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Tag [新作レビュー] 2011.10.18
1106079530.jpg遠山えま「GDGD-DOGS」(1)


こいつら究極にうざいわー


■大学でもマンガ科が設立される昨今、ついに高校にもマンガ家コースが誕生。そんなときわ高校マンガ家コースに入学したのは、既にプロデビューを果たしている現役少女漫画家の手塚神奈。このコースなら、思う存分漫画に打ち込める…!と思って入学したは良いものの、生徒のやる気はまるでナシ、コースのカリキュラムもメチャクチャ…挙げ句漫画家に夢見るイケメンだけどアホな3人組の男子に信奉されて…!?

 遠山えま先生のARIA連載作でございます。遠山せま先生って一体どれだけの雑誌で描いてらっしゃるんでしょ…何気にすごい執筆ペースですよ。というわけで、今回の作品は昨今話題にもなっていた「漫画家マンガ」でございます。現役の少女漫画家が、執筆活動に打ち込むために新設された漫画家コースに入学するけれど、カリキュラムはまるでだめで、生徒達のやる気はまるでなし。それでも放っておいてくれれば、仕事進められるからこの状況はウェルカム…!と思っていたら、大の苦手な三次元イケメン3人組(しかもすげーアホ)にプロの漫画家だとバレてしまい、漫画指導をさせられることに。けれどもこいつら、マジで漫画描かねぇ…!というギャグテイストの強い作品でございます。


GDGD-DOGS.jpg
ヒロインの神奈は前髪厚めの地味女子。でもふと見せる瞳がかわいかったり。基本的には暗いオタク系の気質の持ち主でございます。


 ARIAのギャグ枠というと先日ご紹介した「ケモノキングダム-ZOO-」(→レビュー)があるわけですが、こちらはショートページで展開するアホ学園モノ。ちゃんと毛色は違えてあります。表紙のデザインとか、ヒロインが人付き合いの苦手なプロの物書きということで、「わたしの××しなさい!」(→レビュー)の焼き直しじゃん…なんて先入観があったので、読んでみて驚き。遠山先生ほんと引き出し多いなぁ。
 
 ヒロインは唯一の真人間で、当然のことながらツッコミ役に。真人間といっても彼女自身かなり歪んだ性格の持ち主であり、イメージ的にはネットの情報・ネットのノリに浸食されている人という感じ。ネットスラングは割と当たり前に登場しますし、イケメンやリア充は爆発しろというスタンスの持ち主。もちろん賢くない人は嫌い。というわけで、彼女の目の前に現れた3人組は、強引でイケメンでアホという彼女の苦手な要素を全て持ち合わせているという。逆ハーレムからのトキメキ展開なんてものは一切なく、ただただ3人の残念なイケメンに突っ込みまくるという形でお話は巡っていきます(進んでないので堂々巡り感アリ…それこそがGDGDなのですよ)
 
 イケメン3人組の構成としては、頭の軽いチャラい系のアホに、フェミニンな不思議ちゃん系のアホ、そして一見まともに見えるもその実歪んだド変態の眼鏡系アホと、選り取りみどり。漫画家を目指すというよりは、漫画家に夢見る状態で、実際に手を動かすことはあまりありません。基本はテンションの高いトークを展開。「新人賞の賞金100万円獲ったらどうする?」とか、「センスの良いペンネームでも考えるか…」とか「漫画家になればバレンタインチョコトラック単位で来るらしいよ?」とか、「とりあえず漫画を知るためにマンガ喫茶行くか…」など、本当にどうでも良い話題で激論を交わすのです。そして心でそこにツッコミを入れる、ヒロイン。ARIAという掲載誌ながら、多分作品のイメージとして一番近いのは、石原まこちん先生の「THE 3名様」。そこにテンションとイケメンと、心でのツッコミ役を投入し、ちょっと違ったテイストのギャグ漫画に仕上げていると言う感じでしょうか。


GDGD-DOGS1-1.jpg
努力はしない、話はする。そして話は膨らむばかり。。。力にはならない、結果邪魔になる。この前向きなウザさこそが持ち味なのです。挽回一切なしっていう清々しさがまた。。。


 あくまで漫画家マンガということで、漫画家あるあるネタとかもやっぱり用意してます。ヒロインは人気作家というわけではなく、掲載誌の人気最底辺をうろうろ。打ち切り回避と現状打開策の思案に苦しんでいる感じ。ゆえにネガティブネタが多いのですが、それもまた面白いです。遠山えま先生自身の作家像というものが落とし込まれているかはわかりませんが、多少なりともこういうこと考えているのだなぁと思うと、ホント大変なのだな、と改めて思うというか。とはいえこちらの作品は、割と自由に描いている印象ではありますが。


【男性へのガイド】
→残念なイケメンが本当に残念なのですが、残念じゃないイケメンより愛着湧きませんか?私はむしろすごくむかつk(自主規制)遠山えま先生ですから、基本男性も読みやすい絵柄、展開かと思っています。
【感想まとめ】
→「こいつら究極にうざいわー」というヒロインの言葉、もうそれにつきます。こういう系のネタも描ける引き出しの多さに驚き。気楽に楽しく、ささっと読むことができました。


■作者他作品レビュー
神さまは髪の中から現れる…:遠山えま「かみかみかえし」1巻


作品DATA
■著者:遠山えま
■出版社:講談社
■レーベル:ARIA
■掲載誌:ARIA(連載中)
■既刊1巻
■価格:562円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「ARIA」コメント (2)トラックバック(0)TOP▲
コメント

この三人組、ヤングアニマル連載えりちん先生の「描かないマンガ家」の
主人公の遺伝子をものすごく受け継いでるなぁ
From: 名無しさん * 2011/10/19 00:05 * URL * [Edit] *  top↑
はじめまして。

いきなりですが、6行目の遠山えま先生の名前が「遠山せま」になってます!!
From: うらら * 2013/08/04 20:18 * URL * [Edit] *  top↑

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