話」
作品DATA
■著者:もとなおこ
■出版社:ソフトバンククリエイティブ
■レーベル:フレックスコミックスフレア
■掲載誌:フレア(連載中)
■既刊1巻
■価格:571円+税
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