作品紹介→よしながふみ「大奥」
6巻レビュー→これ以上ない愛の形に思わず涙:よしながふみ「大奥」6巻
よしながふみ「大奥 」(7)
大変にご立派なお方だよ
本当に
■7巻発売しました。
7代将軍・家継の実父である月光院を中心とする勢力が大奥で力を増す中、その勢力図を覆す事件が起こる。後に「江島生島事件」として語られるこの事件により、大奥の姿は大きく変わることになるのだが…
発売したのは結構前なのですが、重厚感のある作品の感想はアップが遅くなる法則。やっとのことでお届けでございます。大いに盛り上がった6巻は、家宣が亡くなった所で幕引き。そしてとある事件への展開を匂わせておしまいとなりました。それが、江戸中期最大の疑獄事件「江島生島事件」です(原文ママ=あんまり知らない)
~江島生島事件をこう描く~
さも知っているような小タイトルですが、もう散々言っているように私は歴史に明るくないので、恒例のwikipediaを見てお勉強ですよ。概要についてはそれぞれで調べていただければ良いかと思うのですが、概ね史実に則って描かれているようです。スタンス的には、天英院一派が画策したものとしているようです。ちなみに「江島生島事件」とGoogleで検索しようとすると、予測第2検索ワードに「よしながふみ」と出る程度には、このエピソードは印象的であったようです。
単純に史実をなぞるだけなら誰でも出来るのですが、ここでちゃんとひとドラマ用意して読ませる物語にしてくるのが名手・よしながふみ先生。視点はあくまで男性というのはいつものことではあるのですが、主人公に据えて来たのは美少年・美青年とは異なる、むさ苦しい、けれども非常に誠実で心の綺麗な男でした。描かれたのは、江島生島事件の当事者である、大奥総取締の江島と、歌舞伎役者の生島新五郎。
大奥で最も権力があると言っても過言ではない人物と、歌舞伎の人気役者…この二人のスキャンダルともなれば、裏であれこれ情事が…なんて想像しがちですが、全くそんなことはなく。江島は自分の体にコンプレックスを抱えており、女性とまともに向き合えない男でありました。そんな彼の心を覆っていた塊を溶かしたのが、歌舞伎役者の生島新五郎。

人の上に立つ者は、そのコンプレックスを逆に言い出しにくいものだと聞きます。特に江島の場合は、その役職からもなかなか弱みは見せられなかったのかと。そして美男が揃う大奥の中にあって、その「毛深い」という容姿に関わるコンプレックスは、必要以上に大きくなっていたのだと思います。コンプレックスを植え付けるキッカケとなったのは、女性の様子から。美麗でかつ女性である新五郎による救いの言葉は、それらを全てぬぐい去ってくれる程に心強いものであったはずです。
その二人のやりとりは、どこまでもプラトニックで、大奥という世界に生きる者と、華やかな舞台に生きる者の交わりとは全く正反対のイメージで、ひどく新鮮でした。そしてそんな二人に訪れる悲劇。その後は成す術もなく、事は進み大きな救いもなくこの事件は終焉。ほんの少しの時間、ほんの少しの一言で救われた江島が、その後あのような末路を辿ったというのはあまりに切なく、でもあそこで一夜を過ごさなかったからこそ、いつまでもその言葉を抱いて過ごすことができたのかもしれないなどと、あれこれ考えさせられました。最後の最後で江島生島事件、そして物語は1巻、再び徳川吉宗の時代へと移って行くことになります(1巻ラストに繋がる)。
~1巻へ繋がっていく7巻~
1巻とかなかなか覚えていないのですが(おい)、稀代のイケメン水野が大奥で成長・出世していく様子が描かれました。あちらでは男視点で物事が進行したのに対し、こちらはほぼほぼ吉宗視点。序盤で描かれることのなかった、あの時代のもう一つの様子が描かれることになると思います(あくまで最初だけなので、これからどうなるかはこれからのお楽しみ)。
1巻で登場していた人物で、7巻でも登場してくる人物は複数いるのですが、1巻読み返してみて印象が異なるのが、藤波さんです。6巻から7巻にかけての藤波さんはほんとヘタレの極みのような感じなのですが、1巻でのイメージは…

上に立つ人としては割と普通の人
特別できる人というイメージもありませんでしたが、全然できない人というイメージもありませんでした。水野編では本当にその役職にそれなりにフィットした、普通のおじさんだなぁという印象。これが8巻以降、どんな形で印象が変わっていくのか、ちょっと楽しみにしていたりします。たぶん変わると思うんだよなぁ。すごく頼りない感じになるんじゃないのかな、とか。
■購入する→Amazon
6巻レビュー→これ以上ない愛の形に思わず涙:よしながふみ「大奥」6巻

大変にご立派なお方だよ
本当に
■7巻発売しました。
7代将軍・家継の実父である月光院を中心とする勢力が大奥で力を増す中、その勢力図を覆す事件が起こる。後に「江島生島事件」として語られるこの事件により、大奥の姿は大きく変わることになるのだが…
発売したのは結構前なのですが、重厚感のある作品の感想はアップが遅くなる法則。やっとのことでお届けでございます。大いに盛り上がった6巻は、家宣が亡くなった所で幕引き。そしてとある事件への展開を匂わせておしまいとなりました。それが、江戸中期最大の疑獄事件「江島生島事件」です(原文ママ=あんまり知らない)
~江島生島事件をこう描く~
さも知っているような小タイトルですが、もう散々言っているように私は歴史に明るくないので、恒例のwikipediaを見てお勉強ですよ。概要についてはそれぞれで調べていただければ良いかと思うのですが、概ね史実に則って描かれているようです。スタンス的には、天英院一派が画策したものとしているようです。ちなみに「江島生島事件」とGoogleで検索しようとすると、予測第2検索ワードに「よしながふみ」と出る程度には、このエピソードは印象的であったようです。
単純に史実をなぞるだけなら誰でも出来るのですが、ここでちゃんとひとドラマ用意して読ませる物語にしてくるのが名手・よしながふみ先生。視点はあくまで男性というのはいつものことではあるのですが、主人公に据えて来たのは美少年・美青年とは異なる、むさ苦しい、けれども非常に誠実で心の綺麗な男でした。描かれたのは、江島生島事件の当事者である、大奥総取締の江島と、歌舞伎役者の生島新五郎。
大奥で最も権力があると言っても過言ではない人物と、歌舞伎の人気役者…この二人のスキャンダルともなれば、裏であれこれ情事が…なんて想像しがちですが、全くそんなことはなく。江島は自分の体にコンプレックスを抱えており、女性とまともに向き合えない男でありました。そんな彼の心を覆っていた塊を溶かしたのが、歌舞伎役者の生島新五郎。

人の上に立つ者は、そのコンプレックスを逆に言い出しにくいものだと聞きます。特に江島の場合は、その役職からもなかなか弱みは見せられなかったのかと。そして美男が揃う大奥の中にあって、その「毛深い」という容姿に関わるコンプレックスは、必要以上に大きくなっていたのだと思います。コンプレックスを植え付けるキッカケとなったのは、女性の様子から。美麗でかつ女性である新五郎による救いの言葉は、それらを全てぬぐい去ってくれる程に心強いものであったはずです。
その二人のやりとりは、どこまでもプラトニックで、大奥という世界に生きる者と、華やかな舞台に生きる者の交わりとは全く正反対のイメージで、ひどく新鮮でした。そしてそんな二人に訪れる悲劇。その後は成す術もなく、事は進み大きな救いもなくこの事件は終焉。ほんの少しの時間、ほんの少しの一言で救われた江島が、その後あのような末路を辿ったというのはあまりに切なく、でもあそこで一夜を過ごさなかったからこそ、いつまでもその言葉を抱いて過ごすことができたのかもしれないなどと、あれこれ考えさせられました。最後の最後で江島生島事件、そして物語は1巻、再び徳川吉宗の時代へと移って行くことになります(1巻ラストに繋がる)。
~1巻へ繋がっていく7巻~
1巻とかなかなか覚えていないのですが(おい)、稀代のイケメン水野が大奥で成長・出世していく様子が描かれました。あちらでは男視点で物事が進行したのに対し、こちらはほぼほぼ吉宗視点。序盤で描かれることのなかった、あの時代のもう一つの様子が描かれることになると思います(あくまで最初だけなので、これからどうなるかはこれからのお楽しみ)。
1巻で登場していた人物で、7巻でも登場してくる人物は複数いるのですが、1巻読み返してみて印象が異なるのが、藤波さんです。6巻から7巻にかけての藤波さんはほんとヘタレの極みのような感じなのですが、1巻でのイメージは…

上に立つ人としては割と普通の人
特別できる人というイメージもありませんでしたが、全然できない人というイメージもありませんでした。水野編では本当にその役職にそれなりにフィットした、普通のおじさんだなぁという印象。これが8巻以降、どんな形で印象が変わっていくのか、ちょっと楽しみにしていたりします。たぶん変わると思うんだよなぁ。すごく頼りない感じになるんじゃないのかな、とか。
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