
私は神です
■ある日、青春真っ盛りで部活に励む寅子の前に、「神」を名乗るイケメンが現れた!見ためは良いが、その格好はあからさまに底辺バイト。とてもじゃないけど神になんか見えやしない。そんなことより目の前の恋の方が大事!と思っていたら、なんとその神、寅子たちが県大会で優勝しないと地球が滅びると言い出して…!?
「午前3時の無法地帯」(→レビュー)などのねむようこ先生の、フラワーズ連載作になります。色んなところで描かれていますが、flowersってちょっと印象と違ってて良いですね。今回描かれるのは、バスケ部に所属する女の子のお話。それも、真っ当な青春モノではなく、ちょっとしたネタを落とし込んで非日常的に進行していく物語になっています。
ヒロインは、そこそこの進学校に通う女子高生・寅子。所属するのはバスケ部と家庭科部。そこそこの進学校ということで、部活はやっぱり強くない。県大会2回戦~3回戦が相場のチームで、そんなキツくはないけどゆるすぎでもないバスケ部が大好き。上級生が引退し、ついに始まる自分達の時代…と思ったら、併せて変なことも始まった。突然現れた超絶イケメンの青年。彼曰く、「私は神」「あなたたちのバスケ部が県大会で優勝しないと地球が滅びる」とのこと。うさんくさいことこの上ない、あたしゃありもしない空想よりも、目の前の恋に一生懸命なのよ…と相手にしていなかったら、どうも事が現実味を…?というお話。

モンスターエンジンよりも神っぽくない。作業着ですから、なんたって。当然言っても信じてもらえない。全知全能の神ってわけではなく、神の中でもそんなに偉くないみたいです。
自分達の日常のほんの一部が、世界の運命を左右することに。セカイ系…というにはあまりにもノリが軽いか。自分達に定められた運命を知り、全力で部活に懸ける…なんてことはなく、未だに半信半疑にユルい日常が続いていきます。それもそのはず、とにかく神様が頼りなくていかにもダメっぽい感じ。今後自覚的になる瞬間が訪れるとは思うのですが、今の「すごい危機的な状況下に置かれているにも関わらず、どこか無自覚で自分達の毎日を楽しむ」という構図がそれなりに良いバランス感で、この後どういう変化を見せて、結果それが吉と出るか凶と出るかまではなかなか想像つかないですね。基本的にはどこにでもある女子高生たちの日常がベースで、恐らくこの大きなネタは、その日常を輝かせるためのファクターであるにすぎない…となんとなく自分の中の感覚にはあります。
というのも、恋愛の描き方であるとか友達づきあいの描き方であるとか、高校生のノリやテンションがすごくしっくり来る感じで、やっぱりこっちが言わずともメインに感じさせるよね、と。進学校の部活とか、確かにこんな感じだよねっていう共感もあり。ユルいだけに部活に雑念=恋愛だ勉強だ友情だ今夜のおかずだetc...が入り込んでくる余地はたくさん。またヒロインをはじめとして、取り巻く女子たちがみなみなノリがよく明るい面々なので、何もしなくともなかなか賑やかで楽しい風景が楽しめます。

こんな感じのノリ。ヒロインは勝つことにはあんまり興味がない。そういう子でもついていける程度にはユルい。バスケそのものというよりも、バスケ部の中での部活前後のトークが主に描かれます。
どうもねむようこ先生はバスケ部だったみたいですね。ヒロインはねむようこ先生の作品に多い、そばかすの女の子ですし、今回も自己が少なからず投影されているかも。自分が働いていたパチンコデザイン会社を舞台にした「午前3時の~」シリーズ、自身の職業である漫画家と、編集者の恋を描いた「ペンとチョコレート」(→レビュー)、そして自分が所属していた部活を描いた本作と、基本物語作りには自分の経験が必要なタイプの漫画家さんなのでしょうか。そしてどちらも当たりになっているので、今回も…と期待してみたり。なかった要素と言えば、神様。この作品を生かすも殺すも神様次第。うーんまさに神様だ。
【男性へのガイド】
→女子部活の雰囲気ってこんな感じなのかな、とちょっとした覗き見が出来た気分。女性の方があるあるって感じなんでしょうかね。
【感想まとめ】
→本文でも書いたとおり、正直掴みかねてるところがあります。どう転がるのかもわからんし。ねむようこ先生なので、とりあえず2巻は買って損はないのかな、という気も。
作品DATA
■著者:ねむようこ
■出版社:集英社
■レーベル:フラワーコミックス
■掲載誌:flowers(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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